私と芸術、私の友情。糸井重里 私と芸術、私の友情。糸井重里
いま東京では、横尾忠則さんの作品が
あちこちで見られます。
国内外の団体がここぞと力を出し合い、
類稀なる存在をあらためて知らしめる、
しずかで大きな芸術活動です。
ほぼ日もそのちいさな一端を担います。

8月22日まで渋谷PARCO8階で、
横尾さんの素顔にスポットをあてる
「YOKOO LIFE 横尾忠則の生活」展を開きます。
その展示内容は糸井重里との対話集
『YOKOO LIFE』が軸になっています。

糸井重里に、横尾忠則さんについて訊いてみます。
第2回 頼まれてもいないこと。
──
このインタビューシリーズでは、みなさんに
「なぜ人は芸術を必要とするのか」
ということをうかがっています。
私自身も、音楽や小説、
とりわけ絵はとても好きです。
描くのも好きですが、観ることも。
糸井
芸術は、勝手にできるものだからじゃないかな。
──
勝手に?
糸井
絵も音楽も
「諸事情」で作るものではないですよね。
──
あ、そうですね。
糸井
「好きにしてごらん」と言われたときに
やることのなかにしか、
こめられないものがあると思います。
横尾さんはグラフィックデザイナーだったけど、
画家とはある意味、正反対の仕事でしょう。
やっぱり最初の「自由」という話に
たどりついてしまうんですが、
芸術は自由とつながっていると思います。
──
なるほど。
写真
糸井
キャンバスという四角から出られないとか、
そういうことについては
横尾さんもしょっちゅう考えてると思う。
けれどもアートはやっぱり、
「やりたいからやっている」というところに
行きつくんじゃないでしょうか。
たまに芸術の枠に入っていないような事業に対して
「これはアートだね」と言いたくなるものに
出会うことがありますが、
それも、ほんとうにアートだと思います。
──
はい。
それはつまり、事業の形をしているけれども、
「やりたいからやっている」ものですね。
糸井
うん。そう。
──
小さな子どもでも、言葉をもたない動物でも、
歌やダンスはやります。それも芸術ですね。
ひとりでに、やりたいからやる。
糸井
そうやってひとりの芸術家が
「やりたいからやってる」ことを、
「ああ、そう」と思いながら見たときが、
鑑賞した、ということなんじゃないのかな。
芸術の種類によっては、
ほかの人にとってよくわからないものもあるでしょう。
誰もがみんな「ああ、そう」とは思わなくても
3人ぐらいが「そう」と言う。
そんなアートもあります。
──
ありますね。
糸井
共振や共感することもあるし、
反発もある。
美術館に入るときは、だから、
人はいったん自分を
その場所に追い込んでから行くんですね。
だからまた、おもしろい。
──
そうですね。
映画館に入るときも、
共感か反発かわからないけれども
「ああ」と揺さぶられることをしに行くんですね。
見るほうも頼まれてもいないのに(笑)、
見に行くのですから。
糸井
「根源的に人間が、放っておいてもやること」
という意味じゃ、
ぼくらにとっていちばん大事なものって、
アートなのかもね。
──
はい。
瀬戸内寂聴さんに同じ質問をしたら、
「なくちゃ人間は生きていけないんだから、
芸術は必要かというというような問題じゃないのよ」
とおっしゃいました。
糸井
なるほどね、
すでに「あるもの」ってことだよね。
──
大人になってしまうと、
毎日「お仕事お仕事」して忘れがちですが、
やっぱり、もし芸術が封じられたら
生きていけないです。
糸井
「目的」とか「情報」とか、
ふだんはそんなことに囲まれている気が
するかもしれないけどね。
写真
──
東京都現代美術館ではいま、
横尾さんの過去最大級の
展覧会が開催されています。
予約してじっくり見に行きたいです。
渋谷PARCOでは
横尾さんの生活に迫る展示をします。
糸井
うん、たのしみだね。
本の『YOKOO LIFE』も出るんでしょう?
──
はい。最後に表紙が差し替えになって校了が延び、
渋谷PARCOと東京都現代美術館での先行発売が
7月21日になってしまいました。
(※それまでの期間、渋谷PARCOでは
受注を受け付けます)
糸井
横尾さんが『YOKOO LIFE』の内容について
「おもしろい!」とおっしゃっていたことは、
ほんとうにすばらしいと思うんだよ。
だけど横尾さん自身は
「ぼく、こんなこと言ったかなぁ」
なんて言ってるんだよね?
──
「記憶のないことが書いてある」
とおっしゃっていました。
でも、録音された声をもとに構成してますから。
あんな発言の捏造はできません。
糸井
そうだよね(笑)。
いやあ、おかしい人だよなぁ。
じつは奥さんも
そうとうおもしろい人なんだけどね。
──
奥さま、うちのスタッフもみんな大好きです。
糸井
考えてみれば、
横尾さんのことを誰かが著した本って、
評論とか、人物論とか、
これまであまり出てないんじゃないかな。
たとえば細野晴臣さんの本は出てるもんね。
横尾さんって、ほんとうに
「パッ」といっぺんにはわからない人だから。
そういう意味で『YOKOO LIFE』は
精いっぱいやったね。
──
はい。
こっそり録音ボタンを押したあの日から
一冊の本となるまで、
精いっぱい、やりました。
でもこれができたのは、
吉本ばななさんもおっしゃっていましたが
聞き手が糸井さんだからです。
糸井
もしかしたらぼくは、
横尾さんと話すときには、
横尾さんのマジックに
「かかろう、かかろう」としてるのかもしれない。
──
ああ! なるほど。
糸井
いくらインタビュアーであっても、じつは
自分の田地で風景を見たい、
と思ってしまうところがあるでしょう。
──
だけど、糸井さんは。
糸井
俺は迷子になりたいんです。
──
ああ、もう、ぴったりの言葉です。
『YOKOO LIFE』は聞き手のおかげで
読者も迷子になる対話になっています。
糸井
ねえ。
──
結論もないし、何もない。
写真
糸井
ぼくはきっと、それが好きなんですよ。
──
はい、はい。
おそらくばななさんも、
そこがお好きだったんでしょう。
糸井
それが横尾さんの考えと合ったんだよね。
──
すごく横尾さん的で、
すごく糸井さん的な本になってると思います。
21日、搬入されたらホヤホヤを
渋谷PARCOと東京都現代美術館に持っていきます。
糸井さんにもすぐお渡ししますね。
糸井
たのしみです。
──
コンテンツから本、展示まで、
「YOKOO LIFE」を製作できて、うれしかったです。
ありがとうございました。
(おしまいです。みなさまぜひ、
東京都現代美術館と渋谷PARCOにいらしてください)
2021-07-21-WED


