糸井重里
・かつて、長い休暇で南の島に行こうなんてときには、
旅行鞄はとんでもなく重かった。
旅先で、本は読みたいに決まっているから、それを選ぶ。
少なくしようとしても10冊以上にはなってしまう。
音楽にしても、カセットテープをいくつも入れる。
これだって、けっこうな体積になるのだ。
その後、CDの時代になってもなかなか悩ましかった。
さらに、その音楽を流すための道具が要る。
カセットでもCDでも聴くには電池が必要だったから、
乾電池も持っていったほうがいいとも考えた。
ここまで記したものだけで、大きなトランクは満杯だ。
隙間に水着やらサンダル簡単な着替えなどを詰めて、
うんうんいいながら空港に向かったのだった。
その後、しばらくはこのセットに、
さらに重たくてでかい「パソコン」が加わっていた。
ここまで読んでるだけでもうんざりするよね。
ぼくも書いていて、よくやってたもんだと呆れるよ。
でね、そのうんざりのうちの、海パンとサンダル以外は、
いまじゃあ、すっかりちっちゃな箱に収まってるんだ。
かつての「大荷物」は、まるごとポケットに入っている。
そうだよ、「スマホ」とか呼ばれてるものさ。
本、10冊20冊なんてケチなこと言わないで、
何万冊だって揃った図書館ごと運んでるんだ。
音楽にしたって、世の中の人に知られてる曲は、
ぜんぶこのなかに入ってるとさえ言えるだろうよ。
さぁ、「カメラ」も「財布」も入れてしまおう。
そして、なんと「映画館」だって入ってるんだぞ。
乾電池も買いだめしなくていい。
そんでもって、いいかい、この「スマホ」ってやつは、
世界中に向けて電話だってできるんだぜ。
手紙を書きたかったら、それもできてすぐに送れる。
書いた手紙は、すぐに相手も読めちゃうんだ。
こんな魔法の道具があったらいいのにと空想していた。
その空想をさえ上回った「スマホ」なんてものがあるんだ。
だれだって欲しがって、夢中になるに決まってるよ。
たった20年で、こういうことになっちゃったんだよなぁ。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
幼児の「離乳」みたいに、「離スマホ」も考えなきゃなぁ。
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