とにかく民主党を見てるといい。



糸井 あっちもこっちも利害関係が同じになっていて、
アメリカのあとを追いかけている状態で。
吉本 ですから、こういうときに
どこを見てればいいかっていうと、
政治問題でいえば、
民主党を見てるといいと思います。
それがいちばんわかりやすいし、
いろんなことが全部わかります。

民主党を観察して何がおもしろいかというと、
あそこは、社会党の右派的な人たち、
つまり昔の共産党、
ロシアの影響を受けた人たちの流れと、
それからもうひとつ、
田中角栄みたいな、
傲然たる保守──保守なんだけど
見方によってはひじょうに日本的・東洋的な保守、
このふたつの集まりだからです。

東洋的な保守というのは、
東洋的に人気がありますし、人物も、いい。
「西郷隆盛から田中角栄まで」と
言いたくなるような、
日本的な政治家が、これにあたります。

日本的な保守と社会党右派、
それが一緒にひとつの政党を作っているから、
おもしろいなと思うんです。

極端なことを言えば、
田中角栄のお弟子さんみたいな、
あの、民主党の代表をしてる人‥‥
糸井 小沢さんですね。
吉本 小沢、ああいう人たちがもう少し、
左翼的な考えを身につければ
いいだろうなと思ってます。
そして、社会党の右派的な人たちが
昔の名残の党派性を、
もう少しやめたらいいんじゃないかな。

そうすれば、民主党というのは
ちゃんと自民党と対抗できる
進歩勢力になると思います。
糸井 日本的な政治家という考えは
おもしろいですね。
「西郷隆盛から田中角栄まで」
吉本 田中角栄的なものは、一方から見ると
右翼的で民族主義的なんですが、
日本人に人気があるのは
ほんとうに、そこです。
「西郷隆盛から田中角栄まで」です。

日本の国内でも人気があるけど、
例えば中国に対しても人気があるのは
そういう人たちなんです。
似てるからです、自分たちに。
まぁつまり、東洋的なんですよね。
 
糸井 そういう「人気者」の考え方と
昔のロシアからの流れが
いっしょになっているのが、
民主党だということなんですね。
吉本 ですから、今はいちばん興味深いです。
そこの動きを見てれば、もう
これから全体がだいたい
どういう行き方をするか、わかります。

民主党が割れるならどう割れるか、
あるいは、
社会党の右派がもっとほかの小会派を包括して
自分たちの民主党をつくりあげていくか、
その中間か、
誰がどうやめていくのか。
対立や葛藤、和合、そういうのを見てるといいです。
政治的な動きの全体像が縮図となって出ます。
糸井 じゃ、前に小沢さんが
「やめた」と言ったりしたのは、
もしかして、大芝居を打ったんですか?
吉本 そうだと思う。そう思います。
糸井 あの「西郷隆盛」が。
吉本 ええ、「西郷隆盛」です。
あの人がいなければ、
政治的には、あそこはだめなんです。
糸井 そうすると、小沢さんを
大事にしなきゃ、ということになります。
吉本 そうそう。それがよくわかってるから、
あのとき、みんなが大事にしたんですよ。
押しまくったら分裂するから、
一生懸命になって
鳩山と菅というのが止めたわけですね。
糸井 最近、小沢一郎さんは
すごく笑うような気がするんです。
吉本 そうですね(笑)。
 
糸井 で、どちらかというと菅さんは、
怒ってみせないと自分じゃないと
思ってるのかもしれない。
それがお互い一緒になればいいんですね。
なるほど、その見方、すごくわかりやすいです。
そういえば吉本さん、民主党は
丸がふたつ、くっついたマークなんです。
吉本 それはそれは。そうですか、
それは結構なことだと思います。

(月曜につづきます)



2008-02-22-FRI


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