ほぼ日テレビガイド
with
『FNS ALLSTARS 25時間テレビ』
(『真夜中の大かま騒ぎSP』)
テレビを観ては、あーだこーだしゃべる。
あの、ゆるゆる企画が突発的に復活!
『FNS ALLSTARS 25時間テレビ』を観て、
またしても例の3人(糸井、西本、永田)が
だらだらしゃべります。
見どころは深夜放送予定の『真夜中の大かま騒ぎSP』。
名作の誉れ高かった去年の『かま騒ぎ』を
今年は超えることができるのか?
週末、おひまな方、どうぞおつき合いください。



25時間テレビを観て。


永田 さあ、観ましたか。
西本 観ました観ました。
糸井 観ましたとも。
西本 永田さん、言ったとおりだったでしょ?
永田 うん、まさに。
にしもっちゃんの言ったとおりだった。
いや、すごかった。いいもの観た。
糸井 なんですか。なんの話ですか。
ふたり 「紳助・さんま」です!
糸井 ああ、やっぱりあれですね。
どうしてもその話になりますね。
で、にしもっちゃんの話っていうのは?
永田 はい。じつは「25時間テレビ」が
放送される前日の金曜日、
にしもっちゃんが帰るまえに
わざわざぼくに耳打ちしたんですよ。
「永田さん、
 本当のポイントは紳助さんですよ」と。
糸井 ほう、ほう。
永田 で、どういうことかと訊くと、
深夜のさんまさんの時間帯から観るんじゃなく、
紳助さんが出ている「すぽると!」から観ろと。
なぜなら、さんまさんと紳助さんが、
なんらかのかたちでからむはずだから、と。
糸井 なぜそれを、オレには言わない!
永田 糸井さん、帰ってたじゃないですか。
糸井 あ、そっか。
西本 糸井さんが家に帰ったこともあったんですが
こういう時、永田さん、テレビにうといから、
ポイントを外しがちなんですよ。
「かま騒ぎ」だけをきっちりみて、
その前後を観ないような気がしたんで。
永田 うん。そんな観かたがあるなんて
思いもしなかった。
糸井 ほっといても、ぼくは観ますからね。
西本 ええ。だから、
永田さんに説明をしておいたんですよ。
とにかく、番組表を見渡してみると、
今回の全出演者のラインナップの中で
明らかに違和感があるのは島田紳助であると。
永田 そうそう、それは
小池さん(元吉本興業のほぼ日乗組員)も
言ってたんだよなあ。
小池さんに聞いても、ぼくはピンとこなくて、
「へー」くらいに思ってたんだけど。
紳助さんとさんまさんの
両方のマネージャーを経験したことのある
にしもっちゃんまで言うから、
こりゃなんかあるんだろうと思って。
西本 紳助さんが「トリビア」「すぽると!」に
キャスティングされているのは
おかしいんですよ。
というか、そもそも、フジテレビの
「27時間テレビ」に出ること自体、
ちょっとした事件です。
ずいぶんまえに出演したことはあるんですけど、
ここのところずっと無縁でしたから。
今回、出演するというのは
もうすこし話題になっていいのに
さらりとしすぎている。これは何かがあるぞと。
糸井 なるほどなるほど。
永田 で、その前の段階として、
それすらぼくはあまり意識してなかったんですが、
いまテレビで、
さんまさんと紳助さんがからむことって、
ほぼないことなんですってね。
糸井 ないない。
たしかにそこは事前に注目すべきだったね。
永田 そしたら案の定、「すぽると!」の終わりで、
紳助さんが「中居・さんま」に
雪崩れ込むようなふりがあって‥‥。
あの、ぼくはよくわかってないんですが、
あれは紳助さんが、
「中居・さんま」に出るかどうか、
選べたということなの?
西本 出るか出ないかは事前であれ、その場であれ、
紳助さんが決めることです。
番組側は外人に「紳助!」と叫ばせてましたから
紳助さんを運んでスタジオを移動することまでは
演出側は考えていたでしょう。
永田 なるほどね。
じゃあ、番組側の打つ手はそこまでで、
あとは紳助さんしだいだったんだ。
たしかに、そのあと番組がはじまって、
さんまさんが「紳助、帰りよったわ」
って言っても成り立つもんなあ。
西本 さんまさんは、
紳助さんが来るもんだと思ってた
というのは番組中でも発言してましたし。
紳助さんは、もともとは
行くつもりはなかったと発言してますし。
糸井 どうなんですかねえ。
永田 どうなんでしょうねえ。
でも、そのあたりの
「どうなんでしょうねえ?」が
おもしろさにつながってたことはたしかです。
糸井 そうですね。今回は全部、
「ドキュメンタリーのふりをした演出」
っていうのがテーマのひとつだったからね。
永田 ああ、なるほど。
