- ──
- 役者としての人生って、
この先、何十年もあるわけですけど。
- 窪塚
- 死ぬまでやるつもりでいます。
- ──
- 今後の展望って、どんな感じですか。
- 窪塚
- まず、俺が海外でどれだけやれるか。
そこに挑んでいきたいです。
- ──
- 明確な意思。
- 窪塚
- だって世界って広いなーって思うと、
ワクワクしません?
- ──
- 海外で活躍する役者さんの姿を見て、
奮い立つようなこともありますか。
- 窪塚
- (渡辺)謙さんと真田(広之)さん。
あのふたりは「陰と陽」みたいに
対照的だけど、
やっぱり際立った存在だと思います。
- ──
- なるほど。
- 窪塚
- 切り拓いていく姿に、勇気を得ます。
がんばろうって気持ちにしてくれる。
- ──
- インスタグラムを拝見してましたが、
窪塚さん、少し前まで、
ロンドンにいらっしゃいましたよね。
あれって撮影ですか。
- 窪塚
- イギリスの国営放送のBBCと
Netflixの共同制作の連ドラ撮ってて。
- ──
- おお!
- 窪塚
- 公開はまだ先‥‥11月かな。
- ──
- それは、楽しみです。
- 窪塚
- モックン一緒でしたよ。
- ──
- あ、本木雅弘さん。
そうか、ロンドンに在住ですもんね。
- 窪塚
- 俺の親分というか、ヤクザの組長役。
- ──
- セリフは英語です‥‥よね?
- 窪塚
- 英語と日本語、両方です。
- ──
- え、何週くらいの連ドラなんですか。
質問攻めですみませんが。
- 窪塚
- だいじょぶです(笑)、8週、8話。
日本のドラマって
1か月に4話くらい撮るんで、
8話だったら、
だいたい2か月で終わるんですけど。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- イギリスでは、
8話を9か月もかけて撮ってました。
- ──
- わ、そんなに長くかかるのって、
たくさん撮ったなかから、
いいシーンを厳選してつないで‥‥。
- 窪塚
- そう、どのカットも
10テイクくらい撮ってますからね。
- ──
- いい悪い関係なく。
- 窪塚
- 1発OKという概念がないんですよね。
何回もバリエーション撮って、
ベストの素材を使うというのを8話分。
- ──
- それで「8話で9か月」かかっちゃう。
- 窪塚
- あがってきたものを見たらわかります。
だからここまでやってるんだ‥‥って。
クオリティが、ぜんぜんちがうんです。
1話1話が1本の映画みたいな、
8つの連続した映画を撮った感じです。
- ──
- はー‥‥。
- 窪塚
- スタッフの本腰の入れ方もすごくって、
撮影は進んでるのに、
セリフがしょっちゅう変わるんですよ。
- ──
- わあ。
- 窪塚
- マジか、またかよって思うんですけど、
結果的に、
変えたほうが断然おもしろくなる。
とにかく関わってる人の情熱がすごい。
あそこまでされたら、
こっちも役者冥利に尽きるって感じで。
- ──
- 学ぶことも多いですか。
- 窪塚
- まず、プロデューサーとか原作者が、
毎日、現場にいるんですよ。
日本じゃ、考えられないと思うけど。
- ──
- そうなんですか。
- 窪塚
- 最初と最後くらいはいるけど、
途中はいないっていうのふつうだし、
けっこう現場に来てくれる人が
たまにいると、
作品愛あんだなって思ってたくらい。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- あっちだともう、鉄板でいるんです。
えらい人も現場の人も、
みんなで真剣にモニターを見つめて、
そりゃあ、いいもんできるよなって。
- ──
- なるほど。
- 窪塚
- お金もかかってるんだけど、
まずは、情熱がかかってるんですよ。
人の情熱‥‥が。
- ──
- それは、オファーが来たんですか。
- 窪塚
- オーディションです。
- ──
- じゃ、勝ち取ったんですね。
- 窪塚
- まあ、言えば。
- ──
- 海外、ですか。
- 窪塚
- そこで、勝負していきたいんです。
もちろん簡単じゃないんだけど、
本気でいけば、
俺でも通用するんだな‥‥って、
いま、少しずつ実感してるところ。
- ──
- きっと『沈黙』で経験したことも、
活きてくるんでしょうね、今後。
- 窪塚
- ですね。経験値としてはもちろん、
「マーティン・スコセッシって、
どんな感じだった?」
って、みんなに聞かれましたしね。
- ──
- そうか、
BBCだとかNetflixの人にとっても、
マーティン・スコセッシって、
同じように
マーティン・スコセッシなんだ。
- 窪塚
- あっちにいると、
街で声をかけられるわけでもなく。
- ──
- ひとりの日本人になれる。
- 窪塚
- そう、ただの、何でもない日本人。
それもまた心地いいんです。
- ──
- もう一回、新人に戻ったみたいな。
- 窪塚
- いや、本当、そういう感じですね。
でも、実際は新人じゃないから。
- ──
- ええ、キャリアがありますもんね。
それって、
ある意味で理想的な感じですよね。
- 窪塚
- そうなんです。
- ──
- 新人みたいなフレッシュな気持ちと、
謙虚な心と、向上心と、
これまで積んできた経験とがあって。
- 窪塚
- とにかく、あたらしい気持ち?
それを感じられることが大きいです。
- ──
- 舞台を変えることで。
- 窪塚
- うん。
日本の‥‥いわゆるテレビ業界には、
まあ、いろいろあって。
- ──
- ああ、そうなんですね。
- 窪塚
- でも、俺、あっちでは、
まだ何にもはじまってないんですよ。
- ──
- これからはじまる場所。
- 窪塚
- そう。
- ──
- 真っ白いスペースしかないような。
- 窪塚
- ですね。
- ──
- じゃあ、英語もがんばったりして。
- 窪塚
- そこですよね。
- ──
- ガンガンいっていただきたいです。
- 窪塚
- やりますよ。死ぬまで。
- ──
- 死ぬまで。
- 窪塚
- 役者って、やめるとかやめないとか、
そういうものでもない気がして。
作品に出ていない時期が
一時あったりするかもしれないけど、
それはやめたわけじゃなく、
選んでないっていうだけですからね。
- ──
- ええ。
- 窪塚
- いろんな考えがあると思いますが、
俺は、食うためにとか、
そういうことはしたくないんです。
わざわざ役者でそれをやるんなら、
どっかでバイトしてたほうがマシで。
- ──
- はい。
- 窪塚
- 自分の胸がドキドキすること、
そこが
いちばん大事だと思ってやってます。
- ──
- 応援してます。
- 窪塚
- ハリウッドも1本、決まっていて。
- ──
- え!
- 窪塚
- 主演で。
- ──
- わあ。
- 窪塚
- ‥‥まだ言っちゃダメだったかな?
- ──
- ええー(笑)。
- 窪塚
- ちょっとまだ、
詳しいことは言えないんですけど。
撮りに行ってくるっす、来年。
<おわります>
2019-06-26-WED
写真:荒井俊哉