永田 |
さあ、観ましたか。 |
西本 |
観ました観ました。 |
糸井 |
観ましたとも。 |
西本 |
永田さん、言ったとおりだったでしょ? |
永田 |
うん、まさに。
にしもっちゃんの言ったとおりだった。
いや、すごかった。いいもの観た。 |
糸井 |
なんですか。なんの話ですか。 |
ふたり |
「紳助・さんま」です! |
糸井 |
ああ、やっぱりあれですね。
どうしてもその話になりますね。
で、にしもっちゃんの話っていうのは? |
永田 |
はい。じつは「25時間テレビ」が
放送される前日の金曜日、
にしもっちゃんが帰るまえに
わざわざぼくに耳打ちしたんですよ。
「永田さん、
本当のポイントは紳助さんですよ」と。 |
糸井 |
ほう、ほう。 |
永田 |
で、どういうことかと訊くと、
深夜のさんまさんの時間帯から観るんじゃなく、
紳助さんが出ている「すぽると!」から観ろと。
なぜなら、さんまさんと紳助さんが、
なんらかのかたちでからむはずだから、と。 |
糸井 |
なぜそれを、オレには言わない! |
永田 |
糸井さん、帰ってたじゃないですか。 |
糸井 |
あ、そっか。 |
西本 |
糸井さんが家に帰ったこともあったんですが
こういう時、永田さん、テレビにうといから、
ポイントを外しがちなんですよ。
「かま騒ぎ」だけをきっちりみて、
その前後を観ないような気がしたんで。 |
永田 |
うん。そんな観かたがあるなんて
思いもしなかった。 |
糸井 |
ほっといても、ぼくは観ますからね。 |
西本 |
ええ。だから、
永田さんに説明をしておいたんですよ。
とにかく、番組表を見渡してみると、
今回の全出演者のラインナップの中で
明らかに違和感があるのは島田紳助であると。 |
永田 |
そうそう、それは
小池さん(元吉本興業のほぼ日乗組員)も
言ってたんだよなあ。
小池さんに聞いても、ぼくはピンとこなくて、
「へー」くらいに思ってたんだけど。
紳助さんとさんまさんの
両方のマネージャーを経験したことのある
にしもっちゃんまで言うから、
こりゃなんかあるんだろうと思って。 |
西本 |
紳助さんが「トリビア」「すぽると!」に
キャスティングされているのは
おかしいんですよ。
というか、そもそも、フジテレビの
「27時間テレビ」に出ること自体、
ちょっとした事件です。
ずいぶんまえに出演したことはあるんですけど、
ここのところずっと無縁でしたから。
今回、出演するというのは
もうすこし話題になっていいのに
さらりとしすぎている。これは何かがあるぞと。 |
糸井 |
なるほどなるほど。 |
永田 |
で、その前の段階として、
それすらぼくはあまり意識してなかったんですが、
いまテレビで、
さんまさんと紳助さんがからむことって、
ほぼないことなんですってね。 |
糸井 |
ないない。
たしかにそこは事前に注目すべきだったね。 |
永田 |
そしたら案の定、「すぽると!」の終わりで、
紳助さんが「中居・さんま」に
雪崩れ込むようなふりがあって‥‥。
あの、ぼくはよくわかってないんですが、
あれは紳助さんが、
「中居・さんま」に出るかどうか、
選べたということなの? |
西本 |
出るか出ないかは事前であれ、その場であれ、
紳助さんが決めることです。
番組側は外人に「紳助!」と叫ばせてましたから
紳助さんを運んでスタジオを移動することまでは
演出側は考えていたでしょう。 |
永田 |
なるほどね。
じゃあ、番組側の打つ手はそこまでで、
あとは紳助さんしだいだったんだ。
たしかに、そのあと番組がはじまって、
さんまさんが「紳助、帰りよったわ」
って言っても成り立つもんなあ。 |
西本 |
さんまさんは、
紳助さんが来るもんだと思ってた
というのは番組中でも発言してましたし。
紳助さんは、もともとは
行くつもりはなかったと発言してますし。 |
糸井 |
どうなんですかねえ。 |
永田 |
どうなんでしょうねえ。
でも、そのあたりの
「どうなんでしょうねえ?」が
おもしろさにつながってたことはたしかです。 |
糸井 |
そうですね。今回は全部、
「ドキュメンタリーのふりをした演出」
っていうのがテーマのひとつだったからね。 |
永田 |
ああ、なるほど。 |
西本 |
だから、演出側は、
ぎりぎりまで条件を整えたんですよ。
鶴瓶さんがいない。
アイドルである中居くんからのお願い。
屈強な外人。しかも、生放送。
そこまでそろえたおかげで
紳助さんとさんまさんが
久しぶりにテレビでしゃべっても問題ない。 |
永田 |
そっから先は紳助さんに任せる、
っていうところからは
ドキュメンタリーなんだ。 |
糸井 |
それが、その場での判断になったのか、
前日の判断になったのかはわかりませんけど、
構造的にはそういうことでしょう。 |
西本 |
「さんま・紳助」を一つの画面で観たい!