西本 だから、演出側は、
ぎりぎりまで条件を整えたんですよ。
鶴瓶さんがいない。
アイドルである中居くんからのお願い。
屈強な外人。しかも、生放送。
そこまでそろえたおかげで
紳助さんとさんまさんが
久しぶりにテレビでしゃべっても問題ない。
永田 そっから先は紳助さんに任せる、
っていうところからは
ドキュメンタリーなんだ。
糸井 それが、その場での判断になったのか、
前日の判断になったのかはわかりませんけど、
構造的にはそういうことでしょう。
西本 「さんま・紳助」を一つの画面で観たい!
というのは、さんまさん、紳助さんに
関わったことがある人なら
誰でも思い浮かぶ夢だと思うんですけど、
「どういう企画にするんだ?
 誰が仕切るんだ!」というところで
誰もが実現できなかったわけですから、
番組側の下準備には拍手です。
糸井 なるほどねえ。
永田 いや、番組表に「島田紳助」の
名前があるだけで、
そこまでのことがあるとは思いませんでした。
そういえば、くしくも糸井さんぼくは、
「島田紳助っていう人は
 やっぱりすごいよねえ」っていう話を
こないだしてたばかりだったじゃないですか。
糸井 ああ、そうそう。
このところ気づいたことなんだけど、
島田紳助っていう人は、
「この人しかできない」っていうことを
やってるんですよ。
「この番組を観て、なんでおれは
 こんなに笑ってるんだろう?」
って考えたときに、
「ああ、島田紳助のせいだ」
って思い当たるんです。
いまの島田紳助って、
やっぱりそうとうおもしろいんですよ。
永田 ぼくが毎週観ている数少ない番組のひとつが
「お宝鑑定団」なんですけど、
あそこの紳助さんはほんとにすごいですよ。
なんていうか、ありがたくて頼もしい。
毒もフォローも必要だっていう
むつかしい局面がしょっちゅうあるんだけど、
両方がっちりやってくれるんです。
糸井 ものすごく世俗的な部分の、
「人が触りにくいところ」を
サッと取り出してくれるんだよね。
タイのあらをきちんと商品にするような、
「魚は目玉が美味いね」
みたいなことをしてるんだよね。
永田 ええ。しかもそのあと、
ちゃんと生ゴミを捨ててくれるんですよ。
テレビを観てる視聴者が
「ちょっと内臓を観たいな、
 でも、手は汚したくないな」
というときに見事にやってくれる。
糸井 あれ、つまり、プロデューサーですよね。
「プロデューサーなのに芸ができる」
という人がいたら、
かなう者がいないんですよ。
そういう系統の人がおもしろいんですよ。
さんまさんもそうじゃないですか。
松本人志さんもそうですよね。
そういうところはある意味、
吉本興業にプロデューサーが育たなかった
理由なのかもしれない。
つまり、芸人さんが、
プロデューサーができすぎてしまうということ。
逆にあまりにもプロデューサーが育ってないんで
芸人さんが自分の身を守るために
プロデューサーとして育つというのも
あるのかもしれませんけど。
まあ、ともかく、そのバランスを
いちばん儲かると思ってキープしてるのが
吉本興業という会社なんでしょう。
西本 前の職場をフォローするわけじゃないですけど
吉本興業にはとんでもない数の芸人さんがいて、
いま、テレビに出ている人というのは
まずは吉本内での競争に勝たないと
スタートラインにすら立てないという
激戦を勝ち抜いてきた人なんですね。
その過程で芸人さんに
プロデューサー的感覚が
生まれるんだと思いますよ。
糸井 なるほどね。
永田 で、紳助さんって、
視聴者としての印象でいうと、
最近はプロデューサーのほうに
ウェイトがあるように見えてたんですよ。
つまり、むつかしいことを
かっちりこなすという位置にいるというか。
話術で爆笑を誘うというようなところは
「松本・紳助」を観ていてさえ、
セーブしているように見えたんです。
糸井 あえてそう見せてたんでしょう。
永田 それが、ものの見事にはじけたのが
深夜1時30分からの2時間だったわけで。
糸井 にしもっちゃんは
ドキドキしながら観てたんじゃないですか?
西本 それは、もう。
ふだんの番組では時間帯やカラーによって
お笑い度を調整している紳助さんが、
お笑い度何パーセントで来るのか?
タバコを吸いながら黙って
トークに入る間を探している
紳助さんを観ながら
「さあ、第一声はどう入るんだ!」
とわくわくしてましたよ。
永田 ちなみに、さんまさんは
どういう気持ちでいたんですかね?
西本 まず、少なくともさんまさんは、
「すぽると!」に紳助さんが呼ばれていることで、
