奈良 | ぼくね、生まれて初めて見た 海外のミュージシャンがニール・ヤングで。 高校1年のときに、武道館に見に行って。 |
糸井 | あの、長い髪を風に扇風機にあててたときでしょ。 |
奈良 | かなぁ? ※この日は特別に撮影を許可していただいたのですが、 通常の「A to Z」は撮影禁止ですのでご注意ください。 |
糸井 | 家具が置いてあって。 |
奈良 | そうそうそう。 |
糸井 | あのときもよかったし、 ちょっと前に来日したときもよかったですよ。 |
奈良 | ドイツいたときも何回か見てて、 ニール・ヤング見てると、 彼の価値観って、変わんないでしょ。 |
糸井 | そうだねえ。あの人はなんなんだろうね。 |
奈良 | だから、変わらないことっていうのも、 すごく力になるんだっていうことを ぼくに教えてくれた人なんですよね。 |
糸井 | そのくせ、自分以外のものについては、 新しモノ好きだったりするじゃないですか。 DEVOのプロデュースしたりさ。 |
奈良 | そうです、そうです、 パンクにもいちばん最初に理解示したし。 |
糸井 | 頭の中が柔らかいんだよね。 往復運動ですよ、やっぱり。 |
奈良 | 若いバンドが挙げる好きな先輩ミュージシャンの中で、 たいてい最初にくるのがニール・ヤングなんですよね。 ボブ・ディランでもないし、 ローリングストーンズでもない。 それはたぶん、とらえどころがないからだと思うんです。 たとえばローリングストーンズは エンターテイメントと結びつけることができると思う。 ボブ・ディランだったら、メッセージの方法論で、 エリック・クラプトンだったら、 テクニックとかかな‥‥。 で、ニール・ヤングは、って言ったときに、 なかなかとらえどころがない。 |
糸井 | うん。言いづらいよね。 |
奈良 | それはなぜかっていうと、 ニール・ヤングの基準にあるのが、 ビジネスやテクニックではなくて、 自由っていう抽象的な表現だからなんじゃないかな。 だからニール・ヤングのことを なかなか客観的に語れないんだと思うんです。 なんで若いバンドの連中がみんな ニール・ヤングのこと好きなのかというと、 やっぱり自由だから。 |
糸井 | あの人、アメリカの現状に 浸かりきらない場所にいるじゃないですか。 それが立場としてものすごくおもしろいですよね。 |
奈良 | そうなんですよ。 彼のいちばん新しいアルバムが 『LIVING WITH WAR』っていうんだけど、 それをつくったきっかけは、 あるインディーズのフェスティバルに呼ばれて、 楽屋でみんなで話したときに、 自分たちがベトナム戦争のときに一所懸命やったこと、 反戦歌作って、平和をアピールしたことっていうのが いまの若いバンドに受け継がれてないって 気づいたからなんだそうです。 どうして受け継がれていないんだろう、 でも、なんでだろうって考える前に いまそういうことができるのは、 あのころやっていた自分たちだけだから、 自分たちがもう一回やんないと、って言って、 もう一発録りあのアルバムをつくったんです。 それを知ったときに、 「やっぱニール・ヤングだなぁ」と思って、 めちゃめちゃ感動した。 |
糸井 | 自分の中に「ニール・ヤング」っていう動物が もう一匹いるような人なんですよね。 |
奈良 | そうそうそう。 |
糸井 | きっとね、静かに家にいたいときだって、 あると思うんだけどねぇ。 |
奈良 | 子どものころはね、太ってたみたいですよ。 |
糸井 | あははははは。 そういえばニール・ヤングって、 モノポリーもやるんですよ。 それは、ぼくがモノポリーを始めた きっかけのひとつでもあるんですけど。 モノポリーってつまり、 お金をやり取りする典型のようなゲームなんです。 それをあのニール・ヤングが 矛盾なくやっているっていうのが もう、往復運動ですよね。 |
奈良 | そっかー。 やったことないな、モノポリー。 趣味でいうと、ニール・ヤングは おもちゃの汽車のコレクションがすごくて、 その汽車を走らせるための倉庫があるらしいですよ。 蒸気機関車がすごく好きみたい。 |
糸井 | へええ(笑)。 |
奈良 | それもあるのかもしれないけど、 ニール・ヤングの音楽を聴いてると、 蒸気機関車を思い出すんですよね。 すごいローテクで、石炭くべて、ポッポーって発車する。 そこにスピードはないかもしれないけど、 人が汗水たらして疾走する、そういう力強さと美しさ。 それは最新の新幹線なんかにはないもので。 |
糸井 | 坂に来たら、遅くなりそうだもんね。 |
奈良 | そうそう(笑)。 そこを踏ん張っていくのが、かっこいいんですね。 |
糸井 | 動物っぽいよなぁ。 |
奈良 | 人間誰しもが持ってる根源的な力、 なにかに頼ろうとするんじゃなくて、 自分の力で立ち上がるような、 そういうスピリットがある。 |
糸井 | たぶんあの人がレコードつくる権利を 持ち続けてるってとこでは、 彼か、彼のまわりの人が、がんばってるはずなんですよ。 そうじゃないとただ消えちゃうと思うんです。 いくら彼がすばらしくてもね。 そういうところも含めて、おもしろいですよね。 |
奈良 | うん、うん。 |
糸井 | 奈良さんがニール・ヤング好きだって聞いて、 「そりゃそうでしょう」って気がした。 ちゃんとニール・ヤングのレコードも飾ってあって、 あ、やっぱりねって思った。 |
奈良 | 好きなんですよ。 |
糸井 | あの、ジャームッシュの映画で、 ニール・ヤングがギター弾いてるのありますよね。 |
奈良 | ああ、見た見た見た。 |
糸井 | 『デッドマン』か。 あれ、画面を見ながらただ弾いて それを映画音楽にしたっていうんですよ。 瞬間に出てきたものに対して信じてるっていうか、 ようするに、テクスチャーなんですよね。 あの人も‥‥って、 なんでニール・ヤングの話をずっとしてるんだ? |
奈良 | ははははははは。 |
糸井 | 話を戻そう。ニール・ヤング特集になっちゃう。 |
奈良 | (笑) ・・・・・「14 中と外」へ続きます |