その3 いまどきの送りつけ商法
───国民生活センター取材編(3)

飯田さん
高齢者トラブルのもうひとつのトレンドに、
「送りつけ商法」というものがあります。

右から、国民生活センターの飯田さんと生方さん。

────
「送りつけ商法」。
飯田さん
3、4年前にピークだったのが、
カニの送りつけです。
────
あ、「カニカニ詐欺」!
3、4年前のことなんですね。
それはほんとにカニを送ってきて、
その代金を払えと、そういうものだったんですか。
飯田さん
そうです。
ただ基本的に、
受け取る必要も払う必要もないんです。
────
いくら払えと言われても、放っておけばいい。
飯田さん
申し込んでいないので。
ただ、食べちゃった場合は
ちょっと消費してしまったことになるので、
業者から「買ったと見なす」と
主張される可能性が出てきます。
ですから、食べないのがいちばんですね。
────
でも、お年寄りは食べちゃいませんか。
飯田さん
そうかもしれませんが‥‥
ただですね、
私は実物を見たことがないんですけど、
そうとうボロボロの商品価値のないカニが
送りつけられてくるようです。
────
はあーーー。
いろんな意味で、ざんねんな話ですね‥‥。
飯田さん
もう、カニのトラブルはすくなくて、
いま、送りつけ詐欺で
被害が大きいのは健康食品です。
生方
たとえば、こういうものですね(箱を出す)。
────
これは‥‥?
生方
お見せできない部分にテープを貼っていますが、
「グルコサミンと高麗人蔘」
が入っているという健康食品です。
────
これが送りつけられてくる。
飯田さん
ええ。高齢者に。
これがだいたい3万円とか4万円くらいです。
────
やはりお年寄りにですか‥‥。
飯田さん
代引き配達で送られてくるのが特徴なんです。
民間の配送会社には、
「代金引換配達」というものがあります。
配達の際、代金と引換に荷物を渡す、
そのシステムを利用するんです。
たとえば、
この健康食品を代引き配達で送りつける。
代金は3万円とか4万円。
手元になくはないお金なので、支払ってしまう。
────
はい‥‥。
飯田さん
あるいは、事前に電話がかかってきて、
「あなた以前に注文したでしょう」とか、
「定期購入してるでしょう」などと言われる。
高齢者の方は覚えがないんだけれども、
「じゃ、送りますから」と言われて、
「ああ、買わなきゃいけないのかな」
となってしまう。
脅されて、恫喝されて、
「買います」と言わされることもあります。
一方的に送りつけて、3万円なり4万円を払わせる。しかも、
1度払った人に対しては、いろんな業者がまた‥‥。
────
そこでも2次被害が。
飯田さん
はい。
────
うーーーん‥‥。