というのは、さんまさん、紳助さんに
関わったことがある人なら
誰でも思い浮かぶ夢だと思うんですけど、
「どういう企画にするんだ?
誰が仕切るんだ!」というところで
誰もが実現できなかったわけですから、
番組側の下準備には拍手です。 |
糸井 |
なるほどねえ。 |
永田 |
いや、番組表に「島田紳助」の
名前があるだけで、
そこまでのことがあるとは思いませんでした。
そういえば、くしくも糸井さんぼくは、
「島田紳助っていう人は
やっぱりすごいよねえ」っていう話を
こないだしてたばかりだったじゃないですか。 |
糸井 |
ああ、そうそう。
このところ気づいたことなんだけど、
島田紳助っていう人は、
「この人しかできない」っていうことを
やってるんですよ。
「この番組を観て、なんでおれは
こんなに笑ってるんだろう?」
って考えたときに、
「ああ、島田紳助のせいだ」
って思い当たるんです。
いまの島田紳助って、
やっぱりそうとうおもしろいんですよ。 |
永田 |
ぼくが毎週観ている数少ない番組のひとつが
「お宝鑑定団」なんですけど、
あそこの紳助さんはほんとにすごいですよ。
なんていうか、ありがたくて頼もしい。
毒もフォローも必要だっていう
むつかしい局面がしょっちゅうあるんだけど、
両方がっちりやってくれるんです。 |
糸井 |
ものすごく世俗的な部分の、
「人が触りにくいところ」を
サッと取り出してくれるんだよね。
タイのあらをきちんと商品にするような、
「魚は目玉が美味いね」
みたいなことをしてるんだよね。 |
永田 |
ええ。しかもそのあと、
ちゃんと生ゴミを捨ててくれるんですよ。
テレビを観てる視聴者が
「ちょっと内臓を観たいな、
でも、手は汚したくないな」
というときに見事にやってくれる。 |
糸井 |
あれ、つまり、プロデューサーですよね。
「プロデューサーなのに芸ができる」
という人がいたら、
かなう者がいないんですよ。
そういう系統の人がおもしろいんですよ。
さんまさんもそうじゃないですか。
松本人志さんもそうですよね。
そういうところはある意味、
吉本興業にプロデューサーが育たなかった
理由なのかもしれない。
つまり、芸人さんが、
プロデューサーができすぎてしまうということ。
逆にあまりにもプロデューサーが育ってないんで
芸人さんが自分の身を守るために
プロデューサーとして育つというのも
あるのかもしれませんけど。
まあ、ともかく、そのバランスを
いちばん儲かると思ってキープしてるのが
吉本興業という会社なんでしょう。 |
西本 |
前の職場をフォローするわけじゃないですけど
吉本興業にはとんでもない数の芸人さんがいて、
いま、テレビに出ている人というのは
まずは吉本内での競争に勝たないと
スタートラインにすら立てないという
激戦を勝ち抜いてきた人なんですね。
その過程で芸人さんに
プロデューサー的感覚が
生まれるんだと思いますよ。 |
糸井 |
なるほどね。 |
永田 |
で、紳助さんって、
視聴者としての印象でいうと、
最近はプロデューサーのほうに
ウェイトがあるように見えてたんですよ。
つまり、むつかしいことを
かっちりこなすという位置にいるというか。
話術で爆笑を誘うというようなところは
「松本・紳助」を観ていてさえ、
セーブしているように見えたんです。 |
糸井 |
あえてそう見せてたんでしょう。 |
永田 |
それが、ものの見事にはじけたのが
深夜1時30分からの2時間だったわけで。 |
糸井 |
にしもっちゃんは
ドキドキしながら観てたんじゃないですか? |
西本 |
それは、もう。
ふだんの番組では時間帯やカラーによって
お笑い度を調整している紳助さんが、
お笑い度何パーセントで来るのか?
