The Apple in My Heart 奈良美智さんの中へ、ほんの少し。

06 美空ひばり

糸井 青森の空港から降りてすぐのところに、
すごくいい景色がありますよね。
あの、空港のそばのあたりに。
奈良 ええ。
糸井

あそこで、ぼくが何を思い出したかというと、
美空ひばりさんの『リンゴ追分』だったんですよ。
美空ひばりがなぜあの時代に
あの歌をうたったのか詳しくは知らないんだけど、
あの歌はよくできてるなぁと思って。
「りんごの花びらが 風に散ったよな」って。
でも美空ひばりさんは横浜で生まれてるんです。
いわば、青森の人たちから見たら、
よそから来た人が現地の民謡を歌った、
みたいなことですよね。
でも、だからこそ、人気が出たのかもしれないなと、
空港のそばの景色を見ながらふと思って
なんとなくメモしたりしてたんですけど。
奈良 あの歌は『リンゴ園の少女』っていう
白黒映画の中でうたわれていて、
じつは、そのロケは、このあたりであったんですよ。
糸井 へえええ。
奈良 映画の中で、美空ひばりさんが
のど自慢大会に出るシーンがあるんです。
会場は弘前公園なんだけど、
とにかく昔の弘前の風景がいっぱいで、
当時の弘前の人もエキストラとしてたくさん映ってるんです。
そのときの弘前って、
きっとすごく盛り上がったと思うんですよ。
糸井 すごかったんでしょうね。
奈良 そう思うんです。
で、この「A to Z」のオープニングに
ものすごくたくさんの人が来てくださったとき、
ぼくは「なんか昔見た美空ひばりの映画と同じだなぁ」
と思ったんですね。
エキストラじゃないけど、たくさん人が集まってて、
あー、もしかしたら美空ひばりが弘前にロケに来たときも、
エキストラで来た人たちは
こんな感じで見てたのかなぁと思って、
ちょっとうれしくなって。

糸井 じゃあ、奈良さんも
この場所で美空ひばりのことを思ったんだ。
奈良 思いましたよ。
糸井 不思議だねえ、それは。
そもそも、なぜ美空ひばりは
弘前出身でもないのに、りんごの映画に出て、
りんごの歌をうたったんだろう。
奈良 そうですねえ。
糸井 関係あるかどうかわからないけど、
戦後っていうと、りんごなんですよ。
「赤いリンゴに口びるよせて」とかね。
奈良 ああ、『リンゴの唄』ですね。
あと、『青い山脈』のラストシーンでも
りんごが登場してた気がします。
糸井 りんごねぇ‥‥。
それは、なんなんだろうなあ。
弘前の人にとっては、
切っても切り離せないものですよね。
奈良 そうですね、街に出て、「弘前が誇れるものは?」
っていうアンケートをとると、
1番と2番が、りんごかお祭りになると思う。
そのほかの答えは、あんまり出ないんじゃないかな。
胸を張って答えるのは、りんごとお祭り。
それと「今年はA to Zも!」(笑)。

糸井 あ、思えば、ここはシードル(りんご酒)工場だ。
奈良 そうですね(笑)。
糸井 りんごの縁だよね(笑)。
そういえば、アップルレコードも
たくさん飾ってあったし。

奈良 そうそう(笑)。



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2006-10-10-TUE

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