「制作側は一緒に出てもらいたいんやな」
ということを察してるはずです。
で、どこかのタイミングで、
「来いよ!」とサインを出したんじゃないかと。
紳助さんはたぶん、CMのあいだに
さんまさんに
「ほんとに行ってもいいのか?」
ということを訊いてるような気がします。
糸井 そうかそうか、
さんまさんが、プロデューサーとして、
「ここは来ないほうがいい」
という判断をしてたら、
あのふたりの2時間はなかったんだ。
西本 そうです。紳助さんは、
きっとその判断を尊重したと思います。
糸井 すごいねえ。
永田 すげー。かっちょいい。
西本 しかも、もしそのやり取りが、
直前のCM中に行われていたとしたら、
ぼくの予想では、ふたりは
ほとんど目を合わせてないと思います。
糸井 さんまさんが「来いよ!」という
サインを出していたとしたら、
もうひとつキーがありますね。
たぶん、さんまさんは、
目にものを見せるような
番組を作りたかったというか、
「一生懸命やらんと番組はできんのや!」
というのを見せたかったんだと思うんですよ。
なぜそう思ったかというと
あの15分刻みのドラマ(「THE WAVE」)の
主演をやったからですよ。
あれは出演者に影響を与えてると思うよ。
だって、編成部長の役だよ?
さんまさんは、ざわわの役をやった時のように
あの役に入り込んでると思うんですよ。
つまり、鶴瓶さんがエンディングで泣いたのと
同じような気持ちが、
あのお笑い怪獣の中にあったと思うです。
今年は一肌、二肌どころじゃなく
「脱いだろうやないか紳助よ!」
ということじゃなかろうか。
つまり、「テレビが好きや!」という気持ちが
「紳助、来いよ!」に
つながったんじゃないかと思うんです。
西本 なるほどなるほど。
糸井 で、まあ、
番組そのものにいきましょうか。
永田 おもしろかったですね!
糸井 もう、すごい!
西本 ぼくはリアルタイムで嫁を起こして
「これは永久保存版だよ!」と
自慢気に解説を入れてました。
永田 ぼくはテレビのある部屋のすぐ隣で
妻子が寝ていたので
ヘッドフォンで聞いてたんですけど、
知らぬ間に爆笑してたらしくて
「気持ち悪いからもっと静かに笑え」
と怒られました。いや、贅沢でしたね。
糸井 ツッコミの面白さを知ったな。
絶えず、最高のツッコミが入るじゃないですか。
永田 厳しいツッコミのなかに
フォローが含まれてるんですよね。
おもしろさの輪郭をひきたてつつ、
後始末もするみたいな。
西本 うんうん。
永田 観ながら思ったんですけど、
妙に懐かしい感じがあったんですよ。
昔、「ひょうきん族」で
ああいうのしょっちゅうありましたよね。
身内の話をおもしろおかしく暴露するっていう。
で、あのころの「ひょうきん族」の身内ネタって、
すごくきわどいものだったと思うんですよ。
それまでの古いお笑いに対して、
新しい世代のカウンターというか、
「テレビで身内の話をするなんて!」
みたいな反発もあったと思うです。
ところが、久々にあれを観たら、
クラシックというか、
古典の名人芸を観ているようで。
糸井 うん。落語のようだった。
永田 当時は苦情がくるようなものだったはずなのに
じつはこんなに完成度が高くて、
安心して観られるものなんだなと。
糸井 身内の話なんだけども、
どのくらいディープにするかという、
深さ、浅さの選択がものすごく上手いよね。
永田 絶妙ですよ。ほんと。
西本 「シャレにならん!」の手前なんですよね。
永田 話術ですごい巧みだなと思ったのが、
ある話をして、中居さんに振って、
ひとつのかたまりが終わったとき、
つぎの話に移りますよね。
そのときに、紳助さんがかならず、
話と話のあいだのブリッジをつくるんですよ。
AとCという別の話があるとすると、
Bのことばを短くスッと入れるんです。
瞬時にそうやって場を整えてるのが
すごいなあと思って。
糸井 あと、もともと引き出しに入ってる、
ずるいことばがあるじゃない。
「恋愛警察に出頭しろ!」とか。
ふたり (笑)
糸井 あのあたりを、
ほんとにいま思いついたかのように
うまいこと言うんだよね。
永田 それでいてアドリブもがんがん入る。
あの、女の人をドアから蹴ったっていうとき、
「それはあの女が
 ドアチェーンを切ろうとしたからや」
っていうのって、とっさのひと言でしょう?
あと‥‥なんだっけ、
もうふたつみっつあったんですけど。
糸井 こう、しゃべってるとまた観たくなるよね。
ふたり なるなる(笑)。
糸井 紳助さんが階段を上がってくる
芝居をしているところなんかは、
