睡眠論の第2走者は
「ほぼ日」では『海馬』の著者としておなじみの
脳のスペシャリスト、池谷裕二さんです。
眠っているあいだ、頭の中では
勝手にいろんなものが登場して
いろんなことが起こっているらしいです。
もしかして、いま、
寝ている場合じゃない状況ですか?
そんなときこそ、ちょっとだけ、
眠ってみるといいかもしれません。
すばらしい脳の眠りの世界へ、どうぞ。
池谷さんに、久しぶりにお会いできたので、
スタッフみんなで集まって
ときどきゴハンをつまみながら、お話を聞きました。
第1回
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第2回
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第3回
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第4回
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第12回
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第13回
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池谷 | 睡眠特集にさきがけて行なわれた 『「ほぼ日」睡眠アンケート』の質問項目に、 僕の訊きたい質問を じつは、まぜてもらっていました。 どの質問かというと、これです。 ふだんの睡眠時間 理想の睡眠時間 科学的に正しい睡眠時間のイメージ この結果を見て、まず思ったのは、 みなさんが実際に寝ている時間と、 「これだけ寝れば科学的に十分だろう」 と思う時間が、けっこう似ていることです。 みなさん、自分がやってることは正しいと 思っていらっしゃるんです。 その一方で、当然といえば当然なんですが、 「何時間寝たいか」をたずねられると より長い時間を答えています。 |
糸井 | そうですね。 「理想の睡眠時間」で、 もっとも回答の多かったのは8時間。 僕も、睡眠はやっぱり、 長ければ長いほどいいと思ってます(笑)。 |
池谷 | 「もっと仕事したいから、3時間に減らしたい」 と、逆の答えをする人が もう少しいるかと思っていました。 つまり、多くのみなさんが 長く寝たいと思ってるんですね。 |
糸井 | それは、ある種の
自己愛から来ているのかもしれませんね。 「こんなにがんばっているのに、 本来手にできる幸せを得られていない。 いずれは望んだ分だけ寝られるような、 自分になってみたい」 僕もそうです(笑)。 |
池谷 | なるほど。 睡眠をたくさん取るということが、 ひとつの理想、いわばステータスなんですね。 糸井さんは、睡眠時間は 短いほうですか? |
糸井 | 短くないです。 僕はいつも眠くて、いくらでも寝たい人間です。 だいたい6時間は寝ていて、 それで、少ないと思っています。 二度寝も好きです。 |
池谷 | 二度寝は、みんなが好きですね。 |
糸井 | 二度寝は「俺は寝てるんだ」ということを 意識できつつ眠るから、心地いいんでしょうね。 つまり二度寝は、ごちそう感がある。 ほんとうに熟睡している場合には 熟睡と感じられないから。 |
池谷 | まさにそうです。 最後の30分は気持ちいいとか、 あと10分寝ていようとか、 それは自分が「そう考えた眠り」です。 例えば、ほんとうに集中してるとき、 「オッ、俺、集中してる」とは思わない。 「俺、集中してる」と思ったら、 それは集中してないんです。 同じように「俺、いま寝てる」と思えるのなら、 それは寝てないわけです。 みなさんは、おそらく 自然にフッと起きたときには、 まず時計を見るでしょう? |
糸井 | 見る、見る。 |
池谷 | 「自分が何時間寝たか」を
ほんとうは、脳はわかっていないんです。 もしわかっていたら、 時計を見なくていいんですから。 |
糸井 | いやあ‥‥それは、 ほんとうに、わかってないですね。 「まだ暗いから3時くらいかな?」 なんてことは、すぐ考えるけど。 |
池谷 | 何時間寝たか、見当をつけても、 意外とはずれたりします。 |
糸井 | はずれる、はずれる。 |
池谷 | そういう点から考えると、 アンケートで訊いた 「何時間寝たいか」といったときの 「何時間」が、 どういう意味合いをもってくるのでしょうか。 どう、たくさん寝たところで、 「寝た」という実感は、ほんとうはないんです。 |
糸井 | ない、ない。 わかってないんだから、ない。 |
池谷 | ですから、たくさん寝たという実感は、
どれだけ、朝、ふとんの中でグダグダしたか、 という感覚だけなのかもしれません。 それだったらば、ピュアな睡眠とはいえないです。
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2007-12-26-MON