糸井重里
・カラオケも「臨書」なんじゃないか、と書いたけど、
ほんとにそうなんだよねぇ、聴いてるだけじゃなく、
じぶんの声で歌をなぞるように歌っていると、
気にならなかったところが、気になってくる。
ぼくも、ぼくのカラオケともだちも大好きな
玉置浩二さんの『メロディー』という曲もそうだった。
「あんなにも好きだった きみがいたこの町に
いまもまだ大好きな あの歌は聞こえてるよ」
という歌い出しから、ちょっと迷いが出てくる。
「あんなにも好きだった」のは、
「きみ」をなのか、それとも「この町」なのか。
さらに「いまもまだ大好きなあの歌は聞こえてるよ」
と続くのだが、こっちの「大好き」は
「あの歌」についてのことだろうとは思う。
ふたつの「好き」と、「きみ」と「町」と「歌」。
あんまり修飾関係を考えなくても気持ちよく歌えるのだが、
問い詰めたりするとわからなくなってしまう。
それは、竹内まりやさんの『駅』についても思うことで、
「わたしだけ愛してたことを」という部分については、
どういう気持ちで歌うのか迷うところがある。
別れて2年経って、偶然見かけてしまった昔の彼を、
「わたしだけが一方的に愛してた」と知ったのか、
「あのころ彼が、わたしだけを愛してたのだ」
と知ったのか、どちらともとれるのである。
『メロディー』にしても『駅』にしても、
つくった人にとっては「ああ、それはこうですよ」と、
当然のように説明できることなのだとは思う。
でも、カラオケという「臨書」しているお弟子さんたちは、
「お手本」の歌のなかでは、なにが歌われていたのか、
それを「じぶんの声」で歌ってみたくなるのだと思う。
ちなみに「臨書」する門前の小僧であるぼくは、
どっちの歌についても、「わからないまま」にしている。
歌って、そういうところがいいとも思うからだ。
◆今日はno.038「わからないままのこと、ありますか?」
なんだろう?よかったら、メールに書いて送ってください。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
すぐに正解を出すことばかりが、よいともかぎりませんよね。
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