さんまさん、邪魔しないんだよね。
永田 そう、しない!
西本 あのあたりの駆け引きは完璧ですね。
永田 ネタが始まるまえもいいんだよね。
どっちがしゃべっても
成立するネタだったりするんだけど、
はじまりのときに、
「オレがしゃべる」「オレが行く」っていう
小競り合いがちょっとあって、
どっちかがスッと引いてどっちかが出る。
あのへんがすっごいスリリングで。
西本 でも、どちらも決して
とどめはささないんですよね。
糸井 そうそうそう。
永田 でも、場をピリッとさせるために
「こういう話、続けるとしたら
 オレの方が有利やで」
みたいなことも混ぜるから緊張感が出る。
糸井 参ったなー、ほんと。
だって、あの、「いい女ランキング」の表が
いらなくなっちゃったんだもん。
あの表って、
ほんとはものすごく大事な表じゃない?
それが今年は、
「これはさっさとすませて」
ということになってたじゃん。
西本 そのためにVTRもきっちり用意されていたり、
小道具もいろいろあったと思うんですが
ほとんと使わずに終わったのがすごい。
使われてたのは
韓国の女性のVTRだけでしたからね。
永田 ランキング要らないって思えましたもん。
西本 おもしろかったなー、ほんとに。
糸井 ただの一ファンとしてたのしむしかないよねえ。
あと、よそから中継が入って
それを観ながらふたりがいろいろ
言ってるところもおもしろかったな。
なんかさ、ふたりが口をそろえて
「これはおもしろくない」
とか言ってるシーンがなかったっけ?
西本 鶴瓶さんが逃げてることについてと
山中さんを起こすところですね。
糸井 そうだそうだ(笑)。
あの、鶴瓶さんをトイレで見つけたところで、
「これ、どうなったら正解やねん?」
っていうのがあったでしょ。
ふたり わははははは。
糸井 あれ言えないだろ(笑)。
あれは、ふたりのトークのなかでも
いちばんおもしろかったかもしれない。
つまり、企画会議の要素が入ると
いっそうおもしろくなるということかな。
西本 プロデューサー側の要素ですね。
糸井 そうそう。
西本 鶴瓶追跡のシーンでは、
ココリコのふたりが女装のまま
ロケをしているというのが
周到でいいなあと思いました。
糸井 ほんとうは女装する必要ないんだよね。
西本 でも、かたくなに、
「『かま騒ぎ』に出る用意をしてたんですけど」
というふりをしているわけで。
糸井 あの心遣いというか、丁寧さね。
そのへんは、永田さん、好みでしょ?
永田 はい。舞台裏を突然のぞいても、
きちんと衣装を着ているみたいなことが
ぼくはたいへん好きです。
糸井 ジグソーパズルを作っておいてばらす、
っていうことですよね。
西本 あそこ、さらにいうと、
遠藤くんは千秋っぽい格好で
田中くんは(小日向)しえちゃんっぽい格好で。
糸井 (笑)
永田 ああ、そういうことなんだ(笑)。
ぜんぜん、気づかなかった。
糸井 ふたりとも、あれは妻なんだよね。
役として。それでいて
「『かま騒ぎ』に出たい!」
って言ってるのがすごくおもしろいんだ。
永田 ほかの人の話が出たついでに言いますけど、
中居くんもよかったですよね。
糸井 うん、えらい!
永田 さんまさんと紳助さんの話を
ほんとにニコニコ楽しみながら聞いて、
どっちかに加担する時は加担して。
あそこまで言われたら
一個ネタを出さないといけないっていうときは
ぎりぎりのネタを一個、きちんと出して。
糸井 たいへんですよ。
鶴瓶さんがいないという
アクシデントも成立させながらね。
しかも、そのあとの「かま騒ぎ」まで
つき合うわけですからね。
あの、お笑い怪獣と。
さあ、じゃあ、
「かま騒ぎ」の話に進みましょうか。
まず、紳助さんは残らずに帰る、と。
西本 あれも紳助さんの判断だと思います。
永田 芸人さんたちは、それを聞いて、
とりあえずバンザイしたりしてました。
あそこで、今田さんが紳助さんを
呼び戻しに行ったという話はよかったですねー。
糸井 よかったよかった(笑)。
西本 「あのオリに入らないとだめなのよ!」と。
あれは、ピン芸人としてBIG3だけでなく
ダウンタウンともからんできた
今田さんにしか言えないセリフですよね。
糸井 今田さんはさ、役割が安定しすぎて
かわいそうだとも思ったな。
つまり、あの世代でひとりいるがゆえに、
なんのためにあそこにいるのかというのを
全員が知ってるじゃないですか。
その課せられた役割を
わかりすぎてると思うんだよね。
もっとふつうにいたいというのも
あるんじゃないかと思うんだけど
これ以外はしちゃいけないみたいな感じで