この夏、横尾忠則さんの作品が
東京のあちこちで見られます。
ほぼ日は渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で
横尾忠則さんのお人柄や生活にスポットをあてた
展覧会を開催します。

また、みなさまからの熱い要望により、
連載『YOKOO LIFE』を
糸井重里との新規対談を加えて書籍化します。



みなさま、この夏、
『YOKOO LIFE』の本を片手に
「東京YOKOOめぐり」をなさってください。
(めぐった方には横尾只海苔をプレゼント!)
写真
『YOKOO LIFE』
横尾忠則(著)

糸井重里(聞き手)

1,320円(税込)

渋谷PARCO ほぼ日曜日で
7月17日より注文販売。
7月21日(時間未定)より先行販売。
東京都現代美術館のショップ、
横尾忠則現代美術館、豊島横尾館で、
7月21日(時間未定)より先行販売。
ほぼ日ストア、全国書店で
8月3日より販売開始予定。
写真
打ち合わせや旅のあいだのおしゃべりが、
宝もののようで、聞き逃がせなかった。
だから録音機をできるだけまわした。
どうおもしろいのか、説明はできない。
そんなふうにおそるおそるはじまった、
横尾忠則と糸井重里による
「ほぼ日」のおしゃべり連載は、
通な方々のあいだでじわじわと話題となった。

「あれ、本にすればいいのに!」
という声をいただくも、
編集方針について迷いに迷い、数年経過。
この記念すべきYOKOOイヤーに、
思い切って追加の対談を収載し、
奇跡のような本を誕生させます。
本になって、さらに宝もののような、
貴重な内容です。
写真
「YOKOO LIFE 

横尾忠則の生活」
会期/2021年7月17日(土)→8月22日(日)

   11:00→20:00

会場/渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」

入場料/450(¥OKOO)円

主催/ほぼ日

協力/朝日新聞社



2021年7月17日(土)→10月17日(日)

東京都現代美術館 企画展示室1F/3F



2021年7月21日(水)→10月17日(日)

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3



2021年7月17日(土)→9月5日(日)

丸の内ビルディング、新丸の内ビルディング



ジャケットとパンツを
2021年7月1日(木)から順次発売

ISSEY MIYAKE SHIBUYA(渋谷PARCO2階)、
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA、
ISSEY MIYAKE SEMBA、
ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI、
ISSEY MIYAKE ONLINE STORE
写真
横尾只海苔

(よこおただのり)

プレゼントします。
写真
横尾さんの描き下ろし直筆文字入り!



渋谷PARCOの「YOKOO LIFE」展入口で、
東京都現代美術館で開催する
「GENKYO 横尾忠則展」のチケット
(電子チケットの画面可)をご提示の方に、
横尾忠則書きおろし文字入り
「横尾只海苔」(ホンモノの海苔)を
プレゼントします。
※「横尾只海苔」はなくなりしだい配布終了します。
「GENKYO 横尾忠則展」チケットは
観覧前、後どちらも可です。