糸井重里
・1969年7月20日、いまから57年前だ。
人間が月面に降り立って、アメリカの旗を立てた。
この計画は「こんな未来があったんだ」ということを、
一気に世界中の人びとに感じさせた。
その後も、人間は月に行っていた。
アポロ17号まで12人の宇宙飛行士が月面に着陸していた。
これについては、ぼくもすっかり忘れていた。
未来、未来っていうけれど、昔のマンガでは、
たとえば「腕時計のような電話」が未来の象徴だった。
壁掛け式の大画面テレビジョンというのも、未来だった。
ロボットが掃除をしたり料理を運んでくるのも未来だった。
運転手のいない自動車が走るのも未来だった。
しかし、そういうある時期に空想した未来については、
もうすっかり現実化してしまっている。
ある程度の昔なつかしい時代までは、
マンガみたいなことを空想して、
それが実現するのをたのしみにしていたときには、
そこに文字通り「たのしみ」があったのだ。
いまは、どうもそういうものが見当たらない。
「近未来」という設定で、ネガティブな廃墟が描かれたり、
人類の絶望や分断のようなものが表現されるけれど、
それは「たのしみ」にしている未来ではないだろう。
未来と「たのしみ」がいっしょに語れるようなことは、
どこにあるのだろうと、たぶん考えている人たちはいる。
月世界に人間を歩かせたら、と計画するように、
海底都市だとか、火星移住だとかを語る人たちもいるが、
それも、あんまり「たのしみ」とは縁が遠い気がする。
「たのしみ」な未来について、絵や図は描きにくいが、
ちょっとでも想像できる余地はあるのではないか、と、
ぼんやりと、ぼくなんかも考えることがある。
それは「人間」が「人間」と親しくできる未来なんだけど。
◆今日の質問no.077「来年はどうしているかなぁ?」です。
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