みんなで行った、 阿寒きのこの森。
エピローグ(前編) あの橋で、 どうして泣いたんだろう‥‥?

阿寒の森を体験してから1ヶ月後、
あのときのメンバーが会議室に集まりました。

きのこをめぐる冒険の、エピローグとしてお読みください。

イトイ きのこ。
山下 きのこ。
ゆーないと 阿寒のきのこ。
モギ もう、1ヶ月が経ちました。
山下 あのすばらしい日々から1ヶ月です。
イトイ わたしの中ではまだ、おき火が燃えてますよ。
一同 (笑)
山下 燃えてますか(笑)。
イトイ いろんな人に
森のことを話してますから。
モギ たのしかったですよねぇ。
イトイ もう、まったく、
新井さんの思うつぼでしたよね。
モギ ああー(笑)。
山下 新井さんは、誘い方が上手。
イトイ みごとでしたよ。
モギ 行きたい気持ちにさせられちゃって。

山下 思い起こせば、
糸井さんが新井さんのホームページをみて、
「きのこの写真にしびれた」
とみんなにメールを出したのが最初でした。

イトイ うん。
「ほぼ日」で、
きのこのコンテンツをやるんなら、
こういう写真を撮る人と
お話をしてみたいなと思ったんです。
山下 なるほど。
イトイ きのこの研究者みたいな人から
知識を教えてもらうよりも、
この深みのある
きのこの写真を撮った人に会いたいでしょ。
モギ 阿寒の森という場所にも、
ものすごく行きたくなりました。
イトイ 行きたくなる写真でしたからね。
さらに、ホームページの文章、
これがまたおもしろい。
もう、万全じゃないですか。
山下 はい。
イトイ 会ってみたら、その通りの人だったよね。
モギ そうですね。
イトイ その通りの人だった。
やっぱり書くものはその人を表しますよ。
山下 森をガイドしてくださるときも、
なんだかあの文章のように
「ほどよいガイド加減」というか‥‥。
イトイ 適度にほっといてくれてね。
山下 まず泳がせてくれて。
イトイ うん。
森の中で新井さんに
なにかを否定されたことがないもんね。
ゆーないと 注意もあんまりされなかった。
イトイ ‥‥いいですか、
この人が注意されないんですよ?
一同 (笑)
イトイ あんな「トリ」を持っていったのに。
ゆーないと あー、トリねー。

山下 トリの話はさておき(笑)。

糸井さんは、阿寒に行く前、
「きのこ狩りは釣りに近いのかな?」
という予想をされてましたよね。
イトイ うん。
山下 そのあたりはどうでした?
イトイ 違ってましたよね。
「採る」とか「狩る」っていう
意識のほうに傾いてたから、行く前は。
山下 はい。
イトイ 「ほぼ日」でごく初期のころに
クワガタムシをとりに行ったんですよ。
モギ ありました(笑)。
イトイ あれ、すごくおもしろかったんです。
釣りをやる人はクワガタとりも上手い。
類推したりね、戦術や戦略をこう、
組み立てるのがおもしろかったんだよ。
山下 はい、はい。
イトイ だから、きのこ狩りもそういう、
仮説と推理が入りまじったものだろうと。
火花を散らすものだと思ってた。
山下 ‥‥そういう感じではなかったですね。
イトイ ぜーんぜんちがった。

山下 ちがいましたよね。
ただ‥‥歩き。
イトイ そう、歩き。
山下 歩き。
イトイ 見(み)。
山下 見(み)。
イトイ 止まり。
山下 しゃがみ。
イトイ また、見(み)。
山下 立ち上がり。
イトイ 戻り。
山下 戻り(笑)。
また、しゃがみ。
イトイ もういっかい、見(み)。
ゆーないと なかなか進まない(笑)。
イトイ あのさ、都会の暮らしを毎日やってると、
「目に頼りすぎる」っていうことは
よく思ってますよね、われわれ。
山下 そうですね。
イトイ 文字を読んだり、画像を見たり。
目ばっかり使ってるじゃないですか。
すると、
「目を使いすぎるのは、なんかよくない」
っていうような気になりますよね。
ゆーないと なる、なるー。
イトイ ところが、あそこに行ったら、
「目を使いすぎたい」ってなりましたでしょ。
モギ 聴覚も触覚も使ったけど、
やっぱり大量の情報は、目から。
イトイ もう、毛穴が開くくらい見ろ! って。
ゆーないと 毛穴(笑)。
イトイ きみの持っている、その視力というものを
あるったけぜんぶ、
いくら使ってもいいから、どうぞ、見ろ!
そんな感じでしたよね。

山下 見ましたね、ものすごく見ました。
イトイ いろんなことが、ひっくり返りましたよ。
だいたいほら、
到着してまず、長靴にはきかえました。
モギ はい、ネイチャーセンターで
貸していただいて。
イトイ あのときに、
「あ、ぬかるんでるのか」って、
正直ちょっと嫌だったんです。
長靴が必要なことって、
うれしくはないですからね。

ゆーないと うん。
イトイ 雨も、うれしくはないですよ。
いまから外を歩くんですから。
山下 うれしくはない。
イトイ だーれがうれしい、雨が。
とーころが。
モギ ところが。
イトイ うれしいとか、うれしくないとか、
そんなものは、すっ飛びましたよね。
ゆーないと うん(笑)。
イトイ 田口くんなんかは今もこうして、
あの日の森と同じように、
無口に写真を撮ってますが。
田口 はい(笑)。
イトイ 森でいちばんすっ飛んでたのは
田口くんでしょう、じつは。
あなた酔っぱらいみたいでしたよ(笑)。

田口 (笑)
イトイ 状況に酔ってたでしょ?
田口 ‥‥酔いつぶれてました。
一同 (笑)
田口 初日の森の、橋のところから。
一同 ‥‥ああー。
モギ やっぱり、あの橋ですよね。
ゆーないと そうー。

イトイ あそこが境界線だったね。
田口 はい。
イトイ あそこでおれ、
ほんとに泣いたんだから。
なんだろう、なんで泣くの?
理由はなに?
山下 なんだったんでしょう‥‥。
イトイ 「きれいだ」っていうのは、ちがうよね。
ゆーないと うーん‥‥。
イトイ なんだったんだろう‥‥。
  (エピローグなのに長くなりました。
 2回にわけますね。
 あしたの後半につづきまーす)

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2010-12-09-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN