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ほぼ日手帳

糸井重里

・日本の牛乳の消費量が、どういう動向だったか、
 ChatGPTに質問すれば、すぐに答えてくれると思う。
 戦後には牛も少なかったろうし、
 高度成長の時代には給食の需要が高かったとかも、
 データとしてしっかり残ってると思うからね。
 だけど、人の生活のなかの「牛乳」については、
 やっぱり人間に聞いたほうがいいんじゃないかな。

 ぼく自身の場合は、まず給食で牛乳は出てなかったな。
 米国から供給された脱脂粉乳を飲んでいた、まずかった。
 しかし家庭には宅配の牛乳というものがあった。
 びん入りの牛乳を毎日「牛乳箱」に届けてくれるしくみだ。
 この時代の牛乳びんの思い出は、もうノスタルジーだなぁ。
 『自転車でおいで』という歌のなかにも空きびんを描いた。

 1974年から始まった『傷だらけの天使』というドラマで、
 主人公(萩原健一)が、牛乳を紙パックのまま
 冷蔵庫から取り出し勢いよく飲む演出が人気になった。
 1リットルの紙パック牛乳は、この時代の若者の
 ものすごく簡便な栄養補給だという表現だった。
 食事に気を配らない一途な青年の「合理的な選択」である。
 現在の「グルメ」の逆みたいな主人公がモテていたんだね。

 1980年代の始めごろ、ぼくはあるイベントに、
 「ひとりコント」の芸人さんに登場してもらった。
 いまはすっかり渋い俳優になっている「でんでん」さん。
 彼のコントの出だしがとても印象に残っている。
 「みんな、牛乳飲んでるかい?」と大げさに質問するのだ。
 これは、客席の人たちに、その当時には古くなりつつある
 小市民的な生活をしているかを問いかける、というネタだ。
 こういう意味での牛乳については、
 RCサクセションが『気持ちE』という曲のなかで、
 「牛乳飲んでるヤツより」という歌詞を書いている。

 そういえば、ぼくは、この時代かな、「牛乳」のCMに、
 「鯛焼き」の浪花家総本店のご主人と出演したっけ。
 ただの「記憶」を思いつくままに記したのだけれど、
 こういうことは、情報(データ)としては残りにくそう。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「趣味」の世界には情報じゃなく記憶が残っていきそうだね。

1リットルの紙パック牛乳
これは、ぼくの記憶ちがいでした。他のドラマの演出などと混ざって記憶されていたようです。ショーケンが飲む牛乳は、びん牛乳で、牛乳以外の手軽な食品も急いで摂っていました。「記憶」はこのように「個人的」で「改ざん」されやすいということも、あらためて学ばされました。(イトイ・記)

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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