『きのう何食べた?』のジャムのおかげで、 ぼくの人生がちょっと変わったんです。 |
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ジャムをお売りになっていらっしゃってるという。 そのフィードバックに、本当にびっくりしました。 そうやって読んでいただいたものが 結局商品になるってすごいって思っています。 |
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まさかそんなになるとは思いもよらなかったですけど。 最初、自分が食べるものを作りたかったんです。 かつて失敗したことがあって、 うまくできないんだなと思っていたのが、 これを見たらとても簡単に書いてあったんで、 その通り作ったんです。 |
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その話を伝え聞いたとき、 感謝の気持ちを伝えたいと思いつつ、 そんな色気たっぷりにどうのじゃなくて、 遠くから感謝して祈ってましょうって思ってました。 |
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ありがとうございました。 最初はいちごで、きれいだから作ったんだけど、 いちごは実はいちばんめんどくさいんですね。 アクに関しては。 他のものよりあくが出るんですよね。 |
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煮てみると意外なものに 結構アクが出るってことがわかりますよね。 |
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これをきっかけにいちごがアクが出ることと、 思ったよりおいしかったこと、 すぐなくなっちゃうっていうことなど、 幾つかわかって、だんだん作る量が増えて、 その後は他のもので作りたくなって。 だんだん研究をし始めたら NHKの野菜の番組で 「それやりませんか」って言われて。 毎月1回、必ず作んなきゃなんなくなって、 で、次は配るようになって。 |
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はい(笑)。 |
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配ってるうちに喜ばれ方がだんだんとこう、 大げさになっていったんです。 つまりマンガを描きはじめたら プロになっちゃったみたいなような。 あれはうまいって言われるようになって、 いい気になって(笑)。 そのうち自分で食べなくても作るぐらいにまでなって、 配ってると「なくなったんだけど」って 言われるようになって‥‥、 みたいなことがころころ転がって、 とうとう工場があれば作れるじゃないかって。 |
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(笑)。 |
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大工場から1人でやってるみたいな工場まで、 いろんなところとお付き合いをして、 いま、ちょうどいい工場が見つかって、 ぼくのレシピで同じに作ってくれるんです。 |
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ジャムは、たくさん作ったから、 違うふうになるってものじゃないですものね。 |
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ぼく、食べ比べたんですけど、 ポピュラリティはたくさん作ったやつの方があります。 ぼくが作ったものはバラつきがありますから。 |
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なるほど! |
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そのときに初めて、 厳密な分量をちゃんと考えなきゃなんなくなって、 じゃあ俺はこれにしようって決めたんです。 『きのう何食べた?』のいちごジャムは、 砂糖、どのくらい入れてましたっけ? |
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果物重量の半分です。 |
思い出した。 ぼくはそれを守んなかったスタートだったんです。 減糖から始めちゃって、失敗しました。 ジャムとしての、ジャム格がないんです。 糖分を減らすと。 |
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友だちでカフェやってる子が、 ジャムも自分で作ってて、 スコーンについてきたいちごジャムが すっごくおいしくて、 「○○ちゃん、おいしい、このジャム!」 って言ったら、 「うーん、砂糖きっちり入れてるだけよ?」って。 やっぱ何かに付けるときって これぐらい甘くないとだめなんだーって すごいしみじみ。 たぶん市販のジャムは100:100で、 100:50が減糖だと思いますよ。 |
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ですよね。 100でつくっても、全然オッケーなんじゃないかな。 とらやの羊羹食べてても思います。 甘くておいしい。 |
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それでも、年寄りに言わせると、 昔よりずいぶん甘くなくなったって言いますね。 羊羹、昔はほんとにちょっと置いといただけで お砂糖が粉ふいたって。 |
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そうですね、お砂糖が固まって、 かりーんとしましたよね。 |
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やっぱり時代に合わせて砂糖の量を 若干量減らしてるかしれませんね。 わたしも、大人になってみて、 とらやのほんとにおいしさが。 |
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とらやがわかるっていうのが やっぱ大人の資格ですね(笑)。 ところで‥‥、 こういうのでよければお持ち帰りください。 |
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あっ、ありがとうございます。これはっ‥‥! |
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ジャムの恩返しです。 カレースパイスを持ってきたんですよ。 |
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はいっ! |
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1人でコツコツやることをやるのが ぼくの夜中の趣味なんです。 ジャムはそこにぴたっときたんですけど、 もう1つはカレースパイスづくりなんですよ。 |
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あ、すごい! |
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1回に何人分ぐらい作りますか? |
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1箱分だから、だいたい 8から10人分ぐらい作ります。 |
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だとしたら、カレー1箱に対して、 これの4分の1か5分の1ぐらいを、 ばーんと気前よく入れるです。 煮込みがだいたいできて、 カレールーを入れるときに火を止めますよね、1回。 その間に、これを油で1分くらい炒めてください。 もわもわもわーっと煙が出てくるので、 火を止めて、その油ごと鍋に入れてください。 |