ずーっといるわけだから。
ひとつ、お尻を貸すところで滑ったでしょ。
あれは過剰に今田の役をしすぎたんだと思う。
来年はもうひとりおくとか、
つまんないけど年寄りを置くとか、
なんかするべきじゃないかな。
とにかく、今田さんに負わせすぎ。
永田 ぼくは逆にその役目に殉じているところが
今田さんを好きな理由ですけどね。
お尻のところも、ウケるというより、
「火中の栗を拾う速度」を見せている感じで。
西本 でも、あそこに出演しているほとんどの芸人と
ふつうにプライベートで食事に行けるのって
今田さんくらいしかいないんじゃないですかね。
永田 あ、ほんとにそういう人なんだ。
糸井 今田さんについては、松本人志さんが、
「人生のトータルで稼ぐ金額については、
 オレより今田のほうが上だと思う」
という名言を吐いてましたけれども。
西本 「かま騒ぎ」がはじまって
いちばん最初の今田さんの発言で
「これのおかげで仕事が増えた!
 だからチャンスなのよ!」
というのは見事だったなぁ。
永田 あれで若手の人たちの
モチベーションを上げるんだよね。
というか、モチベーションが
上げらなきゃウソでしょ、っていうあおり。
ルール説明みたいなもんだね。
糸井 あそこでナイナイの岡村さんが
ちょっとわかってない役どころで
ヘルメットの置き方なんかを
注意されるわけですけど、
あれはナイナイに説教するのが
さんまさん的にやりやすいということですか?
西本 岡村さんがよく、さんまさんから
説教されるというネタがあるんです。
糸井 なるほど。今回の「かま騒ぎ」は、
コント教室みたいになってたよね。
永田 あの、みんな最初、
落ち着かない状態じゃないですか。
で、とりあえず
「怒る役」とか「すべる役」とか
「一発芸をやる役」とか、
なんでもいいから
どっかの役に落ち着きたいと思ってる。
それがおさまるまでがおもしろいんですよね。
岡村さんとかは器用だから
ヘルメットの役をサッとキープしたり。
「いったん座ろう」の役もそうだし、
加藤さんに「座ろう」と言われると
きちんと座るというのも、広い意味では
みんなが決めた自分たちの役なんですよね。
糸井 あの「座ろう」を
アンガールズに言わせている山本さん
っていうのもよかったね。
ちょっと卑怯なプロデュースをしてて。
永田 そうそう(笑)。
あの、芸人さんどうしが
やり合ってるように見えて
水面下でフォローし合ってるというのも
「かま騒ぎ」の醍醐味だと思うんですけど、
ワッキーが「胸毛の男」をやってるときに
相方のヒデさんが「なんで新ネタやるんだよ!」
って言ってたのがよかったなあ。
いいコンビだなあっていう感じだった。
糸井 そうですね。
あと、観ながらひとつ
もったいないなと思ったんだけど、
みんながいっせいにしゃべるから
何を言ってるのかわかんないときがあるんだよね。
永田 そうですね。でも、思ったんですけど、
芸人さんたちにとって、
「声がデカイ」というのは才能ですよね。
それで悔しい人っていっぱいいるんだろうな。
糸井 今年はとくに人数が多かったですからね。
どこでどう巻き込まれるか、
判断がほんとにむつかしいんだと思いますよ。
巻き込まれるべきのタイミングで
巻き込まれないとまずいし。
永田 いちばん楽にしてたように見えたのが
アンガールズかなあ。
糸井 アンガールズはもう目印みたいなもんだからね。
にしもっちゃんがマネージャーをやってた
ロンブーはどうでした?
西本 淳くんは斬り込み隊長の役を
まっとうしたと思いますよ。
亮くんはねえ‥‥。
黙っておく方にかけたというのはねえ‥‥。
永田 でも、最後にあのセリフを言えたことで
救われたんじゃないですか?
西本 そうですかねえ。
ココリコの田中くんがいると
少しは違ったんでしょうけどねえ。
永田 実力を発揮できてなかったのが
フットボールアワーかなぁと思ったんですけど。
西本 彼らの能力はあんなもんじゃないんですよ。
まだ、他の演者と信頼しあって、
パス交換できる関係性がないだけなんです。
永田 うん。もっとおもしろいよね、あの人たち。
糸井 次長課長はよかったね。
あのタンバリンはおもしろかったなあ。
あれ、顔なんだよね、おもしろいのは。
山本、品川のタンバリンはダメだったじゃない?
西本 水商売の感じを
うまくデフォルメしているところが
おもしろいんでしょうね。
山本さんと品川くんは
ホントに水商売な感じが笑えないんでしょうね。
永田 あと、あの河本さんがうまいなと思ったのは、
タンバリンで呼ばれて中央へ出てくるときに言った
