田中泰延+古賀史健+燃え殻+永田泰大+糸井重里「書くについての公開雑談。」
コピーライターの田中泰延さん。
短編連作が話題となった、燃え殻さん。
『嫌われる勇気』の古賀史健さん。
「ほぼ日」の永田泰大。
『小ネタの恩返し。』の解説陣4人と
糸井重里が、トークしました。
書くとは、何か。
なんでそんなに、いっぱい書くの?
この5人で話して、
おもしろくならないわけがありません。
全9回にわけて、お届けします。
9月にやったイベントですが、
図らずも年末らしい感じになりました。
どうぞゆっくり、読んでってください。
田中さん&古賀さん&燃え殻さんのプロフィール
第1回
なんでそんなに書くのか。
糸井
渋谷ロフト1階のこの場所は、
「ほぼ日手帳」の売り場なわけですから、
まあ、通常であれば
「ほぼ日手帳」のイベントをやるんです。
田中
そうですよね。
糸井
毎年「ほぼ日手帳」の発売のすぐあとに
この場所で、
誰と何を話すのかということについては、
いつも、けっこう考えています。

たとえば、3年前は、
松浦弥太郎さんと西田善太さんでした。
その翌年は、久米宏さん、
その翌年つまり去年は、松本隆さん‥‥。
会場
(笑)
燃え殻
超帰りたいんですけど。
田中
ものすごい「烏合の衆感」出てませんか。
われわれ。
糸井
今年は誰がいいでしょうね、という相談は、
ある意味で楽しい相談なんですが、
今年はもう1も2もなく、この人たちでと。
古賀
そうなんですか(笑)。
糸井
先日、発売になったばかりの
『小ネタの恩返し。』の解説陣の4名に、
お願いするのはどうか‥‥と。

そう提案しましたら、もう、満場一致で。
田中
ええー? 満場って。どこの満場です?
糸井
「それがいい! それがいい! それがいい!」
そこにいるみんなが、そう言いました。

ひとつ残念なのは、
この場所に浅生鴨さんがいらっしゃらないこと。
田中
本当ですね。
糸井
ただ、浅生さんという人は、
原稿料が発生するタイプの仕事をしている人で、
今回のこの仕事は依頼しにくいです。
燃え殻
どういう意味ですか(笑)。
糸井
ここにいるあなたたちは、言ってみれば
ちょっと目を離すと
すぐにタダ働きしちゃうタイプの人たちなんで、
本当によくないと思うんですが(笑)、
その点、浅生さんは、
いまや、新潮社の売れっ子作家なわけですから。
燃え殻
ですよね。
田中
小説『アグニオン』、売れてますね。
糸井
そういうこともありながら、
今回なぜ、みなさんをお呼びしたのかというと、
「なんで、そんなのいっぱい書くの?」
という話を、聞いてみたいなと思ったんですよ。
田中
そんな、身もフタもない(笑)。
糸井
あえてこじつければ、「ほぼ日手帳」だって、
使ってくれているみなさんは、
とくに見返りもないのに、書いてるでしょう。

つまり、書くことのよろこびって、何なのか。
古賀
なるほど。
糸井
そのあたりが話せたらなあ‥‥というわけで、
さっそくですが、
まず、隣の古賀さんに渡してしまいましょう。
古賀
なぜ書くか?
糸井
なぜ書くか。
古賀
そうですね‥‥正直、たとえばこういう場所で
気の利いた受け答えをするのは、苦手なんです。

どちらかというと、話すより文字に書くほうが、
自分の考えを、
しっかり伝えられるなあという感覚があります。
糸井
ちっちゃなころから悪ガキで、
文字ばっかりたくさん、書いていたんですか?
古賀
いや(笑)‥‥あの、小学生の担任の先生が
ちょっと変わった人で、
小学生なのに「卒業論文を書きなさい」って。
糸井
へぇ、小学校を卒業する論文を。
古賀
たぶん、まわりのみんなは、
夏休みの自由研究みたいなものを書いたんだと
思うんですが、
僕はそのとき「小説」を書きまして‥‥。
糸井
小説。
古賀
そのころには、
すでに「書くことって、楽しいなあ」と
思っていた気がします。
糸井
そんな子、まわりにいなかったでしょう。
古賀
ええ、いませんでした。
糸井
大きな前提として書くのが大好きだった。
古賀
そうですね、思えば。
糸井
では、古賀さんの書くことへの衝動的な部分は、
おいおい聞いていくとして、
ひとまず、次にバトンを渡しましょうか。

田中さん、
あなたは、なぜ、あんなに書くんですか。
あなたの映画評とか、
もう、非常識なほど長いじゃないですか。
田中
僕は、このしゃべりからもわかるように、
大阪の子なんです。
糸井
はい、知ってます。
田中
で、みなさんよくご存知のように、
大阪の子って、
とにかくウケてないと不安になるんです。

クラスのなかでも、人を笑わせるヤツに、
ものすごい価値があります。
バナナの皮がそこらへんに落ちてたら、
率先して滑りにいかないとダメなんです。
糸井
あぁ‥‥。
田中
すると、どうなるか。

我先にと一番に滑ろうとするヤツだけでなく、
人より鮮やかに滑ろうとするヤツとか、
バナナの皮がなくても滑って見せるやつとか、
どんどん出てくるんですよ。
糸井
めんどくさい(笑)。
田中
そして、
なかでもおもしろかったヤツのことを思って、
「アイツ‥‥今日よかったなあ」
と悔しがりながら、夜、フトンに入るんです。
糸井
じゃあ、田中さんは、
それで、おもしろいことをたくさん書こうと?
田中
その当時の「小学校の教室のルール」を、
「書く」ということで、
今日まで46年間、引っ張ってきたのが私で。
糸井
みんな、脱落していくんだ。
田中
そりゃあ、会社に勤めたりとかしたら
「もう、こんなことやってちゃあダメだ。
 小学生そのまんまやないか!」
って、ふつう思うと思うんですけど、
僕は小学生のピュアなハートを守り抜いて。
糸井
だから、誰からも頼まれていないのに、
あんなにたくさん書いてる。
田中
はい、そうです。

もう、書かずにおれないというか、
自分がおもしろがって書いた文章に対して、
コメントを付けてくれたりとか、
一緒になってふざけてくれるってことがね、
猛烈に、うれしいんですよ。
<つづきます>
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