── |
2006年の「ゾーヴァ展」も、
高橋さんが担当されたとうかがいましたが。
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高橋 |
そうですね、私が担当しまして、
読売さんの主催というのも同じでしたよね?
(となりの男性、須賀さんに訊ねる)
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須賀 |
はい、そうでした。
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── |
なるほど。
高橋さんはふだん『松屋』さんの中で、
どのようなお仕事をされているのでしょう。
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高橋 |
基本的には、展覧会の企画です。
どんな展覧会をやったら
お客様に来てもらえるのかなっていうところを
いろいろ取材などをしながら、
企画をして立ち上げて運営するという感じで。
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── |
では、いつも探されてるわけですね。
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高橋 |
ええ、そうですね。
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── |
ゾーヴァさんのことも、
そうやって見つけたわけですか。
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高橋 |
自分で見つけたというより、
教えていただいたんです。
「この絵をどう思う?」と。
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── |
あ、そうでしたか。
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高橋 |
たまたま見せていただいたのは、
『ちいさなちいさな王様』とか、
『エスターハージー王子の冒険』でした。
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── |
そこで、ピンときた。
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高橋 |
ええ、そうでしたね。
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── |
いろいろな展覧会を企画されている
高橋さんですが、ゾーヴァさんはとくに。
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高橋 |
はい。
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── |
だいぶ、高橋さんの熱さを感じます(笑)。
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高橋 |
そうですね、そうかもしれません(笑)。
前回のゾーヴァ展で、初めて原画を観まして。
もう、すばらしいんですよ。
ホップ、ステップ、ジャンプじゃないですけど
何作か挿画などをみたあとで原画を観て、
一気に、飛躍的に好きになりました。
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── |
原画は、そんなに。
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高橋 |
そうですね。
さらに、今回は企画から関われたことも
私にとっては大きかったです。
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── |
え? じゃあ、前回は?
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高橋 |
来る作品がパッケージのようになって
決まっていたんです。
もちろんそれはそれですばらしかったのですが。
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── |
それが今度は、観たい作品を選べた。
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高橋 |
そうなんですよ。
作品のリクエストの段階から関われましたし、
実際、ゾーヴァさんのご自宅や
アトリエにお邪魔して
ゾーヴァさんのお人柄まで
拝見することができたんです。
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ゾーヴァさんのアトリエにて |
── |
すごい。
それは思い入れもひとしおになりますね。
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高橋 |
ほんとに暖かく迎えていただいて、
奥様の手料理までごちそうになって。
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ゾーヴァさん宅のお庭で |
── |
ゾーヴァさんはどんな方でした?
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高橋 |
とても穏やかで、
そうですね、のんびりとした印象でした。
大勢のスタッフでうかがったんですが、
かまえることなくお話をしてくださいました。
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── |
ああ、うらやましい取材です。
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高橋 |
この取材で、ちょっとおもしろいというか、
今回の展覧会のポイントになることが
わかったんです。
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── |
と言いますと?
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高橋 |
ゾーヴァさんの絵が、変化してるんです。
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── |
変化、ですか。
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高橋 |
ええ。
例えば私たちが「この絵を展示したい」と
資料を見せながらお願いすると、
「ああ、それはいま、こうなってる」と、
描き加えられた絵を出してくださるんです。
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── |
ああー、つまり自分の作品に上塗りを。
絵が変化していくって、そういうことでしたか。
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高橋 |
たとえば、この『ちいさなちいさな王様』。
「ちいさなちいさな王様」より
© Michael Sowa
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── |
はい。
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高橋 |
最初に描かれたときには新聞の左に、
卵があったんですよ。
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── |
卵。
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高橋 |
それで、これがちょっと情報が錯綜しまして、
「今回やってくるのは卵あり」
「やっぱり卵なし」
「いや、卵ありで」
と情報が2転3転しまして。
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── |
なんか、
ラーメン屋さんの会話みたいですね(笑)。
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高橋 |
はい(笑)。
結局は、卵なしが展示されることになりました。

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── |
へえ~、おもしろいですねえ。
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高橋 |
この作品の場合は上塗りですが、
「コピーをとってその上に上塗りする」
という方法のものもあるんです。
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── |
ええと、その場合は‥‥
オリジナルは残るから、
似ている雰囲気の絵が何枚もあることに?
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高橋 |
そのあたりが、謎も多くて、
どれがオリジナルなのか、
そもそもオリジナルはもうないのか、
いろいろと不明なままなんですよ。
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── |
それは、
作品の整理がたいへんそうですねえ‥‥。
具体的にはどうやって集めて、
どのように整理されていかれたのでしょう?
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高橋 |
それについては、
須賀さんからお話いただいた方が
いいのかもしれませんね。
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須賀 |
あ、急にきましたね(笑)。
ぼくからですか。

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── |
お待たせしてすみません、須賀さん。
ぜひ、お話をお願いします。
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(須賀さんのお話につづきます) |