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ルーを減らさなくていいんですね。 |
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減らさないでください。 塩も何も入ってませんから。 辛さは少ーし増すかもしれませんけど、 気になるほどの唐辛子は入ってません。 |
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作り立てですね。 |
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そう。会社を休んで。 もう、これはね、あんまり評判がいいんで! |
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わたし、カレーうどんがすごい好きで、 いつもカレーうどんを作るんです。 これ、入れます、そうやって。 |
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さっきのジャムの低糖の話じゃないですけど、 これだけでカレーを作ってる 時代があったんですよ、ぼく。 でもその時代は本格かもしれないけど おいしいって思うことが少なかったんです。 心からうまいって思うのは、 市販のカレールーを入れて、 このスパイスを足したやつです。 |
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(笑)わかりました。 |
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だからジャガイモとかも 思いっきりどうぞお入れください。 本格という言葉を全部もうどぶに捨てて。 ご自分で今作ってるカレーはだいたいどこの家でも、 わたしのカレーはおいしいわよっていうことまで 行ってるはずなんですよ。 で、それにこいつを、 手助けとして使ってください。 |
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ありがとうございます。 嬉しい、さっそくカレーうどんを! |
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ジャムもカレースパイスも、 もともとぼくの「仕事サボるメニュー」だったんです。 |
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すっごくよくわかります。 わたしも料理、好きなんですけど、 ほんとにネームが進まないときほど 難しい料理になっていって、 たぶん何かどこかで生産性の帳尻を 合わせようとしてるんだと思うんですよね。 全くネームがはかどらないので、 何か別のことでやり遂げたぞっていう、 その「何か」がほしいんだなっていう。 |
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ぼくらがやる仕事って言葉を扱うのが基本ですよね。 そうすると脳だけが働いてるっていうことになる。 脳が孤独過ぎるんですよね、きっとね。 |
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そうですね。 |
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ジャムにしてもカレーにしても、 偶然の要素があるんですよ。 いつでもその素材があるかどうかや、 火加減、さじ加減で、 「おっとっとっ!」て思うところが すごく嬉しいんですよね。 |
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たくさん作ると、手が慣れてくるっていうか、 たぶんそういう意味では脳を動かさないで 体が覚えてくれるようになりますよね。 なのに、できる。 それがたぶんすごいいいんだろうなって。 |
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そうですね、その通りですね。 この間、アイルランドの編物の取材に行ってて、 いろんな人がいるなかに、 「この人の作るのはいいなぁ」 っていうものがあって。 何かいいんですよ、特別にいいんですよ。 それは、何だろう? うーん、「思い」‥‥、 いや、「思い」じゃないな。 さらっとしてて、ちゃんと立つんですよ。 で、それを一緒に行った三國万里子先生は、 この方は同じ柄をたくさん編んでると思いますね、 って言ったんです。 だから今度はこうしてやれっていう 「思い」の分ていうのが、 同じものの美しさとしてすっと出せるように なってるんでしょうね。きっとね。 |
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職人さんの作ったものの美しさなんですね。 |
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そこでの「こってり」は、 編物みたいなときには ちょっとじゃまになるんでしょうね。 料理とか編物とかは。 ぼくもカレーに一時はスッポンスープとか 入れてましたもん。漢方薬とか。 バカというか、独りよがりというか。 結局それって、物語を食べちゃうわけです。 スッポンていうもの自体が もう物語の塊みたいなおいしさじゃないですか。 それをカレーに入れて、 「どうだうまいだろう」 って言われた方も大変ですよ。 |
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(笑)。 |
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神話のように、これは4日煮込むんだとかね、 あれもおかしいと思う。 特にカレーに関しては、 できたてがうまいですよね。 寝かせない方がいいです。 |
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ほんとですか。おおー。 |
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シチューとごっちゃにしてるんですよ、みんな。 イギリスから来たから。 昔はルーをけちってたんで、 もっと小麦粉っぽくて、 ソース分のところがおいしくなかったんですよ。 だったら煮込んで、水分が飛んで。 |
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あ、なるほど、ちょっと煮詰まった方が。 |
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こってりと煮詰まった方がおいしくなるんだと。 でも今はもう、ルーが贅沢ですから、 最初からおいしいんです。 なおかつスパイスの香りが飛んでない状態がうまい。 野菜の新鮮さも少し生きてた方がおいしい。 ぼくは肉も半分は煮込まずに後から入れたりします。 ステーキ半分にして、上にのっけたり。 |
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わぁ、おいしそう〜。 |
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カレーの調理時間はどんどん短くなってます。 話がすっかりカレーに行っちゃいましたね(笑)。 ぼく、マンガ詳しくないから、 なんだか申し訳なかったです。 |
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あ、いえ、とんでもないです。 ジャムの話もずっとうかがいたかったので、 聞けてよかったです(笑)。 |
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うん、ありがとうございました。 |
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ありがとうございました。 (おわり) |
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2013-01-29-TUE |