順番とか、関係とか、バランスとか(1月16日)

・犬は、りっぱな歯はあるのだけれど、
 口に入れたものをあちこちに移動させたり、
 よく噛んで細かくすることができない。
 おそらく肉をある程度ちぎって飲みこめばいいからだ。
 
 草食の動物は、切る裂くというような鋭い歯ではなく、
 文字通り「臼(うす)」のような歯を持っている。
 ほとんど流動体にして食道へ送り込む。
 
 人間は、雑食だから、両方のことをうまくやっている。
 発生としては、舌は「腕」などと同じようなものらしい。
 たしかに、ものをつかんで口に入れることも、
 口のなかのものを混ぜたり飲みこんだりすることも、
 同じ種類の働きだよなぁと思う。
 
 口は、すごい仕事をしているものだなぁ、と考えていた。
 寝たり起きたりで、仕事をしてないから、ひまなのだ。
 あ、しかも、口はしゃべるよ。
 思ったこと、考えたことを「ことば」に置き換えて、
 声帯をものすごく微妙に奮わせて口から声に出している。
 その速度、その繊細、そこにこころをこめる技術。
 ああ、ただただ感心するしかない。
 他の動物たちは、いい歯しているし、うまく食うけど、
 しゃべらないものな、こんなに複雑なことばを。
 
・なんてことを思っていたのだけれど、
 食べものも、飲みこんでしまってからは、
 胃や腸の仕事なんだよな。
 ここから、口はなにもすることがないのではなかろうか。
 どんだけ歯が丈夫でも、飲みこんでしまえば関係ない。
 食道だよ胃だよ、そして腸だよ、見たわけじゃないけど。
 口の仕事がどれだけ素晴しかったとしても、
 もう、終りなんだよな。
 あとは、胃やら腸やらの出番なんだ。
 どっちが優れているとかじゃなく、順番があるんだ。
 そして、おそらくさまざまな内臓が関連して働いて、
 いのちが維持されていくんだろうね。
 順番とか、関係とか、バランスとかぜんぶ大事なんだ。
 ‥‥これ、東北の復興の話なんかにも、
 なんだか、ずいぶん似ているような気がする。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
身体のことを考えるには、弱ってるときのほうがわかるね。

「今日のダーリン」より