糸井 | どうなるかわかんないようにつくったとはいえ、 決まりがまったくなかったら表現にならないわけで、 たとえば色づかいだとか、質感だとか、そういうものには、 じつはちゃんと決まりごとがありますよね。 |
奈良 | ああ、そうですね。 それはなんていうんでしょうね、 好きなだけでできる仕事じゃないから。 |
糸井 | うん。それは重要なことだね。 |
奈良 | 人に見せる時点で、責任が伴ってくるわけで、 責任が伴った時点で、基本的な実力ってなければいけない。 なかったら勉強しなければいけない。 そんなふうにぼくは思ってて、 その点でいうと、自分はデビューが遅かったから、 いちおう、ずっと勉強はしてきたから。 |
糸井 | そこに費やした時間が、いま噴出してるのかな。 |
奈良 | でも、美大出て5年くらい美術を続けた人は、 そのくらいの実力は持ってると思うけど。 |
糸井 | そのベースとなる実力が共通だとした場合、 そこからの個性やキャラクターというのは どういうふうに違ってくるんですか。 |
奈良 | まず、テクニック的なものっていうのは、 習得する時間の差はあるかもしれないけど、 誰でもあると思うんです。 ある人は要領よく1年で覚えるかもしれないし、 10年かかって覚える人もいる。 でもそれは、前提というか当たり前の部分。 個性やキャラクターというのは、 それをどうやって壊せるか、 どういうふうに壊すかということなんじゃないかな。 |
糸井 | 奈良さんの場合は、そういう個性を 出そう、出そう、としてる感じには見えないんですよね。 こうなっちゃった、っていう感じに見える。 |
奈良 | ぼくの場合、デビューした当初は、 「へたくそ」って言われたんです。 それは、一般のお客さんのほうから。 いちおう、美術をやってる人からは 「うまいね」って言われてたんですが、 一般の人からは「うちの孫でも描ける絵だ」って(笑)。 言われるとわかってないなって思いながらも、 そう見えるかもなって、感じることもあったし。 だから、どう見られるかとかは あまり意識はしてないですね。 とくに、作品ひとつひとつをつくっているときは。 |
糸井 | 作品ひとつひとつは意識してないけれど、 「見る場所」や「見せる場所」については、 ものすごく意識してますよね。 |
奈良 | それはもちろん、しなきゃいけない。 それが人に見せる責任だと思う。 だから展示するのを人に任せることは絶対にしません。 どこで展示するにしても必ず自分で下見して、 自分で場所決めて、絵の場所やら何やら全部決める。 どういう視点でどう見せるかっていうのも、 本当は自分の表現方法のひとつ。 ここにこうやって立ったらこう見えるんだよ っていうのを自然に誘導することは おろそかにはできないですね。 とくに、今回の「A to Z 」では そういう順路みたいなものがすごく大切でした。 ※この日は特別に撮影を許可していただいたのですが、 通常の「A to Z」は撮影禁止ですのでご注意ください。 ・・・・・「04 チーム」へ続きます |