- ──
- こんど窪塚さんに
インタビューさせてもらうんだって
まわりの人に話すと、
みんな「おおー!」と言いつつ、
みんな「窪塚くん」って呼ぶんです。
- 窪塚
- もう、40ですけどね(笑)。
- ──
- いまだ自由な少年みたいイメージが
あるんだと思います、みんな。
- 窪塚
- まあ、好き勝手にやりすぎた20代が、
あったからかもしれないです。
- ──
- 窪塚さんが東京に住んでいた期間て、
かなり短かったみたいですね。
- 窪塚
- 19、20、21、22‥‥5年?
24には、もう横須賀に戻ってるんで。
- ──
- じゃあ、好き勝手やってた20代って、
主に20代前半までですか。
- 窪塚
- うん‥‥東京に住んでいたころは、
毎日毎日、
スポンジみたいに吸収してました。
10代のフラストレーションだとか、
まわりの大人たちへの憧れとか、
そういう、いろんな何かを感じながら。
- ──
- 当時は、原宿のファッション業界が
すごいことになってましたけど、
人気ブランドが新作入荷する日とか、
えらい行列ができたりして。
- 窪塚
- そうそう、なつかしい。
いわゆる「裏原」の最盛期ですよね。
- ──
- あの時期、窪塚さんも、あの場にいて。
- 窪塚
- うん、あの時代の原宿に
原宿のみんなといっしょにいられたことは、
俺にとって、すごい財産です。
今の自分を支えてくれる、
ひとつの大きな原動力になってますね。
- ──
- 原宿って街には、時代時代で、
ピカピカしてる人たちが集まりますね。
- 窪塚
- 楽しかったな、毎日。
- ──
- 横須賀から出て来た窪塚さんが、
原宿のファッション関係の人たちとは、
どうやって友だちになるんですか。
- 窪塚
- もう、クラブとかで紹介されたりして。
知り合ってすぐに
「明日ヒマ? 事務所に遊びにきなよ」
みたいな感じで、
バーっとみんなとつながって今に至る。
- ──
- なるほど。
- 窪塚
- 俺が怪我したとき、
ババーッといなくなった人たちなんて
たくさんいたけど、
変わんなかったのはあの人たちだった。
- ──
- そうなんですね。
- 窪塚
- うん。
- ──
- 当時の原宿には、
たくさんの人気ブランドが出てきて、
ほとんどが男性ファッションで、
で、そのひとつひとつが、
それぞれにカッコよかったですよね。
- 窪塚
- 道を歩けば絶対誰かとすれちがうし、
店を転々と渡り歩いて、
もう、えんえん遊んでるって日々で。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- まだ、SUPREMEの店が
ニューヨークに1軒しかなかったとき、
連れてってもらったんです。
ご縁をいただいて、もう20年以上、
お付き合いがありますけど。
- ──
- 今や、すごい人気ですよね。
ルイ・ヴィトンとコラボレーションしたり。
- 窪塚
- それも、ヴィトン側からのオファーでね。
ストリートから出たブランドが、
てっぺん届いちゃった感じがしましたよね。
ほんと、刺激を受けちゃいます。
- ──
- 服、お好きなんですね。
- 窪塚
- 好きですね‥‥ファッション誌に
よく出してもらってたころ、
スタイリングなんかも、
自前でやらせてもらってましたし。
- ──
- そういえば、降谷建志さんと共演した
映画『アリーキャット』で、
窪塚さんの着ていたジャンパーが、
すごいカッコいいなあと思ったんです。
- 窪塚
- ああ、あのドカジャン。
- ──
- どこかのブランドのものなんですか。
- 窪塚
- いやいや、ちがうと思いますよ。
ただの、
警備会社から支給されたジャンパー。
- ──
- 服がカッコよく見えるかどうかって、
やっぱり「着る人」なんですかね。
- 窪塚
- 安いボロボロの服なのに、
超カッコよく見えるみたいな人って、
ジャマイカに多いんです。
右足と左足でバラバラの靴を履いて、
もうなんだったら
サイズもちがってんじゃねぇかみたいな、
でもそれが、カッコよくて。
- ──
- それって、
もともとバラバラの靴しかないんだけど、
それを逆手に取って、
おしゃれに変換してる的な感じですか。
- 窪塚
- たぶん。
父親からもらったジャンパー羽織って、
派手なシャツをインして、
穴の開いてそうなハンチングかぶって、
それで、
何で、あんなにカッコいいんですかと。
- ──
- ‥‥何でなんでしょうね?
- 窪塚
- やっぱそいつが「いる」んでしょうね。
そこに、ちゃんと「自分」が、いる。
- ──
- 着せられてない、というか。
- 窪塚
- 「何を着るか」じゃなくて
「誰が着るか、どう着るか」‥‥って、
よく言ったりしますもんね。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- 全身作業着だって、
カッコいいやつはカッコいいわけだし。
逆に、いくらブランド着てても、
カッコ悪いの、いくらでもいますよね。
- ──
- 「40」という年齢は、意識しますか。
- 窪塚
- んー、年齢はただの数字なんだって、
よく言うじゃないですか。
英語でも「just a number」とかって。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- でも、そういう言葉はあるんだけど、
その場合、
本当にそう思ってるかどうか‥‥が、
重要なんじゃないですかね。
だって「歳とった」と言ってる人は、
実際、歳とってますもん。
- ──
- なるほど。
- 窪塚
- 歳をとるのが悪いわけじゃないけど、
年齢がどうあれ、
老けない人って老けないですよ。
いつまでも、
くそーってくらいかっこいいですし。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- たぶん、すごくシンプルなことだと思う。
- ──
- ご自分では‥‥。
- 窪塚
- 不老不死ぐらいの気持ちです(笑)。
そう思うのは、自由だし、タダだし。
そう思ってたほうが、楽しいし。
- ──
- そうですね。
- 窪塚
- 実際、ロンドンで
「今年40で、子どもが高校生になる」
と言っても、
あんまり信じてもらえないんですよ。
アジア人って、幼く見えるみたいで。
それがなんか、おもしろいです。
- ──
- じゃ「40歳になった」って言っても、
とりわけ、気にもせず。
- 窪塚
- なったんだとは思うけど、数字です。
50になるときも、たぶんそう。
このまえ子どもに言われたんだけど、
「オレがちっちゃいころから、
なんにも変わってないなー」って。
- ──
- お父さんが、ですか?(笑)
- 窪塚
- あの、よちよち歩きしてたのが、
いつのまにか
俺と同じくらいの背になるまでには、
だいたい、
15年くらい経ってるんですどね。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- そんくらいの年月じゃ、
老け込むこともできないんだなと。
- ──
- たしかに、小学生のときの自分と、
いまの自分と、
いったい何がちがうと言われたら。
- 窪塚
- 石ってどこから岩になるんですか、
みたいなことじゃないですかね。
「え、これくらいサイズになったら
もう岩って呼んでいいの?
まだダメ?」
みたいなことだと思うんですよ。
- ──
- なるほど。
- 窪塚
- そこに境目は感じてないっす。
<つづきます>
2019-06-25-TUE
写真:荒井俊哉