あの‥‥
いままでうかがった詐欺的商法の発生率は、
都内と地方では、どうなんでしょうか。
飯田さん
都内と地方ですか‥‥。
手元に資料がないので正確ではないのですが‥‥
そうですね、
基本的には人口比に対応していると思います。
────
人が多いところに被害が多い。
飯田さん
関東、中部圏、それから近畿圏ですね。
やはり都市は絶対数が多いので
相談件数も多いように思います。
‥‥ただ、
人があまり住んでいないところの高齢者も、
確実に狙われています。
「まわりになにもない、交通の便も悪い、
 悪徳業者はこんなところまで
 わざわざお金を回収しに行くのか‥‥」
と思うケースがあります。
────
だます側の立場ならば、
さみしい場所のほうが
ヒット率が高いのでは?と思ってしまいます。
タンス貯金もありそうだし。
飯田さん
そうですね。
「こんな田舎に都会で流行りの
 詐欺がくるわけない」
という油断はできませんね。
────
‥‥どうすればいいんでしょう?
「注意してください」というアナウンスって、
若い人には届きやすいと思うんです。
ぼくらもインターネットで伝えられますから。
でも、自分の親や、おじいちゃんおばあちゃんは、
今日うかがったお話を
どうやって知ればいいんでしょう‥‥。
飯田さん
それについては、
まさに、われわれがいま、
いちばん悩ましいところです。
────
まめに実家に電話をするとか、
そういうことなんでしょうか。
飯田さん
そうですね。
ご自分でできることとしては
それはあると思います。
「最近へんな電話ない?」と聞くようにする。
────
はい。
飯田さん
あと、5年ぐらい前からいろいろな地域で
取り組みが進んでいるのは、見守り活動ですね。
ひとり暮らしの高齢者の方が、
やっぱり狙われるんです。
ですから地域の介護の方であるとか、
地域包括支援センターの方などが連携して、
そのひとり暮らしの方に不審な点がないか、
妙な契約書や、高価そうな健康食品がないかを‥‥
────
見守る。
飯田さん
この取り組みが進めば、
被害を早くキャッチできるようになります。
早く気づけば、
それを消費生活センターにつなげるようになる。
────
やはり早さが大事。
飯田
そうです。
────
早く気づいたときに、
みんながすぐに「消費生活センター」を
思いつく必要がありますよね。
それがもっと一般的に広がればいいと思うんです。
たとえば、山形に両親がいる東京の人だったら、
山形の実家の近くにある「消費生活センター」の
電話番号をお母さんに渡して、
「何かあったらここに電話して相談して」
と言っておくようにするとか。
飯田さん
いま、全国統一のナビダイヤルがあるんです。
「消費者ホットライン」という、
誰もがアクセスしやすい
相談窓口として設けたものです。
その番号をご紹介いただけると。
────
もちろんです、紹介させてください。

※消費者ホットライン(全国共通)をご利用の際は、
 こちらをよく読んでからダイヤルを。

────
この番号を、実家に教えればいいわけですね。
ちなみに、
当事者じゃない人が相談することもできるんですか。
飯田さん
できます。
────
「うちの母親がどうも‥‥」
という相談でも大丈夫ですか。
飯田さん
大丈夫です。
────
母親が嫌がっていても、大丈夫ですか。
「詐欺じゃない、あの人はいい人なんだ」って。
飯田さん
ああ、そのケースはけっこう多いですね。
ご高齢の方には被害者意識がない
というのもありまして、
業者さんと仲良くなってしまっている。
‥‥ちょっと微妙ですが、
ご相談を受けることはできます。
────
アラートは出せるということですね。
飯田さん
まずは事実を伝えていただくことからです。
いずれにしても、
早くから知っていることが大事ですので。
────
‥‥わかりました。
きっとまだまだ知るべきことはあるのでしょうが、
お話をうかがって、だいぶ不安が減った気がします。
飯田さん
そうだといいのですが。
生方さん
お役に立てましたでしょうか。
────
もちろんです、ありがとうございました。

飯田さん、生方さん、
お忙しいなかありがとうございました。

最後に「相談の現場」を見学させていただいてから、
われわれは「国民生活センター」をあとにしました。

相談員のみなさんが電話で対応されています。

出会い系サイトのトラブルも増加しているとか。

数名の相談員さんが集まっているデスクもありました。

この現場には、年間で1万件くらいの
相談が寄せられるそうです。

おふたりが繰り返しおっしゃっていた
ことばを最後にもう一度。

「すこしでもおかしいと思ったら、
 すぐに相談の電話をしてください」

以上で、国民生活センター取材編を終わります。

(平林有里子さんと対談編へつづきます)
2013-11-29-FRI

相談したいことがあるときは

ひとりで悩まず、相談しましょう。
相談は基本的に「電話」で行います。

消費者からの相談を受け付ける国の機関、
「国民生活センター」のサイトはこちら。

一方、「消費生活センター」とは、
消費者保護を目的とした都道府県・市町村の行政機関で、
日本全国にたくさん設けられています。
「国民生活センター」と「消費生活センター」は
互いに協力し合い、消費者対応を行っています。
相談をしたい場合はどちらでも大丈夫。
お住まいに近い機関へ連絡をしてみましょう。

「消費生活センター」への相談方法は、
こちらのページでくわしく説明されています。
「国民生活センター」の相談窓口は、
こちらからどうぞ。