みんなで行った、 阿寒きのこの森。
北海道・阿寒湖のそばに、 きのこの楽園のような森があるというのです。 糸井重里をはじめ、 総勢5名でその森へ行ってきました。 五感のすべてを目覚めさせ、 子どものように吸収してきた ぼくたちわたしたちの、ゆかいな記録をお届けします。  現地でのガイドは「きのこカメラマン」の新井文彦さん。 新井さんが普段から撮影している、 きのこの写真もたっぷりと掲載いたします。
新井文彦さんのHP   「浮雲倶楽部」
阿寒ネイチャーセンター
新井文彦さんのプロフィールはこちら
プロローグ(前編) きのこ写真家の新井文彦さん、はじめまして!

「きのこ」のことが気になりはじめて、
もう、どれくらいになるでしょう。
「ほぼ日」ではその不思議な菌類の魅力について、
ずいぶん前からいろんな場所ですこしずつ触れてきました。

古くは「田島貴男のオレのニュース」
映画「バーバー吉野」を語り合う座談会では、
作品の感想はどこへやら
「マッシュルームカット」の話ばかりになりました。
なかばやみくもに「きのこの展示会」
出かけてみたこともありましたっけ。
コンテンツだけでなく、
一時的にきのこヘアの乗組員が増殖したこともあるんです。
(現在はずいぶんその数が減りましたけれど)


そんななか、読者の新井文彦さんというかたから
1通のメールが届きました。

「阿寒湖の森のきのこがすごいんです。
 よろしければ私のHPをご覧ください」

ご案内に誘われて、HPをたずねてみたら‥‥。


阿寒の森のベニカノアシタケ(新井文彦さん撮影)


阿寒の森のオオフクロタケ(新井文彦さん撮影)

それはそれは美しくもかわいらしい、
きのこの写真が、これでもかと並んでいました。
新井さんというかたは、
阿寒湖のほとりでネイチャーガイドもされているとか。
「これはちょうどいい、
 さっそく、きのこ狩りのガイドをしてもらおう!」
と、よろこびいさんで連絡をしたのですが‥‥
残念なことにその時点でシーズンは終わっていました。

でも‥‥阿寒の森へすぐには行けないけれど、
このすばらしい写真を撮った新井さんというかたに
ひとまず一度お会いしておきたい‥‥。


阿寒の森のフジウスタケ(新井文彦さん撮影)

昨年の11月下旬、新井さんに遊びに来ていただきました。

来週からはじまる
「阿寒の森からのレポート」に先がけて、
まずは初対面のときの様子をお届けいたします。
はじめましてのごあいさつは、
「ほぼ日」の和室で、ざっくばらんにはじまりました。

左が新井文彦さん。
目の前にきのこ頭をふたつ、おかせていただきました。
ざっくばらんなお話には、糸井も急きょ参加することに。

─── 新井さん、
きょうはわざわざありがとうございます。
新井 こちらこそ、ありがとうございます。
糸井 はじめまして、よろしくお願いします。
さっそくですけど、
阿寒のあの写真が、もうすばらしくて。
新井 ありがとうございます。
─── 新井さんはどうやって、
あの阿寒の森をみつけたんですか?
新井 もともとは東京に10年くらい住んでたんですよ。
たまたま帯広にある新聞社の
中途採用試験を受けたら、
入れてもらえることになったので、
北海道へ住むことに。
そこで雇われのコピーライターをしてたんです。
糸井 コピーライターを。
新井 で、ある日、日高山脈のガイドをする知り合いが、
「阿寒湖にネイチャーセンターっていうのを
 作ることにしたから、お前も金を出せ」と。
糸井 出資しろと(笑)。

新井 「出資しろ」という話で、まあ、お金を出して。
行ってみたら、すごくよかったんです。
糸井 きのこが。
新井 きのこもそうですけど、
川もいいし、湖もいいし、森もいい。
もう、たまらなかった。
糸井 へええー。
新井 それまでは会社で1日に16時間くらい
コピーを書いてたっていうのもありまして。
糸井 それは‥‥残念な時間でしたね(笑)。
一同 (笑)
─── 糸井さんはコピーから釣りに行って、
新井さんはコピーからきのこに。
糸井 そうだね、ほんとだ。
しかも群馬出身なんですよね。
新井 はい。
糸井 焼きまんじゅう同士ですよ。
新井 焼きまんじゅう(笑)。
─── 現在はずっと阿寒湖で、きのこを探して?
新井 そうですね、ほとんど毎日、
きのこを求めて山の中へ入ってます。
でも、ここ2年くらいは夏だけですね。
夏に阿寒でガイドの仕事をして、
冬になると内地のほうに。

糸井 じゃあ、いまのお仕事は、ガイドと写真ですか。
新井 いや、写真はほんとうにまだまだで。
文章、ライターが主なんです。
糸井 そうですか。
でも写真、すごくいいですよ。
新井 ありがとうございます。
完全に独学です。
糸井 だからいいのかな。
新井 下手の横好きじゃないですけど、
とにかくきのこが好きなんで。
そのきのこをきれいに写してあげたい
っていうだけなんです。
糸井 そういうことですよね。
それがよかったんでしょうね。
─── きのこ、お好きなんですね。
新井 なんて言うんでしょう‥‥
きのこって、取るときの触感がたのしいんですよ。
糸井 ああー。
─── 感触ですか。
新井 マツタケなんかもそうなんですけど、
すごい素直にこう、ちょっとこう、
ずらすと、スポンって抜けるんですよ。