タバコを吸いながら黙って
トークに入る間を探している
紳助さんを観ながら
「さあ、第一声はどう入るんだ!」
とわくわくしてましたよ。 |
永田 |
ちなみに、さんまさんは
どういう気持ちでいたんですかね? |
西本 |
まず、少なくともさんまさんは、
「すぽると!」に紳助さんが呼ばれていることで、
「制作側は一緒に出てもらいたいんやな」
ということを察してるはずです。
で、どこかのタイミングで、
「来いよ!」とサインを出したんじゃないかと。
紳助さんはたぶん、CMのあいだに
さんまさんに
「ほんとに行ってもいいのか?」
ということを訊いてるような気がします。 |
糸井 |
そうかそうか、
さんまさんが、プロデューサーとして、
「ここは来ないほうがいい」
という判断をしてたら、
あのふたりの2時間はなかったんだ。 |
西本 |
そうです。紳助さんは、
きっとその判断を尊重したと思います。 |
糸井 |
すごいねえ。 |
永田 |
すげー。かっちょいい。 |
西本 |
しかも、もしそのやり取りが、
直前のCM中に行われていたとしたら、
ぼくの予想では、ふたりは
ほとんど目を合わせてないと思います。 |
糸井 |
さんまさんが「来いよ!」という
サインを出していたとしたら、
もうひとつキーがありますね。
たぶん、さんまさんは、
目にものを見せるような
番組を作りたかったというか、
「一生懸命やらんと番組はできんのや!」
というのを見せたかったんだと思うんですよ。
なぜそう思ったかというと
あの15分刻みのドラマ(「THE WAVE」)の
主演をやったからですよ。
あれは出演者に影響を与えてると思うよ。
だって、編成部長の役だよ?
さんまさんは、ざわわの役をやった時のように
あの役に入り込んでると思うんですよ。
つまり、鶴瓶さんがエンディングで泣いたのと
同じような気持ちが、
あのお笑い怪獣の中にあったと思うです。
今年は一肌、二肌どころじゃなく
「脱いだろうやないか紳助よ!」
ということじゃなかろうか。
つまり、「テレビが好きや!」という気持ちが
「紳助、来いよ!」に
つながったんじゃないかと思うんです。 |
西本 |
なるほどなるほど。 |
糸井 |
で、まあ、
番組そのものにいきましょうか。 |
永田 |
おもしろかったですね! |
糸井 |
もう、すごい! |
西本 |
ぼくはリアルタイムで嫁を起こして
「これは永久保存版だよ!」と
自慢気に解説を入れてました。 |
永田 |
ぼくはテレビのある部屋のすぐ隣で
妻子が寝ていたので
ヘッドフォンで聞いてたんですけど、
知らぬ間に爆笑してたらしくて
「気持ち悪いからもっと静かに笑え」
と怒られました。いや、贅沢でしたね。 |
糸井 |
ツッコミの面白さを知ったな。
絶えず、最高のツッコミが入るじゃないですか。 |
永田 |
厳しいツッコミのなかに
フォローが含まれてるんですよね。
おもしろさの輪郭をひきたてつつ、
後始末もするみたいな。 |
西本 |
うんうん。 |
永田 |
観ながら思ったんですけど、
