糸井 |
「ある隊士の切腹」の回はね、
ぼくら、京都で観ていて。
幸運なことに、山南こと堺(雅人)さんと
いっしょに観たんですよ、放送を。 |
八嶋 |
ああ、それはすごい体験ですね。 |
糸井 |
ええ、贅沢でした。
そのとき、堺さんは、こう、
腕組みして、正座して、
じぃっと画面を観てるんです。
なんかこう、まるで
画面に敬意を払っているような感じで。
それを見たときに、
ああ、特別なドラマなんだなあって思いましたね。 |
|
八嶋 |
そうですね。試衛館の人たちはたぶん、
そういう気持ちになるんじゃないですかね。 |
糸井 |
「試衛館の人たち」って、
その言いかたは変じゃないですか(笑)。 |
八嶋 |
いやあ、でも、「試衛館の人たち」ですよ(笑)。 |
糸井 |
そういう感じなんですか。
おんなじ新選組の隊士でも?
|
八嶋 |
あああ、そうですね‥‥。
いや、でも、ぼく、ツラかったですよ? |
糸井 |
うわ(笑)。 |
八嶋 |
や、ほんと(笑)。 |
糸井 |
そうなんですか。 |
八嶋 |
とくに山南切腹の回(第33話)なんてもう、
それはそれは。現場もすごいんですよ。 |
糸井 |
はー。 |
八嶋 |
いろんなインタビューでみなさん言ってるけど、
だんだん実際の物語と現場が
シンクロしてくるみたいな感じが
ものすごくあるんですよ。
そういうのも含めて、
あの日はすごかったんです。
まあ、全体を通しても
『新選組!』のターニングポイントっていうか、
ここから新選組はダメになっていく、
っていうところなんで、
そりゃもうみんなピリピリしてて。 |
糸井 |
そういうなかで、観柳斎はもう
観柳斎のように見られちゃうんですか、
みんなから。 |
八嶋 |
はい。 |
糸井 |
そうなんだあ。厳しいなあ(笑)。 |
八嶋 |
厳しいですよ。
とくに、伊東甲子太郎、
谷原(章介)さんと八嶋は。 |
糸井 |
はははは。笑っちゃいけないんだけどね。 |
八嶋 |
みんなが熱くなったりしてるんです。
ちょっとしたことでもほんとにね、
こう、イラっとしたりとか。 |
糸井 |
八嶋、というか観柳斎に対して? |
八嶋 |
はい。リハーサルのとき、
ちょっと物音をたてちゃったりとか、
デリカシーのないことをしちゃったりとか、
そういうのあるじゃないですか。
スタッフも自分のことで
いっぱいいっぱいだから。
で、ガタッと物音したりとかすると
「んっ?」って。 |
|
糸井 |
「武田か!」みたいな(笑)。 |
八嶋 |
なっちゃうんですよ(笑)。
で、ぼくと谷原さんは
「どうしますかね?」って。
まあ、つまり、いづらい(笑)。 |
糸井 |
ははははは。 |
八嶋 |
八嶋、谷原としても
ちょっと、いづれえな、みたいな感じになって。
で、三谷さんもその時は現場にいらっしゃって。
察したのか、アドバイスしてくださったんです。
ぼくらふたりが三谷さんに呼ばれて、
「谷原さん、伊東は、
すごく悲しい顔してるけど、
悲しくはないんです。
一方、武田は、ものすごく
悲しくなさそうな顔をしてるけど、
じつは、悲しいんです」って。 |
糸井 |
うん、そうだね。武田は悲しい。 |
八嶋 |
「それを一生懸命表現してもらいたい」
って言われたんです。 |
糸井 |
ああ。 |
八嶋 |
ところが、立ち去り際に、
「ま、映ってればの話だけどね」って。 |
糸井 |
ははははは。 |
八嶋 |
だってもう、甲子太郎も観柳斎も、
山南切腹のシーンにいますからね。
みんなもう気持ち入りまくってるわけですよ。 |
糸井 |
そうだねえ(笑)。 |
八嶋 |
だから、ぼくらもものすごい集中して、
気持ちつくって。
ま、一瞬カメラがパンしただけでしたけど(笑)。 |
糸井 |
気持ちだけは、置いとこうと。 |
八嶋 |
ええ。
そういう気持ちでいるっていうことが
大事なんだって、三谷さんにすごい言われて。
そういうことがいろいろあって、
甲子太郎と観柳斎は、ツラかったですよ(笑)。 |
糸井 |
はははははは。 |
八嶋 |
やっぱりねえ、
「試衛館の人たち」はほんとに違うんです。 |
糸井 |
「試衛館の人たち」なんですね(笑)。
いやあ、おもしろいっすねえ。 |
八嶋 |
それだけはそうなっちゃいます。
あの、座談会があったじゃないですか。
DVDにも入ってるのかな? 座談会。 |
糸井 |
ああ、あります、あります。
『新選組!』総集編のほうの
DVDに入ってますね。 |
八嶋 |
あの座談会に、
自分が入ろうとは思わないですもん。
たとえ、呼ばれても。 |
糸井 |
なるほどねえ。
おもしろい感覚ですねえ。 |
八嶋 |
なんなんでしょうね‥‥。 |