柳田国男の周辺
──共同幻想の時間と空間

  • 時間

    183
  • 音質

    基本的にはライン録音された
    主催者の音源を採用したが、
    テープ反転で欠けの生じた
    部分については
    客席録音のもので補完。

  • 講演日:1986年6月8日
    主催:吉本隆明を読む会
    場所:盛岡市上田公民館
    収載書誌:洋泉社『定本 柳田国男論』(1995年)




僕自身も柳田国男について
論じたりしてきましたけれども、
同時に柳田国男が『明治大正史』でやったように
現在のイメージをどうつくるのかということも
やってきました。
その場合、柳田国男の方法は
無意識に僕らのなかに入ってきていて、
それをもとにして自分の分析をやってきました。
柳田国男が『海上の道』などでたどった、
稲作が南島から日本の島に渡ってきたという考え方は、
実証史学でいえば危ういところがあるのかもしれません。
しかし柳田国男の方法的な優位は、
実証でくつがえしえるというものではありません。
柳田国男の地勢のイメージのつくり方、
過去のイメージのつくり方、
民衆のイメージのつくり方の根本的なところは、
共同幻想の過去・現在・未来を考えていくとき、
現在でも有効だと考えています。