糸井 | 「今年はどういう年になるんでしょう」 という主旨の番組なり取材なりって、 昔はよくあったと思うんですが。 |
吉本 | 今もないことはないんだけど、 「それこそが訊いてみたい」 ということじゃ なくなってきてるんじゃないでしょうか。 僕にはなぜかってよくわかんないんだけど、 おそらく会社の、 つまり新聞社や出版社の上の連中が一斉に、 もう二大政党──民主党と自民党だけで、 あとはもう枠外だ、 枠外というよりもう圏外だよ、という考えを まるで伝染病のように、 スーッと持ってきたんですよ。 そうすると、 乱暴にああだこうだ言ってた人間が ひとりでにおとなしくなる。 会社全体も「上」がそういうふうに要求しねぇから、 しだいに触れるのがおっかなくなっていく。 |
糸井 | ややこしくなりますもんね。 |
吉本 | そう。だから、そういう取材は来ませんし、 来たらいくらでもしゃべるよって、 言ったとしても、来ないよっていうふうです。 弾圧とかそういうことじゃない。 それは見事で、おもしろいです。 |
糸井 | 伝える側にもなんとなく 無力感があるということですか。 |
吉本 | そうです。 それでもって、 ひとりでにそういうふうになっていって、 時代が変わっていく。 |
糸井 | そりゃ、ある意味 一本化になっちゃってますね。 はああ、ほんとだ‥‥ 一方で地球温暖化のことを言って、 一方で小沢さんと福田さんの話をしてれば、 全部済んだような気がするんだ。 |
吉本 | そこの均衡を、 意識して取ってるんだったら たいしたものだなと僕は思います。 そうじゃなくて、 ひとりでにそういうふうになっちゃったというのは、 これはたぶん、今の情勢では悪いです。 そういうやり方はまずいですね。 |
糸井 | ちょうど、商品の生き残り方とそっくりですね。 例えば、歯ブラシでいうと、 いろんな歯ブラシがあるんじゃなくて、 もう「これだ」というものだけになって、 それ以外はあまりない。 あとは不衛生だし、磨きづらいし、 みたいな話になって‥‥ああ、全部がそうですね。 音楽も上のほうだけ売れてて。 |
吉本 | そうそう。 |
糸井 | 「いろいろっていうのが、 これからの時代なるんだよ」 って、みんな口では言ってるけど、 どちらかというと、完全に 「非いろいろ」のほうに進んでますね。 |
吉本 | もう、そりゃそうです。 温暖化と小沢と福田、 それしか話題がないみたいに言うけど、 ほんとうはそれは枝葉末節のことです。 そういうことを意識してる人と そうじゃない人とがあります。 目覚めている人のなかでも、 そういうふうに流していこうという考え方はある。 おそらくここ何年かくらいは、 やっぱりじっとしてたほうがいいんでしょう。 それで、4〜5年のうちに どんどん移ってくると思います。 いい徴候か悪い徴候か、それはわからないけど、 そうとうはっきりと出てくると思います。 |
糸井 | 前から吉本さんが ずっとおっしゃっていたことですが、 「生活者主導」とか、 明らかに消費のほうに主導権があるという話を 今になって、自民党も民主党もしています。 |
吉本 | ええ、ええ、してます。 |
糸井 | あれを公に言うようになったというのは、 えらい変わり方だと、僕なんかは思うんです。 「すごいな、両方が言ってるよ」 と思っちゃいます。 |
吉本 | そうですね。 やっぱりそれも、この4〜5年はそうです。 |
糸井 | この4〜5年って何だったんでしょうか。 ‥‥不況からもういちど組み直した時期ですね。 組み直すプロセスで戒律的になったでしょうし、 とにかくルールでいちど整えてみようと、 無理をいっている時期なのかもしれない。 |
吉本 | そうだと思いますね。 (明日につづきます) |