妙に懐かしい感じがあったんですよ。
昔、「ひょうきん族」で
ああいうのしょっちゅうありましたよね。
身内の話をおもしろおかしく暴露するっていう。
で、あのころの「ひょうきん族」の身内ネタって、
すごくきわどいものだったと思うんですよ。
それまでの古いお笑いに対して、
新しい世代のカウンターというか、
「テレビで身内の話をするなんて!」
みたいな反発もあったと思うです。
ところが、久々にあれを観たら、
クラシックというか、
古典の名人芸を観ているようで。 |
糸井 |
うん。落語のようだった。 |
永田 |
当時は苦情がくるようなものだったはずなのに
じつはこんなに完成度が高くて、
安心して観られるものなんだなと。 |
糸井 |
身内の話なんだけども、
どのくらいディープにするかという、
深さ、浅さの選択がものすごく上手いよね。 |
永田 |
絶妙ですよ。ほんと。 |
西本 |
「シャレにならん!」の手前なんですよね。 |
永田 |
話術ですごい巧みだなと思ったのが、
ある話をして、中居さんに振って、
ひとつのかたまりが終わったとき、
つぎの話に移りますよね。
そのときに、紳助さんがかならず、
話と話のあいだのブリッジをつくるんですよ。
AとCという別の話があるとすると、
Bのことばを短くスッと入れるんです。
瞬時にそうやって場を整えてるのが
すごいなあと思って。 |
糸井 |
あと、もともと引き出しに入ってる、
ずるいことばがあるじゃない。
「恋愛警察に出頭しろ!」とか。 |
ふたり |
(笑) |
糸井 |
あのあたりを、
ほんとにいま思いついたかのように
うまいこと言うんだよね。 |
永田 |
それでいてアドリブもがんがん入る。
あの、女の人をドアから蹴ったっていうとき、
「それはあの女が
ドアチェーンを切ろうとしたからや」
っていうのって、とっさのひと言でしょう?
あと‥‥なんだっけ、
もうふたつみっつあったんですけど。 |
糸井 |
こう、しゃべってるとまた観たくなるよね。 |
ふたり |
なるなる(笑)。 |
糸井 |
紳助さんが階段を上がってくる
芝居をしているところなんかは、
さんまさん、邪魔しないんだよね。 |
永田 |
そう、しない! |
西本 |
あのあたりの駆け引きは完璧ですね。 |
永田 |
ネタが始まるまえもいいんだよね。
どっちがしゃべっても
成立するネタだったりするんだけど、
はじまりのときに、
「オレがしゃべる」「オレが行く」っていう
小競り合いがちょっとあって、
どっちかがスッと引いてどっちかが出る。
あのへんがすっごいスリリングで。 |
西本 |
でも、どちらも決して
とどめはささないんですよね。 |
糸井 |
そうそうそう。 |
永田 |
でも、場をピリッとさせるために
「こういう話、続けるとしたら
オレの方が有利やで」
みたいなことも混ぜるから緊張感が出る。 |
糸井 |
参ったなー、ほんと。
だって、あの、「いい女ランキング」の表が
いらなくなっちゃったんだもん。
あの表って、
ほんとはものすごく大事な表じゃない?