「自殺の名所に見えるわ」ってやつですよ。
ふたり はいはいはいはい(笑)。
永田 あれはうまい。うまいというか、
あの状況であれがスッと出るのが、強い。
糸井 すごいな。あれは。なんていうか、
「今年、勢いよくブレイクしましたよ」
というのが、ああいうところに出るんですよね。
あのタンバリンにしてもそうですよね。
永田 その意味でいうと、
同じようにいま勢いのある
アンタッチャブルは謙虚すぎた気がするんです。
せっかくあの位置に座ってるのに。
西本 いやあ、やっぱり、吉本芸人と
「めちゃイケ」メンバーの
パス交換の中にはなかなか入れないですよ。
まだ関係性ができてないから。
永田 ああ、そうやってサッカーと合わせて
考えるとわかりやすいね。
実力があっても、試合に入って
すぐにパスが来るわけじゃないというか。
糸井 ふたりとも序盤にしゃべって
1点はとったかたちになってたから、
今日はこれで勝ちゲームみたいに
思ったんじゃないですかね。
できる人たちだけに
もっと行ってほしかったですね。
永田 そう、できる人たちだけに。
西本 さんまさんとはからめるだけに
もったいないですよね。
糸井 そう考えると次長課長のタンバリンが光るな。
あのタンバリンはほんとにおかしかったんです。
西本 ぼくが感心したのが
タンバリンが3つも用意されていたことですよ。
ふたり あああ〜。
西本 番組側の準備の周到さが出てましたね。
永田 しかもすぐ出さずに、
「タンバリンある? きたきた」
っていう感じで出てきたでしょ。
糸井 そう。そこの演出もいいんだよね。
西本 あれ、もっと準備してますよ、きっと。
山本さん、品川くんのほかに
さんまさんがタンバリンを叩くことも
流れのなかでは
ありえたかもしれないじゃないですか。
もしかすると準備する側は
全員でタンバリンを叩くという
絵ができる可能性もいったんは描くわけで。
それを考えると
あの番組は恐ろしいと思いましたよ。
糸井 ということは村上の発言から
タンバリンに広がったのは偶然じゃないんだ。
西本 村上発言はリサーチしてあるでしょうから、
その発言をどうフォローするか
ということですよね。
タンバリンを使わないことも、
もしくは全員が使うことも考えてるんですよ。
糸井 すばらしいね。
「そういう仕事をしたい」というのが
にしもっちゃんの考えることですよね。
西本 ええ。そのとおりです。
総合演出という立場の人が
なにが起こるかわからない生放送のなかで
どこまで想定して準備をするかということと、
その場でどんどん決断して
捨てていくというすごさですよね。
「さんま・紳助」の
コーナーでもそうでしたけど、
あれだけ芸人さんが集まって
ものすごく真剣にやり合ってるなかで、
どのタイミングでCMに行くのか?
というのはすごい決断ですよ。
永田 いえてる。それは怖いわ。
糸井 すばらしいね。でも、こうやって
「かま騒ぎ」について語ってるんだけど
やっぱりぼくがすごいと思うのは、
そのまえの「さんま・紳助」なんですよ。
西本 そうですよ。
永田 ぼくもそうですよ。
糸井 ああ、やっぱり、そうかあ。
永田 紳助さんが「かま騒ぎ」に来てたら
去年以上の緊張感があって、
ものすごいことになったのかなとも思いますけど。
あの、象徴的なことでいうと、ぼくは、
去年の暴露されたネタというのは
まったく覚えてないんですよ。
でも、今年は暴露されたネタの方が
芸人さんたちの振る舞いよりも強かったというか。
西本 ネタを掘りすぎたんですかね。
糸井 インフレになっちゃいますよね。
あえてネタでおもしろかったのは
「たけしになる」というネタかな。
西本 宮迫さんの。それで、淳くんに
「紳助さんをやれ」と。
糸井 そうそう(笑)。
西本 「セルビア・モンテネグロ〜!」も
おもしろかったですけどね。
永田 おもしろかったですよ!
ああいうネタのひとつひとつでいえば、
去年よりもおもしろかったと思う。
糸井 でも、最終的な印象としては、
やっぱり「さんま・紳助」なんですよねえ。
あの、自分ネタに踏み込むところでも、
あのふたりのほうが鋭いんですよね。
ただの暴露じゃなくて。
紳助さんが、お休みしてたネタを振られて
「まだおもしろく話せん」って言ったじゃない。
ふたり はいはいはいはい(笑)。
糸井 あのあたりのおもしろさね。
あと、お葬式のときに、
さんまさんにインタビューがいかなくて、
「おれも50の男や。
 話していいことと悪いことはわかる!」
とかさあ。
ふたり はいはいはいはい(笑)。
糸井

