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ほぼ日手帳

糸井重里

・本を、ぼくはたくさん買っている。
 買った本のうちの一部をけっこうちゃんと読み、
 ある一部は、目次やあとがきを読んで、パラパラする。
 そのうち読むことにしての置きっぱなしもたくさんある。
 読みきれないほどの本を買う理由は、
 「読んだほうがいいような気がする」ということだ。
 おもしろそうだったり、知りたいことが知れそうだったり。
 そういうものをいちいち手に入れておきたいということは、
 本が、他の遊びや道楽に比べて相対的に安いからだし、
 「知っておきたいこと」についての心配性があるせいだ。

 もういい年なんだし、体力にも時間にもかぎりがあるので、
 それほど多くのことを知っていたり
 たくさんの興味を持ったりする必要なんかないのだ。
 そういうことをわかっていても本を買ってしまうのは、
 本を読んでよかったことが記憶としてたくさんあるし、
 知りたいことについて「あの本に書いてある」と思いながら
 本棚を眺めていたら、不安がまぎれるからじゃないかな。
 現代社会に生きている人間の病気なのだ、きっと。
 危険な日常を送っている怪しい男が、
 モデルガンを収集しているようなことかもしれない、
 たぶんちがうんだけど。
 でも、ぼくはまだとても本を頼りにしているのだ。

 しかし、本を食べてぼくが育ったとは思えない。
 世には、本で育った人はいっぱいいるが、ぼくはちがう。
 本も栄養のひとつとして摂り入れたのはたしかだが、
 主食であり副菜でありおやつであり、
 じぶんというものの材料になっているのは、人だ。
 「心を開いて、人と話をする」その相手をしてもらう。
 それは、文字になったことばを吸い込むことよりも、
 何万倍も大きな知恵や感じ方を、ぼくに教えてくれた。
 すぐ近くにいた友だちや、先生や、知り合った人たち、
 そして社会に出てからのたくさんの先輩や仲間たち、
 ああ、年下の友人や仲間たちもいっぱいいる。
 「心を開いてくれて、語り合えた」人たちが、
 ぼくという容れ物のなかにものすごく豊かに入っている。
 これについては、ただただ好きでずっとやっている。
 だから、たぶん、まだぼくは育ち盛りのままでいられる。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
たぶん、「心を開いて」というところが、大事なのだろう。 

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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