糸井重里
・「イトイくんは、バカが付くほどのお人好しだ」
と、言われていたのは、ぼくじゃなくて父でした。
よく、仲のいい友人と、酒を飲んではしゃべっていました。
その「バカが付くほどのお人好しだ」というのは、
親しい友だちのいわば愛情をこめた悪口でした。
「バカだ、バカだ、大バカだ」などとも言ってました。
言われた父も、悪い気はしていないのか、
いかにも機嫌よくにやにやしていました。
逆説的なほめあいだということは、感じていました。
こんなにもよく憶えているのは、同じことが、
何度も何度も繰り返されていたからだったかもしれません。
子どものぼくには、「バカ」ということばが、
なんだかずいぶんと都合よく使われていたような、
そういう気がして、好きな会話ではなかったんですよね。
バカがつくほどお人好し、バカがつくほど正直、
それって、ある意味「無敵」の看板じゃないですか。
他のいろんなよくない要素を帳消しにしてしまう看板です。
いまのじぶんなら、「そんなやつはいないって」と、
ツッコミを入れているところかもしれません。
後にじぶんが子どもじゃなくなってから、
「空手バカ一代」というマンガが連載されて、
ま、おおいに愛読していたのですが、
ここでの「バカ」の使い方も、ちょっとずるいですよね。
他の人たちが「バカじゃない」のだとしたら、
この「バカ」こそが守るべき善きものであると思える。
たしか、赤塚不二夫さんが付けたのだと思うけど、
内田裕也さんの「ロック馬鹿」というあだ名も、
その他もろもろを無害化してくれる効果がありますよね。
「バカ」は、じぶんから名乗るかぎりは、
すっごく都合のいい王冠のようなことばなのです、たぶん。
それは、言われたらいやなことばであるがゆえにですね。
自ら「バカの王冠」をかぶる者は、崇められるであろう。
ぼくは、それを進んでやるつもりはありませんが。
◆さて、質問no.023は「お酒はのみますか?」です。
そう聞かれて、どんな話がはじまるのかな。
よかったら、メールにも書いて、送ってくださいね。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
そういえば「ちいかわ」にも、飲酒シーンは出てきますね。
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