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ほぼ日手帳

糸井重里

・たぶん、託児所だとか保育所だとか、公園だとかで、
 よく見られる光景だと思うんだけど、
 ちっちゃい赤ん坊みたいな子どもたちが、
 いっしょにうれしそうに遊んでいるじゃない。
 まぁ、かならずしも仲よくしてるともかぎらないだろうし、
 互いを無視してるみたいなこともあるけどさ。
 そういう意味じゃ、遊んでいるとまでは言えないかな。
 あ、ドッグ・ランにおける犬たちも同じだね。
 追いかけっこしたり、ぽつんとひとりでいたり、
 じゃれあったりいろいろやっているね。

 どっちにしてもさ、それほど広くない空間に、
 自然にまとまっている景色があるよね。
 統率が取れてるわけもないし、目的もなさそうで。
 しかも、いわゆる「ことば」なんかぜんぜんない
 (まぁ、バブーだの、ワンだのはあるだろうけどさ)。
 それぞれに、腹が減っただの眠いだのもあるだろうし、
 ケンカみたいなこともあるだろうよ。
 ばらばらな個人であり、個犬なんだよね。
 だけど、いちおう、なんか自然にそこにいるじゃない。

 そういうの見てるのって、ぼくは好きだな。
 ぼくだけでもなく、人間はそういうの見るの好きかもね。
 その世界に、目的があって、しくみやルールがあって、
 思惑やら駆け引きやら、戦術やらがあることも
 ゲームとしておもしろいのは知ってるよ。
 だからドラマも見るし、スポーツの試合も見る。
 だけど、あんがい「生きものどうしが、ただそこにいる」
 というのは、これはこれでおもしろいし、心うれしい。
 少し憧れみたいなものも感じるんだよね。
 特に、「ことば」がないというのがうらやましい。
 ぼくは、「ことば」で仕事をしてきたはずの人間だし、
 「ことば」のありがたさや強さも身にしみているはずだ。
 しかも、この、この文章だって「ことば」で書いている。
 だけど、というか、だから、「沈黙」に憧れるのだろうか。
 犬にしても、赤ん坊にしても、目だけで話せている。
 ときには、飛びついたり、抱っこしてきたり。
 そういう「無言」のものたちが、愛しくてたまらない。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ことばは武器であり、運命の赤い糸にもなる。でも沈黙も。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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