それが今年は、
「これはさっさとすませて」
ということになってたじゃん。 |
西本 |
そのためにVTRもきっちり用意されていたり、
小道具もいろいろあったと思うんですが
ほとんと使わずに終わったのがすごい。
使われてたのは
韓国の女性のVTRだけでしたからね。 |
永田 |
ランキング要らないって思えましたもん。 |
西本 |
おもしろかったなー、ほんとに。 |
糸井 |
ただの一ファンとしてたのしむしかないよねえ。
あと、よそから中継が入って
それを観ながらふたりがいろいろ
言ってるところもおもしろかったな。
なんかさ、ふたりが口をそろえて
「これはおもしろくない」
とか言ってるシーンがなかったっけ? |
西本 |
鶴瓶さんが逃げてることについてと
山中さんを起こすところですね。 |
糸井 |
そうだそうだ(笑)。
あの、鶴瓶さんをトイレで見つけたところで、
「これ、どうなったら正解やねん?」
っていうのがあったでしょ。 |
ふたり |
わははははは。 |
糸井 |
あれ言えないだろ(笑)。
あれは、ふたりのトークのなかでも
いちばんおもしろかったかもしれない。
つまり、企画会議の要素が入ると
いっそうおもしろくなるということかな。 |
西本 |
プロデューサー側の要素ですね。 |
糸井 |
そうそう。 |
西本 |
鶴瓶追跡のシーンでは、
ココリコのふたりが女装のまま
ロケをしているというのが
周到でいいなあと思いました。 |
糸井 |
ほんとうは女装する必要ないんだよね。 |
西本 |
でも、かたくなに、
「『かま騒ぎ』に出る用意をしてたんですけど」
というふりをしているわけで。 |
糸井 |
あの心遣いというか、丁寧さね。
そのへんは、永田さん、好みでしょ? |
永田 |
はい。舞台裏を突然のぞいても、
きちんと衣装を着ているみたいなことが
ぼくはたいへん好きです。 |
糸井 |
ジグソーパズルを作っておいてばらす、
っていうことですよね。 |
西本 |
あそこ、さらにいうと、
遠藤くんは千秋っぽい格好で
田中くんは(小日向)しえちゃんっぽい格好で。 |
糸井 |
(笑) |
永田 |
ああ、そういうことなんだ(笑)。
ぜんぜん、気づかなかった。 |
糸井 |
ふたりとも、あれは妻なんだよね。
役として。それでいて
「『かま騒ぎ』に出たい!」
って言ってるのがすごくおもしろいんだ。 |
永田 |
ほかの人の話が出たついでに言いますけど、
中居くんもよかったですよね。 |
糸井 |
うん、えらい! |
永田 |
さんまさんと紳助さんの話を
ほんとにニコニコ楽しみながら聞いて、
どっちかに加担する時は加担して。
あそこまで言われたら
一個ネタを出さないといけないっていうときは
ぎりぎりのネタを一個、きちんと出して。 |
糸井 |
たいへんですよ。
鶴瓶さんがいないという
アクシデントも成立させながらね。
しかも、そのあとの「かま騒ぎ」まで
つき合うわけですからね。
あの、お笑い怪獣と。
さあ、じゃあ、
「かま騒ぎ」の話に進みましょうか。
まず、紳助さんは残らずに帰る、と。 |
西本 |
あれも紳助さんの判断だと思います。 |
永田 |
芸人さんたちは、それを聞いて、
とりあえずバンザイしたりしてました。
あそこで、今田さんが紳助さんを
呼び戻しに行ったという話はよかったですねー。 |
糸井 |
よかったよかった(笑)。 |
西本 |
「あのオリに入らないとだめなのよ!」と。
あれは、ピン芸人としてBIG3だけでなく
ダウンタウンともからんできた
今田さんにしか言えないセリフですよね。 |
糸井 |
今田さんはさ、役割が安定しすぎて
かわいそうだとも思ったな。
つまり、あの世代でひとりいるがゆえに、
なんのためにあそこにいるのかというのを
全員が知ってるじゃないですか。
その課せられた役割を
わかりすぎてると思うんだよね。
もっとふつうにいたいというのも
あるんじゃないかと思うんだけど
これ以外はしちゃいけないみたいな感じで
ずーっといるわけだから。
ひとつ、お尻を貸すところで滑ったでしょ。
あれは過剰に今田の役をしすぎたんだと思う。
来年はもうひとりおくとか、
つまんないけど年寄りを置くとか、
なんかするべきじゃないかな。
とにかく、今田さんに負わせすぎ。 |
永田 |
ぼくは逆にその役目に殉じているところが
今田さんを好きな理由ですけどね。
お尻のところも、ウケるというより、
「火中の栗を拾う速度」を見せている感じで。 |
西本 |
でも、あそこに出演しているほとんどの芸人と
ふつうにプライベートで食事に行けるのって
今田さんくらいしかいないんじゃないですかね。 |
永田 |
あ、ほんとにそういう人なんだ。 |
糸井 |
今田さんについては、松本人志さんが、
「人生のトータルで稼ぐ金額については、
オレより今田のほうが上だと思う」
という名言を吐いてましたけれども。 |
西本 |
「かま騒ぎ」がはじまって
いちばん最初の今田さんの発言で
「これのおかげで仕事が増えた!