─── へぇー。
新井 その感触がすごく気持ちいい。
味とかなんとかよりも、もうこのスポンが。
糸井 それはあれですね、釣りと同じですね。
釣りのなにがおもしろいって、
これだろうなとぼくが思ったのは、
誰もいない所でひとりで釣りしてるときに、
その日、最初に自分のルアーを魚が、
こう、プルッて‥‥。

新井 あー、なんかわかります。
糸井 このやろう!って(笑)。
「おれとおまえ、ここにいたんだ」みたいな。
新井 たぶん、本能ですよね。
糸井 本能ですねー。
動物じゃないこのきのこも、
同じものを持ってるんですよね。
「おまえ、ここにいたか」っていう。
近い気がするなぁ、釣りに。
─── きのこを探すときは、
やっぱりこう、森の深くに入るんでしょうか。
新井 そういう場所もありますけど、
阿寒湖って国道からすこし入ったところで
もう原生林だったりするんですよ。
ですからそういう意味では
らくに入っていけるんです。
─── へえー、それはちょっと意外な。
新井 すぐに原生林です。
阿寒湖の周りは「針広混交林」といって、
針葉樹と広葉樹が混じっている森もあるんですね。
で、きのこは大まかに言うと
針葉樹に出るタイプと広葉樹に出るタイプに
分けられるんです。
つまり、そこなら
両方のタイプのきのこが見られる。

─── お得ですね。
新井 ぼくは阿寒のことしか言えないんですけど、
理想的なきのこの森だと思います。
糸井 それで、毎日森に入りたくなっちゃう。
新井 そうですね。
ネイチャーガイドの仕事で
しょっちゅう森に入るんですが、
その合間にプライベートでまた森に行くんです。
糸井 釣りのガイドさんが、
休みの日にも釣りをしてるような(笑)。
新井 ガイドをしてるときに限って、
いいきのこがあるんですよ。
一同 (笑)
新井 さすがにお客さんを連れてて、
「すみません写真撮るから」って、
1時間は待たせられないじゃないですか。
だからプライベートで行って‥‥。
糸井 1時間?
新井 きのこひとつ撮るのにかかるんです、そのくらい。
やっぱりモデルさんなんで。
糸井 はあー(笑)。
新井 いろんな角度から眺めてみたり、
ちょっとメイクを。
─── メイクですか。
新井 虫とか葉っぱとかいろいろついてるので、
こういう道具できれいにしてあげてから
ちゃんと撮るようにしてるんです。

糸井 そうですかー。
新井 「右斜め下から撮るとかわいいね」
とか、声かけながら撮るわけですよ(笑)。
糸井 いいですねぇ(笑)。
新井 「あ、いいね!」っていう角度を見つけるのに、
けっこう時間がかかるんです。
糸井 それがあの写真なんだ、なるほどなぁ‥‥。
そのコミュニケーションはやっぱり、
「おれが見つけたおまえ」っていう関係ですよね。
新井 そうですね。
糸井 だから最初に新井さんのページで、
「この写真はなに?!」ってびっくりしたときも、
ぼくはそこに引っ張られたんでしょうね。

─── 「このページの写真、かっこいいんだよ」
って言ってました、糸井さん。
糸井 おれ、そういうふうに言ってた?
そう、かっこいい。
かっこいいんですよ。

阿寒の森のドクベニタケ(新井文彦さん撮影)

(プロローグの後編に続きます)

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2010-11-11-THU
※ご注意
 天然のきのこを採集し、自分の判断だけで
 それを食べることは決してしないでください。
 きのこの中には強い毒性を持つものが多数あります。
 食べるきのこは、必ず専門家と一緒に採集してください。
また、きのこ狩りなど山や森に出かけるときには、
土地の所有者を確認し、
必要な場合は許可を取るようにしてください。
プロローグ(前編)
きのこ写真家の新井文彦さん、
はじめまして!
プロローグ(後編)
行きたいねぇ‥‥
行きましょう、阿寒の森へ。
 
1 いざ、阿寒の森へ!
2 気がつけば原生林。
3 いろいろなきのこ。
4 いろいろな生き物。
5 倒木と冬虫夏草。
6 糸井・オンステージ。
7 五感をフルに。
8 一日の終わりに。
9 オンネトーへ
10 食べられるきのこ、
   どこだ〜。
11 収穫の舞い。
12 美しい湖畔に、
   破壊の天使。
13 オンネトーに沿って。
14 ちょっとブレイク。
15 森の終わり。
16 阿寒湖畔で下ごしらえ。
17 収穫まつり。
 
エピローグ(前編)
あの橋で、
どうして泣いたんだろう‥‥?
エピローグ(後編)
いつかまた行きましょう、
あの原始の森へ。
 
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