「国民生活センター」さんにお話をうかがう前編が終わり、
今回から小豆島の平林有里子さんと
糸井重里による対談編がスタートいたします。
平林有里子さんは、
香川県小豆島の県民センターに勤め、
消費者からの様々な相談を受けている女性です。
ツイッターでのお名前は、yuriさん。
糸井との対談のために、
わざわざ小豆島から「ほぼ日」まで来てくださいました。
- 糸井
- 遠いところを、ありがとうございます。
- yuriさん
- はじめまして。
平林有里子です。よろしくお願いします。
- 糸井
- 糸井です。よろしくお願いします。
「yuriさん」とお呼びしていいですよね。
ツイッターでいつもそうですから。
- yuriさん
- はい。
‥‥‥‥(乗組員に)写真、撮るんですね。
- ────
- はい。お話している様子を。
- yuriさん
- ‥‥そうですか。
- 糸井
- もしかするとyuriさん、あまり写りたくない?
- yuriさん
- あの‥‥はい‥‥
ごめんなさい、ちょっと恥ずかしくて。
- 糸井
- わかりました。
じゃあyuriさんを撮るのはなしにしましょう。
ぼくだけ撮って
この場の雰囲気をお伝えできれば、
それで大丈夫ですよね(乗組員に)。
- ────
- 大丈夫です。
- yuriさん
- すみません、わがままを言って。
- 糸井
- いえいえ。
ま、記念写真のように撮ってますけど、
「ほぼ日」に載せるときには
首から下だけにするとか
そういうふうにさせていただきますので。
なんにも気にせず、おしゃべりしましょう。
- yuriさん
- ありがとうございます。
だいぶ気がらくになりました(笑)。
- 糸井
- よかった(笑)。
- ────
- おふたりは、ツイッターで知り合われた?
- 糸井
- そうです、震災後ですよね。
- yuriさん
- はい。
ある日、気がついたら
自分のツイートがたくさん読まれていました。
リツイートの数がものすごいんです。
フォローの数も増えてる。
よく見たら、
「糸井さんがわたしのことフォローしてる!」
びっくりしました。
- 糸井
- ぼくはフォローをしょっちゅう変えるんですよ。
そうしないと
入ってくる景色が一色になっちゃうんで。
ですから、そうですね、
yuriさんのことも、ある日フォローしました。
お花のアイコンで女性らしいんですけど、
ときどき強く感情が出ますよね。
- yuriさん
- ええ。よく怒ってます(笑)。
- 糸井
- そりゃあ、怒ることもあります。
ぼくも怒ります(笑)。
「感情なしに書く」っていうのは無理ですから。
- yuriさん
- そうですね、感情は入ります。
- 糸井
- で、さっそくですが、
高齢者を狙う詐欺的商法のお話。
- yuriさん
- はい。
- 糸井
- いろいろな伝え方があると思うんですけど、
なるべくやわらかくしたいな、と思うんです。
興味を持ってくれることが大事なので。
- yuriさん
- ええ、ええ。
- 糸井
- いちばん最初に、
yuriさんから詐欺の手口を聞いたときは、
「たいへんだ!」
「早く伝えなきゃ!」って思いました。
でも、なんていうんだろう‥‥
伝える相手に胸騒ぎをさせすぎると、
他人ごとのようになっちゃう。
「怖いことがあるねぇ」で終わってしまう。
そうじゃなくて、
「あなたのとなりのお話ですよ」と思ってもらうには
やっぱりこう、
やわらかくやったほうがいいんじゃないかと。
- yuriさん
- なるほど。
- 糸井
- まずは、小豆島のことを聞かせてください。
瀬戸内の島ですよね。
- yuriさん
- ええ。
人口30,000人くらいの島です。
山があって渓谷もある。
もちろん海があるし、棚田も見える。
そういう景色が、すべてこう、
車で数十分のところにおさまってるんです。
- 糸井
- ああ、いいですねぇ。
風光明媚なその場所に、
yuriさんは外からやってきたんですか。
- yuriさん
- はい。2006年に。
- 糸井
- 島に来たときには、
「島だぞ」っていう決意はありました?
- yuriさん
- ありました、最初は。
でも、生活必需品はなんでもそろいますし、
コンビニもあるし、ホームセンターもある。
とくに不自由はないんです。
- 糸井
- その「フルセットある」っていうのは、
東北もそうなんです。
地方都市はぜんぶそうですよね、いま。
- yuriさん
- ええ。
- 糸井
- そういう街を歩いたときに感じるのが、
「あれ? お年寄りばっかりだ」
- yuriさん
- ああー。
- 糸井
- ぼくはものぐさだったんで、
あんまり外に出なかったんですけど、
震災以後、地方へ行くことが多くなったら、
いやぁ、お年寄りですね。どこもかしこも。
- yuriさん
- はい。
- 糸井
- 自分も年寄りなので、あれですが、
「これだけお年寄りがいれば、だまされるなぁ」と。
- yuriさん
- ほんとうにそう思います。
- 糸井
- 小豆島もそうですか。
- yuriさん
- そうですね。
わたしが担当している香川県は、
貯蓄率が高い場所なんです。
- 糸井
- 貯蓄が多いから狙われる‥‥。
敵はそこを調べてあるんですね。
- yuriさん
- ええ、もちろん。
よーく調べていると思います。
そして、それを調べて貯金を狙うのは、
「そういうお商売の方々」なんです。
- 糸井
- なるほど‥‥。
つまり、「仕事」としてやっている。
- yuriさん
- はい。
よからぬ人たちが集まってというより、
そういう業界があって、
そういう仕事をする会社があるのではないかと。
そして、社員がはたらいている。
- 糸井
- ‥‥切ないですね。
- yuriさん
- ただ、そういう会社は、
会社という体裁を保とうとするので連絡はつきます。
ですから返金の交渉ができるんです。
- 糸井
- そうか。
- yuriさん
- 実際、取り戻したこともありました。
でも、返金するお金があるということは、
その会社は商売が成り立っているわけで‥‥。
- 糸井
- 逃げはしないけど、
ある意味、筋金入りの会社ですね。
- yuriさん
- ええ。
それと、その一方で‥‥。
最近、相談員の先輩方と、
こんなことをよく話しています。
「わたしたちがこれまで相手をしてきたのは、
悪質なところもあったけど業者さんだった。
でも今は
犯罪者の相手をしてるよね」
- 糸井
- プロが相手になった。
- yuriさん
- プロですね。詐欺師です。
筋金入りの会社でも、
「潰れたら困る」と考えますから
行政のいうことをききます。
- 糸井
- ええ。
- yuriさん
- プロは、会社を維持しようとは思いません。
簡単に株式会社をつくれる今は、
「儲けるだけ儲けたら畳んで逃げればいい」
という、
犯罪者にとってすごくやりやすい状態に
なってしまっているんだと思います。
- 糸井
- うーーん‥‥。
儲ける速度も、きっと速くなってますよね。
- yuriさん
- 速いです。
その速さは高齢者に向けられます。
- 糸井
- ‥‥やわらかく伝えたいんですが、
やはりこれは、厳しい話ですね。
(つづきます)
2013-12-02-MON