だからチャンスなのよ!」
というのは見事だったなぁ。 |
永田 |
あれで若手の人たちの
モチベーションを上げるんだよね。
というか、モチベーションが
上げらなきゃウソでしょ、っていうあおり。
ルール説明みたいなもんだね。 |
糸井 |
あそこでナイナイの岡村さんが
ちょっとわかってない役どころで
ヘルメットの置き方なんかを
注意されるわけですけど、
あれはナイナイに説教するのが
さんまさん的にやりやすいということですか? |
西本 |
岡村さんがよく、さんまさんから
説教されるというネタがあるんです。 |
糸井 |
なるほど。今回の「かま騒ぎ」は、
コント教室みたいになってたよね。 |
永田 |
あの、みんな最初、
落ち着かない状態じゃないですか。
で、とりあえず
「怒る役」とか「すべる役」とか
「一発芸をやる役」とか、
なんでもいいから
どっかの役に落ち着きたいと思ってる。
それがおさまるまでがおもしろいんですよね。
岡村さんとかは器用だから
ヘルメットの役をサッとキープしたり。
「いったん座ろう」の役もそうだし、
加藤さんに「座ろう」と言われると
きちんと座るというのも、広い意味では
みんなが決めた自分たちの役なんですよね。 |
糸井 |
あの「座ろう」を
アンガールズに言わせている山本さん
っていうのもよかったね。
ちょっと卑怯なプロデュースをしてて。 |
永田 |
そうそう(笑)。
あの、芸人さんどうしが
やり合ってるように見えて
水面下でフォローし合ってるというのも
「かま騒ぎ」の醍醐味だと思うんですけど、
ワッキーが「胸毛の男」をやってるときに
相方のヒデさんが「なんで新ネタやるんだよ!」
って言ってたのがよかったなあ。
いいコンビだなあっていう感じだった。 |
糸井 |
そうですね。
あと、観ながらひとつ
もったいないなと思ったんだけど、
みんながいっせいにしゃべるから
何を言ってるのかわかんないときがあるんだよね。 |
永田 |
そうですね。でも、思ったんですけど、
芸人さんたちにとって、
「声がデカイ」というのは才能ですよね。
それで悔しい人っていっぱいいるんだろうな。 |
糸井 |
今年はとくに人数が多かったですからね。
どこでどう巻き込まれるか、
判断がほんとにむつかしいんだと思いますよ。
巻き込まれるべきのタイミングで
巻き込まれないとまずいし。 |
永田 |
いちばん楽にしてたように見えたのが
アンガールズかなあ。 |
糸井 |
アンガールズはもう目印みたいなもんだからね。
にしもっちゃんがマネージャーをやってた
ロンブーはどうでした? |
西本 |
淳くんは斬り込み隊長の役を
まっとうしたと思いますよ。
亮くんはねえ‥‥。
黙っておく方にかけたというのはねえ‥‥。 |
永田 |
でも、最後にあのセリフを言えたことで
救われたんじゃないですか? |
西本 |
そうですかねえ。
ココリコの田中くんがいると
少しは違ったんでしょうけどねえ。 |
永田 |
実力を発揮できてなかったのが
フットボールアワーかなぁと思ったんですけど。 |
西本 |
彼らの能力はあんなもんじゃないんですよ。
まだ、他の演者と信頼しあって、
パス交換できる関係性がないだけなんです。 |
永田 |
うん。もっとおもしろいよね、あの人たち。 |
糸井 |
次長課長はよかったね。
あのタンバリンはおもしろかったなあ。
あれ、顔なんだよね、おもしろいのは。
山本、品川のタンバリンはダメだったじゃない? |
西本 |
水商売の感じを
うまくデフォルメしているところが
おもしろいんでしょうね。
山本さんと品川くんは
ホントに水商売な感じが笑えないんでしょうね。 |
永田 |
あと、あの河本さんがうまいなと思ったのは、
タンバリンで呼ばれて中央へ出てくるときに言った
「自殺の名所に見えるわ」ってやつですよ。 |
ふたり |
はいはいはいはい(笑)。 |
永田 |
あれはうまい。うまいというか、
あの状況であれがスッと出るのが、強い。 |