もう、ぎりぎりのなかの
ぎりぎりなんだよね。

永田 いまだからあそこまで話せるという話ですよね。
糸井 とにかくね、
これは「25時間テレビ」全体に
いえることだと思うですけど、
とにかくみんなが助け合ってたよね。
「たのしくなければテレビじゃない」ということで
その場所がたのしく見えるように、
みんなが助けあってたと思うんです。
で、それの典型が
紳助さんとさんまさんだったと思うんですよ。
「戦友」っぽかったですよね。
西本 ネタのチョイスもそういう感じでしたね。
紳助・竜介の前にあのふたりで営業をしてた
という話はそんなにしてない話ですから。
永田 ふたりがアドリブで助け合うというときに、
それが完全なツッコミや完全な奉仕じゃなくて
利己的な奉仕になってるところが
小気味よかったですよね。
糸井 まさにそれが
「only is not lonely」なんですよ。
にしもっちゃんは、
去年と比べるとどっちがどうでしたか?
ま、比べる必要もないのかもしれないけど。
西本 去年とは別のものですよね。
去年は片岡飛鳥さんという一人の演出家の
頭の中をきっちり再現した
「お笑いってすごいんだ!」という世界観で。
今年は、小松さんが鶴瓶さんという芸人さんとの
関係を軸にして作った
「芸人さんってすごいんだ!」
という世界観なのかなと。
糸井 ぼくはね、ビートルズのアルバムでいうと
『サージェント・ペパーズ・
 ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』
だと思うんですよ。
つまり、25時間をひとつのパッケージの
コンセプトで出していこうということです。
去年までは、
主張しなくても良かったと思うんですよ。
27時間という長さの劇場に
ずっといてもおもしろい、
という感じだったと思うんです。
でも、今年はコンセプトが必要になったわけです。
「社会のなかにあるテレビという存在、
 俺たちはこういうものなんだ」っていう主張が
リプライズする『サージェント・ペパーズ』
のようにくり返し鳴ってるんですよ。
そう主張するようになったきっかけのひとつは、
やっぱりライブドアの事件でしょう。
だから、裏のMVPは
じつはホリエモンかもしれないですよ。
西本 ぼくは、裏MVPはやっぱり小松さんですかね。
日テレの土屋さんが
「たいへんで死んじゃうかもしれないけど、
 一度はやってみたい」と言っているほど、
27時間テレビの総合演出って
すごいことだと思うんですよ。
永田 じゃあ、ぼくは裏MVPは
西山喜久恵アナウンサーに。
あの人、実質的な総合司会じゃなかったですか?
糸井 いえてる(笑)。
鶴瓶さんは違うことやってたからね。
がんばってました。
西本 あ、鶴瓶師匠にほとんど触れてない!
糸井 不在によって存在感を示したというのが
今回の鶴瓶さんのすごさですよ。
だから、これでいいんです。
おつかれさまでした。
ふたり おつかれさまでしたー。


