糸井重里
・一部の昆虫やら、動物たちは、道具を使っているようだ。
それほど複雑な使い方はしていないにしても、
「生まれて育ってそのまま」の身体ではできないことを、
木の枝だとか、ちぎった葉っぱだとかを使ってやっている。
おサルは、土器も石器もつくらないけれど、
きっと「落ちていたら使う」ことくらいはするだろう。
これだけでもたいしたことにちがいない。
ところが人間は、もう、道具だらけのなかに生きている。
動くこと、料理すること、遊ぶこと、つくること、
さらには道具をつくるための道具もつくる。
そこに、ことばをつかって考えることが加わって、
もう、とんでもなくなんでもできるような気になっている。
考えたら、考えたものがつくれちゃうんだからすごい。
これはもう、サルにもカラスにも追いつきようがない。
そこにさらに「生成AI」が加わったのだから、
もう、もともとの人間はなにができたのかさえ、
忘れそうな時代がやってきつつある。
しかし、忘れちゃいけないし、忘れたくない。
人間、生身でどれくらいのことができるんだっけ?
道具や機械にすっかりたよって生きているけれど、
じぶんの手でできることって、どれくらいなんだろうとか。
いままでに知ってきたこと、やってきたことを活かして、
どのくらいまでなにができるんだろうとか
(スポーツとかでは、そういうことやってるかもね)。
他の人の助けを借りないとしたら、なにができるのかとか。
絶対にやりたくないことは、なんなのかとか。
いつでも守りたいものがあるとしたら、なんなのかとか。
大好きなものって、なんなのかとか。
ふだん、だれにも問われていないし、
あえて聞かれる理由もないことなのだけれど、
「そういう問いと、その答えと、考えるプロセス」が、
「他ならぬわたし」ってやつだと思うんだ。
道具と機械がなんでもやってくれるようになったけど、
「なにがしてほしいのか?」や「どうありたいのか?」は
「他ならぬわたし」が決めるものなんだよね。
すべてを忘れてしまわないうちに、思い出しておきたい。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
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