糸井重里
・花は桜というけれど。
なにかというと日本といえば桜で、
まるで桜ばかりが咲いている国みたいに言うけれど。
桜はたしかに大スターみたいなところがあるけれど。
ねぇ、
桜が散った後に、歩く膝のあたりの高さに、
つつじが鮮やかに咲いている。
あんまりたくさんあちこちに咲いているので、
わざわざつつじの花見をする人もいない。
いまどきの小学生も、昔と同じように、
つつじの花を摘んでちゅちゅっと蜜を吸っている。
昔の子どもと同じように「あまーい」とか言っている。
そのうちには、あちこちの植え込みや生け垣に、
バラの花が咲きはじめる。
バラはあまりに人気があるので、
いつどんな季節でも花屋さんにあって、
どこかで咲きはじめたとか思われにくい。
でも、植えたバラが咲くのにはいまごろがいい季節だ。
商品になっているような立派な花だけでなく、
たいしたことない花が咲いているのも、とてもかわいい。
梅雨のことを思い出すあたりで、梅が実をつける。
そうか、梅雨とは梅の雨と書くのだものな、と思い出す。
花は二月の寒いころ咲いていたんだっけ。
そのうち、土地によっては、あんずの実もなりはじめる。
ぼくはあんずが大好きだ。
今年もおそらくあんずのジャムをじぶんでつくる。
ジャムのなかでいちばん好きなのは、あんずジャムだ。
梅雨の終わりはもう夏で、さまざまな雑草が、
おおはしゃぎで伸びて繁っていく。
迷惑かもしれないが、あんな元気がうらやましい。
そうそう、あちこちで朝顔がつるを伸ばして花を咲かせる。
都会にだって、田舎にだって、背の高いひまわりが咲く。
でかいだけでも、大きな取り柄だよ、ひまわりたちよ。
花は桜というけれど、桜のあとも花暦は続いている。
その時期、その時期、スターじゃなくてもいい役者たちが、
ぼくたちが目をやろうがやるまいが、咲いているんだぜ。
いつでもそこに音楽があるように、いまも花は咲いている。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
街の植え込みを手入れしている方々には、感謝しております。
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