糸井 | 青森の空港から降りてすぐのところに、 すごくいい景色がありますよね。 あの、空港のそばのあたりに。 |
奈良 | ええ。 |
糸井 | あそこで、ぼくが何を思い出したかというと、 美空ひばりさんの『リンゴ追分』だったんですよ。 美空ひばりがなぜあの時代に あの歌をうたったのか詳しくは知らないんだけど、 あの歌はよくできてるなぁと思って。 「りんごの花びらが 風に散ったよな」って。 でも美空ひばりさんは横浜で生まれてるんです。 いわば、青森の人たちから見たら、 よそから来た人が現地の民謡を歌った、 みたいなことですよね。 でも、だからこそ、人気が出たのかもしれないなと、 空港のそばの景色を見ながらふと思って なんとなくメモしたりしてたんですけど。 |
奈良 | あの歌は『リンゴ園の少女』っていう 白黒映画の中でうたわれていて、 じつは、そのロケは、このあたりであったんですよ。 |
糸井 | へえええ。 |
奈良 | 映画の中で、美空ひばりさんが のど自慢大会に出るシーンがあるんです。 会場は弘前公園なんだけど、 とにかく昔の弘前の風景がいっぱいで、 当時の弘前の人もエキストラとしてたくさん映ってるんです。 そのときの弘前って、 きっとすごく盛り上がったと思うんですよ。 |
糸井 | すごかったんでしょうね。 |
奈良 | そう思うんです。 で、この「A to Z」のオープニングに ものすごくたくさんの人が来てくださったとき、 ぼくは「なんか昔見た美空ひばりの映画と同じだなぁ」 と思ったんですね。 エキストラじゃないけど、たくさん人が集まってて、 あー、もしかしたら美空ひばりが弘前にロケに来たときも、 エキストラで来た人たちは こんな感じで見てたのかなぁと思って、 ちょっとうれしくなって。 |
糸井 | じゃあ、奈良さんも この場所で美空ひばりのことを思ったんだ。 |
奈良 | 思いましたよ。 |
糸井 | 不思議だねえ、それは。 そもそも、なぜ美空ひばりは 弘前出身でもないのに、りんごの映画に出て、 りんごの歌をうたったんだろう。 |
奈良 | そうですねえ。 |
糸井 | 関係あるかどうかわからないけど、 戦後っていうと、りんごなんですよ。 「赤いリンゴに口びるよせて」とかね。 |
奈良 | ああ、『リンゴの唄』ですね。 あと、『青い山脈』のラストシーンでも りんごが登場してた気がします。 |
糸井 | りんごねぇ‥‥。 それは、なんなんだろうなあ。 弘前の人にとっては、 切っても切り離せないものですよね。 |
奈良 | そうですね、街に出て、「弘前が誇れるものは?」 っていうアンケートをとると、 1番と2番が、りんごかお祭りになると思う。 そのほかの答えは、あんまり出ないんじゃないかな。 胸を張って答えるのは、りんごとお祭り。 それと「今年はA to Zも!」(笑)。 |
糸井 | あ、思えば、ここはシードル(りんご酒)工場だ。 |
奈良 | そうですね(笑)。 |
糸井 | りんごの縁だよね(笑)。 そういえば、アップルレコードも たくさん飾ってあったし。 |
奈良 | そうそう(笑)。 ・・・・・「07 The Apple in My Heart」へ続きます |