第1回 似顔絵は、いろいろ深い。
- ──
- これまでの人生で、
「似顔絵」を描いていただいた経験が、
2度ほどあるんですが、
どちらも、すごく、大事にしています。
- 和田
- ええ。
- ──
- 知人や同僚には照れくさいんですが、
遠慮のいらない家族などには、
もうれつに、じまんしてやりたくなります。
- 和田
- よければ遺影も描きますよ。
- ──
- ええーっと、遺影を‥‥似顔絵で?(笑)
それは、自分の一存では。
- 和田
- 有名な人に描いてもらったら、
もしかしたら、アリかもしれないですよ。
- ──
- そうですかね。
- 和田
- たとえば荒木飛呂彦さんに描いてもらう、
「ジョジョ風の遺影」とか。
- ──
- ああー、
部長、スタンド使いだったもんなあとか?
- 和田
- 原哲夫さんの描いた遺影で、
「おまえはすでに死んでいる」とか。
ただね、ぼくの場合、
あまり大きく描いちゃうとバレるんです。
- ──
- バレるというと、何が‥‥。
- 和田
- いろいろと。
- ──
- なるほど。大きく描くといろいろバレる。
それが、似顔絵。
- 和田
- あくまで、ぼくの場合ですけどね。
あと、描けば描くほど似なくなるんです。
同じ人を描く場合も、
1回目より2回目、2回目より3回目のほうが、
うまく描こうという煩悩がはたらくのか、
邪念に邪魔されるのか、どんどん似なくなって。
- ──
- 深いです。
- 和田
- だから、一発目に描いた似顔絵が、
いちばん似てる気がする。
ああ、ちょっと失敗したなとか言って、
変に描き直したりすると、
泥沼にズブズブ嵌まっていくんですよ。
- ──
- それって、なんでですかね。
- 和田
- うーん、思えばマンガの場合も同じで、
最初のペン入れがいちばんよくて、
描き直すにつれ、
だんだんおかしくなっていって、
最後は、イヤになっちゃうんだよなあ。
- ──
- 何かファースト・インプレッション的な、
そういうことがあるんでしょうか。
- 和田
- ミュージシャンの人にも、
いわゆる「一発録り」って、あるじゃない。
結局、あれこれやるより、
そっちのほうが勢いがあっていいみたいな、
あれに近いのかなあ。
- ──
- 一回目は、筆がイキイキしていると。
- 和田
- そう。描けば描くほど、
目が、どんどん死んでいくんですよ。
結局、職人さんみたいに
作品を練り上げていくタイプじゃないから。
ビギナーズ・ラックだけを頼りに、
ここまできてるから。デビューのころから。
- ──
- そんなことないですよ。
- 和田
- まあ、仮に似てなくても、最終的には、
その人の「名前」を入れたら、
不思議と似てくるってテクもあります。
- ──
- 大技だなあ(笑)。
- 和田
- さらに言えば、名前のあとに「年齢」を
「(38)」とか入れたら、
もう、その人以外には見えなくなります。
まあ、これはナイショのテクですけどね。
- ──
- すでに世界に公開してしまっていますが‥‥、
でも、ラヂヲ先生の場合、
似てりゃいいってモンでもないですよね。
- 和田
- そうなんですよ。よくわかってますね。
ただ似てたって、おもしろくないんですよ。
それだと笑えないし、
似顔絵って、ある意味「ギャグ」なので。
- ──
- どこか、コロッケさんのデフォルメ芸にも、
通じるものがありそうですね。
ちなみに先生、こちらをおぼえていますか。
- 和田
- あー。ああー。おぼえてる(笑)。
むかし、吉田(戦車)さんと描いたやつだ。
- ──
- そうです、2009年のことですが、
吉田戦車先生と和田ラヂヲ先生のお二人に、
巣鴨のとげぬき地蔵尊のあたりで
スペシャル対談をしていただいたんですが、
そのとき描いていただいた、
「それぞれのシルベスター・スタローン」。
その、貴重な原画です。
- 和田
- 何にも見ないで、せーので描いたんだよね。
- ──
- このときラヂヲ先生がおっしゃった言葉を、
いまも忘れることができません。
「ああー。俺のスタローン、
ジャッキー・チェンになっちゃったよ」
と。
- 和田
- ああー。なってる(笑)。ジャッキーに。
しかも、最近のジャッキーっぽい。
ハリウッドで成功してからのジャッキー。
- ──
- これは「似顔絵」ではないですが、
これも「ただ単に似ているだけ」だったら、
こんなには、おもしろくないです。
- 和田
- そうそう、吉田さんのスタローンだって、
上手ですけど、
この人本当にスタローンかって言ったら、
ちょっとちがうと思うんですよ。
- ──
- よだれ垂らしてるし‥‥。
- 和田
- デビュー当時のスタローンは、
たしか「イタリアの種馬」とか何とかって
言われてたんだよね。
- ──
- え、へぇ、それは、キャッチコピーとかで。
- 和田
- 正式なコピーかどうかは知らないけど。
- ──
- すごい表現ですね、それ。
- 和田
- とんでもないよ。
- ──
- まあ、往年のアイドルのキャッチコピーも、
現代の感覚からすると、
なかなか、味わい深いものがありますよね。
中森明菜さんなどは、
ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)、
という打ち出しでしたし。
- 和田
- それを言い出したら、吉田拓郎さんなんか
正確には覚えてないけど、
「乾いた砂漠に、ホースで水をまく男」
みたいな感じだったよね。
- ──
- 便利な時代ですから、検索してみましょうか。
あー‥‥すぐに出てきました。
「荒れ果てた荒野に、太いホースで水をまく」
- 和田
- でしょ。
- ──
- 乾ききった現代人の心に染み込む歌の歌い手、
というような意味合いでしょうか。
- 和田
- うん。本当に水をまいてたはずはないもんね。
これは何の話ですかね?
< つづきます >
2018-05-29-TUE
描いてくださるのは、ロビン西さん、
イマガワノブヒロさん、和田ラヂヲさん、
矢部太郎さん、そして下田昌克さん!
そんな豪華な似顔絵のお店が、
6月7日(木)から11日まで開催される
「生活のたのしみ展」に出現します。
店の名は、NIGAOESKÝ(ニガオエスキー)。
われらが和田ラヂヲ先生をはじめとし、
おなじくマンガ家で
『マインド・ゲーム』のロビン西さん、
『Mother3』のキャラクターを手がけた、
ドット絵のイマガワノブヒロさん、
漫画『大家さんとぼく』が大ヒットした
カラテカの矢部太郎さん、
そして、色鉛筆による似顔絵作品で有名な
アーティストの下田昌克さん。
肩書も、作風も、何に似顔絵を描くかも、
みごとなまでにバラバラな5人が、
日替わりで似顔絵を描いてくださいます。
登場の日程や料金や整理券についてなど、
こちらのページで、
詳細を、ぜひチェックしてみてください!