ほぼ日テレビガイド・ひとり女子部。
BY 小池(元吉本興業のほぼ日乗組員)



コイケ

今年の「25時間テレビ」を観て
去年まで、カメラの向こう側にいた自分は、
7年間吉本興業にいたがゆえ
芸人さんからすべてを学んできたがゆえ
どうしても芸人さんたちの
動きを追ってしまうのですが
今年はなにか、芸人さんたちの
「おもしろさ」だけではないなにか、
自分の中にひっかかるなにかがありました。

去年のめちゃイケチームの
「27時間テレビ」は
もちろん最高におもしろかったです。
「おもしろさ」だけでいえば
去年の方が勝っていたかもしれません。
でもそのこととは違う「なにか」で
今年は心を動かされたのです。

それは、鶴瓶師匠の力なのかもしれません。

深夜の、さんまさんと紳助さんの
夢のような同級生トークバトルを観ながら、
私は爆笑すると同時に
この2ショットが観られることに
感動していました。
そして、げらげら笑うことと、
しみじみ感動することを交互に味わいながら
「前にも一度
 こんな気持ちになったことがあった!」
ということを、ふと思い出しました。

それは、よみうりテレビで放送されていた
「パペポTV」
(鶴瓶師匠と上岡龍太郎さんのトーク番組。
 上岡龍太郎さんの引退とともに
 惜しまれつつ終了)
の最終回の収録現場でした。
当時、間寛平さんの現場についていた私は、
鶴瓶師匠に「おつかれさま」を伝えに行った
寛平さんのお供として、収録現場にいました。
その日、現場には、
「もしかしたらさんまさんと紳助さんが
 収録にいらっしゃるかもしれない」
というウワサが流れていました。

番組収録が終わる少し前、
もう二人ともいらっしゃらないかも
しれないですね
とスタッフが話をしていたそのとき、
まずはさんまさんが現場にいらっしゃって
そのままスタジオに直行。
そのあと、少ししてから
紳助さんがスタジオにいらっしゃって
スタジオに行かれました。
鶴瓶師匠も、さんまさんも、紳助さんも、
テレビで毎日活躍されているので
伝わりづらいことかもしれませんが、
その3人がそろうことは、
現場で働く人たちにとっては
けっこう、すごいことなのです。

あの時、
普段は一緒に番組に出られることのない
お二人が並んで出演されたのは
上岡さんの引退ということがあったから
という理由ももちろん大きいと思うのですが
今思うと、
「親友、鶴瓶師匠の大切な番組の最終回」
ということもあったのではないかと。

今回の総合司会も鶴瓶師匠。
もちろん、お仕事ですから
私の考えるような感傷的なことは
まったくなかったのかもしれませんが、
それでも私はふと思ってしまうのです。

さんまさんと紳助さんは、
「総合司会の鶴瓶師匠のため」に
ならんで出られたのではないかと。

芸能界やテレビ以外の仕事でも
なんでもそうなのかもしれないのですが
どこの世界にも
「この人のためになにかしたい、
 この人をなんとかしてあげたい、
 この人と一緒にいたら
 なにか楽しいことがおきる!」
と思わせる人が必ずいます。
私のような者が言うのはたいへん失礼ですが、
鶴瓶師匠はまさに
「この人のためになにかしたい!」
と思わせる方なのではないかと思うのです。

そんな鶴瓶師匠の魅力が、
今年の「25時間テレビ」の
おもしろさだけだけではない「なにか」を
生み出しているのではないかと、
そんなふうに私は思いました。
 
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2005-07-29-FRI

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