糸井重里
・へのようなことを書こうと思う。
刺激を受けたのである。
いつも読んでる「ほぼ日3分コラム」で、
奥野さんが書いた文章に、へのような爆発力があった。
ぼくも、前々から、ずっとへのようなことを書きたかった。
でも、あまりへのことを書いた記憶はない。
ほんとうにへのようなことを書きたいのに、
まだ書いてなかったのではなかったか。
これだけ毎日「ほぼ日」に原稿を書いていて、
へを書かずにおめおめとここまで生きてしまった。
そして、後輩の奥野さんがささっとすかしてしまった。
おそらく実話をもとにしての文章だった。
いつもの奥野さんの興味に近いところで起こった物語。
前半、いつも以上に緊張感のある知的な文体である。
偶然に見つけた写真展のことが語られていく。
展覧会場の静けさ、そしてもう一人だけそこにいた老紳士。
そして。あるまいことか、緊張は極限に達して爆発する。
そこからは、言うまい。
クライマックスから、ただの余韻で終わるのではない。
展開は、さらに次の写真展へと向かうのであった。
2013年、過疎の集落で開かれた写真展。
読者は、どこまで振り回されるのだ。
三半規管がおかしくなるようなイメージの旋回があり、
ぼくは奥野さんの描いたへと芸術の論考に付き合い、
いい時間を過ごしたなぁと天井を見上げたのだった。
おれも、へが書きたかった。
なんでもいい、いまこそへを書くべきときだ。
この奥野さんのすばらしいへのあとで、
競争したいわけでもないのだが、
どれほどのへができるというのであろうか?
ままよ、もう音も香もなくへですらない一文を、
ここにプットオンして、今日を終えよう。
「わたしは、へをしたことがあります」は、
事実であるだろうけれど、ほんとうとは言えない。
もっとずっといっぱいしているはずだ。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「豊臣兄弟!」おもしろいし。「べらぼう」はなつかしい。
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