糸井 |
すごいな。あれは。なんていうか、
「今年、勢いよくブレイクしましたよ」
というのが、ああいうところに出るんですよね。
あのタンバリンにしてもそうですよね。 |
永田 |
その意味でいうと、
同じようにいま勢いのある
アンタッチャブルは謙虚すぎた気がするんです。
せっかくあの位置に座ってるのに。 |
西本 |
いやあ、やっぱり、吉本芸人と
「めちゃイケ」メンバーの
パス交換の中にはなかなか入れないですよ。
まだ関係性ができてないから。 |
永田 |
ああ、そうやってサッカーと合わせて
考えるとわかりやすいね。
実力があっても、試合に入って
すぐにパスが来るわけじゃないというか。 |
糸井 |
ふたりとも序盤にしゃべって
1点はとったかたちになってたから、
今日はこれで勝ちゲームみたいに
思ったんじゃないですかね。
できる人たちだけに
もっと行ってほしかったですね。 |
永田 |
そう、できる人たちだけに。 |
西本 |
さんまさんとはからめるだけに
もったいないですよね。 |
糸井 |
そう考えると次長課長のタンバリンが光るな。
あのタンバリンはほんとにおかしかったんです。 |
西本 |
ぼくが感心したのが
タンバリンが3つも用意されていたことですよ。 |
ふたり |
あああ〜。 |
西本 |
番組側の準備の周到さが出てましたね。 |
永田 |
しかもすぐ出さずに、
「タンバリンある? きたきた」
っていう感じで出てきたでしょ。 |
糸井 |
そう。そこの演出もいいんだよね。 |
西本 |
あれ、もっと準備してますよ、きっと。
山本さん、品川くんのほかに
さんまさんがタンバリンを叩くことも
流れのなかでは
ありえたかもしれないじゃないですか。
もしかすると準備する側は
全員でタンバリンを叩くという
絵ができる可能性もいったんは描くわけで。
それを考えると
あの番組は恐ろしいと思いましたよ。 |
糸井 |
ということは村上の発言から
タンバリンに広がったのは偶然じゃないんだ。 |
西本 |
村上発言はリサーチしてあるでしょうから、
その発言をどうフォローするか
ということですよね。
タンバリンを使わないことも、
もしくは全員が使うことも考えてるんですよ。 |
糸井 |
すばらしいね。
「そういう仕事をしたい」というのが
にしもっちゃんの考えることですよね。 |
西本 |
ええ。そのとおりです。
総合演出という立場の人が
なにが起こるかわからない生放送のなかで
どこまで想定して準備をするかということと、
その場でどんどん決断して
捨てていくというすごさですよね。
「さんま・紳助」の
コーナーでもそうでしたけど、
あれだけ芸人さんが集まって
ものすごく真剣にやり合ってるなかで、
どのタイミングでCMに行くのか?
というのはすごい決断ですよ。 |
永田 |
いえてる。それは怖いわ。 |
糸井 |
すばらしいね。でも、こうやって
「かま騒ぎ」について語ってるんだけど
やっぱりぼくがすごいと思うのは、
そのまえの「さんま・紳助」なんですよ。 |
西本 |
そうですよ。 |
永田 |
ぼくもそうですよ。 |
糸井 |
ああ、やっぱり、そうかあ。 |
永田 |
紳助さんが「かま騒ぎ」に来てたら
去年以上の緊張感があって、
ものすごいことになったのかなとも思いますけど。
あの、象徴的なことでいうと、ぼくは、
去年の暴露されたネタというのは
まったく覚えてないんですよ。
でも、今年は暴露されたネタの方が
芸人さんたちの振る舞いよりも強かったというか。 |
西本 |
ネタを掘りすぎたんですかね。 |
糸井 |
インフレになっちゃいますよね。
あえてネタでおもしろかったのは
「たけしになる」というネタかな。 |
西本 |
宮迫さんの。それで、淳くんに
「紳助さんをやれ」と。 |
糸井 |
そうそう(笑)。 |
西本 |
「セルビア・モンテネグロ〜!」も
おもしろかったですけどね。 |
永田 |
おもしろかったですよ!
