心的現象論を
めぐって

  • 時間

    54
  • 音質

    紀伊國屋書店出版部
    30周年記念講演会として行われた。
    総合タイトルは
    「心的現象論と暗黙知の理論」。
    クリアではないが
    講演自体は聞き取ることができる。

  • 講演日:1985年10月18日
    主催:紀伊國屋書店
    場所:新宿・紀伊國屋ホール
    収載書誌:弓立社『心とは何か』(2001年)




あるとき、未知の読者だという人から電話がかかってきて、
「自分は1ヵ月ぐらい前に交通事故で
手をひじの下から落としてしまった。
しかし落としてしまったそのこと自体がよくわからない」
というのです。
「それを教えてくれないか」という電話を
いただいたことがありました。
「いやおれもわからない」と答えました。
だけどその人がわからないという意味は
とても深刻なように聞こえました。
つまり、手を交通事故で偶然落としちゃったということを、
以降1か月ぐらいたっているけれども、
そのこと自体がどうしても自分でのみ込めない。
そののみ込めないということが、
かなり深刻な意味で問われていました。
僕はまったくそれに対して答えることができませんでした。
これは少しこの問題をやってみよう、と思いました。