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ほぼ日手帳

糸井重里

・今日対談があって、そのなかでちょっと話したこと。
 よくドラマのなかで見るような、
 結婚の許しをもらうために相手の父親に会うという場面。
 父親が「◯◯子を、一生愛するのだね?」などと
 問いかけてきたとき、返事についての選択肢はない。
 「一生とか、そんな未来のことはわかりませんが」とか、
 「愛のかたちもいろいろ変化すると思うのですが」とか、
 「たぶん、そうするつもりです」とかは、絶対ダメだろう。
 最も短い返事としては、ただ即座に「はいっ」と言う。
 彼なりの「正しい答え」を見つけようとしても、
 そういうのはぜんぶ不正解のブラックホール行きである。
 3秒以上、ひどい場合は10秒以上間をおいてしまったら、
 そこで「はい」と言っても失格退場であろう。
 誠実に熟慮なんかしていてはいけない場面なのである。 
 理屈っぽいキミが、口を尖らせて、
 「でも、ほんとうのことを言いたいし、
 ほんとうの誠実さで向かい合いたいじゃないですか!」
 なんて言ったら、もう「出禁」にしかできんのである。
 世の中には、こういう選択肢のない問いかけがある。

 スポーツなど、勝ち負けのある世界でも、
 「絶対勝ちます」ということ以外は、
 やはり言えないのではないだろうか。
 勝ち負けのあらわれにくい仕事では、
 「失敗してもいい、怖れるな!」と言えることもある。
 だが、結果があって勝敗がつくような世界では、
 「敗けてもいい」ということばは、聞いたことがない。
 実際のところ、「敗けてもいい」と思いながらやったら、
 ほんとうに勝ちから遠ざかってしまうのだろうか。
 たしかに、「勝とう」としてトライし続けるのが、
 勝敗のある試合をやるもののマナーでもあるだろう。
 そして、そのほうが勝つ可能性は高いのかもしれない。
 でも、ほんとにまったく、「敗けてもいいぞ」という
 思い切ったトライはあり得ないのかなぁ? 
 いつだって敗ける可能性はあるに決まってる。
 そして、もしかしたら「敗けたっていいぞ」と
 笑って送り出されたら気がラクになって活躍できる
 ‥‥こともあるんじゃないかなとも、ちょっと思う。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ほんとのこと言ってぼくも、「勝ちます」以外言えなそう。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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