ああいうネタのひとつひとつでいえば、
去年よりもおもしろかったと思う。 |
糸井 |
でも、最終的な印象としては、
やっぱり「さんま・紳助」なんですよねえ。
あの、自分ネタに踏み込むところでも、
あのふたりのほうが鋭いんですよね。
ただの暴露じゃなくて。
紳助さんが、お休みしてたネタを振られて
「まだおもしろく話せん」って言ったじゃない。 |
ふたり |
はいはいはいはい(笑)。 |
糸井 |
あのあたりのおもしろさね。
あと、お葬式のときに、
さんまさんにインタビューがいかなくて、
「おれも50の男や。
話していいことと悪いことはわかる!」
とかさあ。 |
ふたり |
はいはいはいはい(笑)。 |
糸井 |
もう、ぎりぎりのなかの
ぎりぎりなんだよね。
|
永田 |
いまだからあそこまで話せるという話ですよね。 |
糸井 |
とにかくね、
これは「25時間テレビ」全体に
いえることだと思うですけど、
とにかくみんなが助け合ってたよね。
「たのしくなければテレビじゃない」ということで
その場所がたのしく見えるように、
みんなが助けあってたと思うんです。
で、それの典型が
紳助さんとさんまさんだったと思うんですよ。
「戦友」っぽかったですよね。 |
西本 |
ネタのチョイスもそういう感じでしたね。
紳助・竜介の前にあのふたりで営業をしてた
という話はそんなにしてない話ですから。 |
永田 |
ふたりがアドリブで助け合うというときに、
それが完全なツッコミや完全な奉仕じゃなくて
利己的な奉仕になってるところが
小気味よかったですよね。 |
糸井 |
まさにそれが
「only is not lonely」なんですよ。
にしもっちゃんは、
去年と比べるとどっちがどうでしたか?
ま、比べる必要もないのかもしれないけど。 |
西本 |
去年とは別のものですよね。
去年は片岡飛鳥さんという一人の演出家の
頭の中をきっちり再現した
「お笑いってすごいんだ!」という世界観で。
今年は、小松さんが鶴瓶さんという芸人さんとの
関係を軸にして作った
「芸人さんってすごいんだ!」
という世界観なのかなと。 |
糸井 |
ぼくはね、ビートルズのアルバムでいうと
『サージェント・ペパーズ・
ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
だと思うんですよ。
つまり、25時間をひとつのパッケージの
コンセプトで出していこうということです。
去年までは、
主張しなくても良かったと思うんですよ。
27時間という長さの劇場に
ずっといてもおもしろい、
という感じだったと思うんです。
でも、今年はコンセプトが必要になったわけです。
「社会のなかにあるテレビという存在、
俺たちはこういうものなんだ」っていう主張が
リプライズする『サージェント・ペパーズ』
のようにくり返し鳴ってるんですよ。
そう主張するようになったきっかけのひとつは、
やっぱりライブドアの事件でしょう。
だから、裏のMVPは
じつはホリエモンかもしれないですよ。 |
西本 |
ぼくは、裏MVPはやっぱり小松さんですかね。
日テレの土屋さんが
「たいへんで死んじゃうかもしれないけど、
一度はやってみたい」と言っているほど、
27時間テレビの総合演出って
すごいことだと思うんですよ。 |
永田 |
じゃあ、ぼくは裏MVPは
西山喜久恵アナウンサーに。
あの人、実質的な総合司会じゃなかったですか? |
糸井 |
いえてる(笑)。
鶴瓶さんは違うことやってたからね。
がんばってました。 |
西本 |
あ、鶴瓶師匠にほとんど触れてない! |
糸井 |
不在によって存在感を示したというのが
今回の鶴瓶さんのすごさですよ。
だから、これでいいんです。
おつかれさまでした。 |
ふたり |
おつかれさまでしたー。 |