武田観柳斎の小さな野心。
〜八嶋智人さんに、あれこれ訊く〜
第2回 すきをうかがう脇役たち。


糸井 終わってしばらく経ちますけど、
はじめての大河ドラマはどうでしたか。
八嶋 どうなんでしょうね。
まあ、とりあえず
親孝行にはなりましたけど。
糸井 そうか、そういう見方があるのか(笑)。
八嶋 それは大きかったですよ。
やっぱり、みんな観てましたからね。
糸井 『新選組!』って、
若手の役者さんが多かったから、
これで認知される人も多いでしょう。
八嶋 そうですね。そのへんの
「知られてない感じ」っていうのは、
糸井さんもおっしゃってましたけど、
すごい新選組そのものに似てるっていうか。
糸井 うん。若い人たちが、上昇志向とも違って、
とにかく「何かやりたい」っていう感じで。
八嶋 明確でない野心家の集まりなんですよね。
雑多な感じもすごいあるし。メンツ的には。
糸井 そうだよね。
八嶋 いや、だから、ほんとに、
「いいのかな?」って思うシーンもいっぱい。
糸井 え? それはたとえば?
八嶋 ぼくと大倉(大倉孝二:河合耆三郎役)が
2ショットで、大河ドラマに
こんな長い時間映ってていいのかな? とか。
糸井 つまり、あのシチュエーションで
自分たちがあんなに長く画面を
占有してるっていうのは、居心地が悪い?
八嶋 大河ドラマっていう枠じゃなければ
ぜんぜん平気なのかもしれないですけど。
いや、大河ドラマだととらえるのか、
三谷(幸喜)さんの作品だと
とらえるのかっていう。
三谷さんの作品だと思うと
けっこう気持ちが自由になるんですけど。
糸井 でも、明確でない野心家としては
この機会を! っていう気持ちもあるでしょう?
八嶋 それはそうですね。
谷三十郎のまいど(豊)さんとかも、大倉とかも、
みんなちょっとおもしろげなことをはさみ込んで、
「すきあらば!」って行きたいわけですよ。
だけどNHKにあっさり止められたりして。
じつは、みんないろいろしてるんですよ。
それぞれ。
糸井 へえー。現場では。
八嶋 はい、いっぱいやってるんです。
たとえば、谷三十郎と観柳斎は
けっこういっしょの場面が多かったから
いろいろやりましたね。
あの、谷三十郎って、
独特の笑いかたするじゃないですか。
糸井 「ひぁ〜、ひぁ〜」っていう引き笑いを。
八嶋 そうです、そうです。
あれ、三谷さんの台本には、
「引っかかるイヤな笑いかた」って書いてあって、
まいどさんはああいうふうにしたんですけど、
でも、それ、最初の紹介のときにやっておいて、
ふだんやらないと逆にウソになりますよね。
だから、「どんどんやっていきましょうよ」って。
糸井 (笑)
八嶋 「ぼくがこうしゃべったあとで、
 一回フッて間をとりますから、
 そのときに笑ってくださいよ。
 そしたらちょっとイヤな顔をして、
 またこういうふうに話続けますから」とかって。
糸井 受けを先に用意してあげるわけだ。
八嶋 ええ。
「止められるまでやってみましょうよ」って。
ちょっとチャレンジしてみたりするんですけど、
いざやってみると、バーって助監督が来て、
「そこでの笑いは、ちょっと流れもありますんで
 ひかえてもらって」って言われたりして。
糸井 わははははは。
八嶋 「またチャンス見つけてやりましょう!」って。
糸井 でも、ずいぶん聞いた気がするな、
あの引き笑い(笑)。
八嶋 がんばりましたから。そういうので言うと、
じつはぼくの『新選組!』での
記念すべき第一声っていうのは
編集でカットされちゃったんですよ。
糸井 あ、そうなんですか。
八嶋 ええ。当初台本には、
第1話の、酒場に新選組が集まる場面で、
河合役の大倉がバーッと報告しに来たときに
ぼくが「遅いっ!」って言う箇所があったんです。
で、河合が「申しわけありません」って答える。
それがぼくと大倉の、
お互いの記念すべき第一声目だったんですけど、
そこがごっそりカットされてたんですよ。
それで、そのずっとあとに
池田屋がありますよね(第28話)
糸井 はいはい。
八嶋 あの回に、ぼくが「こっちだ!」って
河合と松原(忠司)を呼ぶ場面があるんですよ。
ま、呼んで、ふたりがこっちに来て、
それで終わりなんですけど、そこで、
「これ、ちょっとあのカットされた
 1話の場面を復活させますか」なんつって。
松原役の甲本(雅裕)さんも、
「けっきょくぼくら映ってないんだよなあ」
なんてよく言ってたから、3人で話し合って。
どうしたかというと、
ぼくが「こっちだ!」って河合たちを呼んで、
呼んだくせに、やって来たふたりに向かって
「遅いっ!」って怒鳴るんです。
一同 (爆笑)
八嶋 河合も「申しわけありません」って答えて、
松原は、「チクショーッ!」って叫んで
中に入っていくんですけど、
それはそのまま使われたんですよ。
糸井 思えばあれですよね、
舞台って役者がやったことは、
ぜんぶ映ってるんですよね。
八嶋 ああ、そうですね。
糸井 それ考えると、
そこのしのぎ合いはおもしろいね。
舞台だったら、ぜんぶ活きるわけだから。
八嶋 そうですね。
だから、出演者に舞台系の人が多かったから
できたことでしょうね。
あとはやっぱり三谷さんが脚本家だっていうのが
すごいぼくらにとっては安心材料っていうか。
ここまで振り幅持たせても、
トータル的な筋としてはそんなに逸脱せず
持っていってくれるっていう
安心感がありますから。
あとは、やっぱり慎吾君と山本耕史君が、
ブレずにやっててくれるから。
糸井 ストレートウェイは守っててくれるもんね。
八嶋 ええ。ふたりのまわりには
山南さんも沖田も源さんもいるから、
安心して遊べるっていう。
糸井 うん。

(まだまだ続きます!)
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2005-04-27-WED

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