みんなで行った、 阿寒きのこの森。
5 倒木と冬虫夏草。

もう、夢中です。
みんな夢中になって、森に包まれています。

新井さんが、1本の倒木に案内してくれました。
その倒木を、じっくりと観察すれば、
そこにもたくさんの‥‥。

 


なめるように。  

みんな無口になってます。
しゃがみこんで、
なめるように見ていけば、
きのこ、苔、粘菌、シダ‥‥。
みっしりと、
視界にみっしりと、緑があふれます。
夢中ですよ、もう。

苔・・。

まだ森に入って間もないですが、
僕はどうも苔が好きかもしれません。

いや、きのこだって、粘菌だって
好きなんですよ。
でも、振り返ると苔の写真を
多く撮ってるような気が・・。
まだ確信にはいたっていません。




集合ー!  

ちいさいのが集まって、はえてます。
かわいいなぁ。
「センボンクヌギタケ」
っていう名前だそうです。


センボンクヌギタケ  

イヌセンボンタケとか、
センボンイチメガサとか、
1か所にば〜っと
たくさん生えるきのこには、
センボン=千本、
という名前が付いてたりします。

小さいきのこ一つひとつは、
もちろん別々の個体であって、
ニンゲンで言うなら、
鈴木さんもいれば、
高橋さんもいるわけで、
全部ひっくるめて
センボンクヌギタケだ、
と認識しちゃうのは、
ちょっと失礼かなあ、
などと考えたりもして。

ぼくが、こういう
「集合きのこ」を撮影する場合、
多々いる
センボンクヌギタケさんたちの中で、
最初に、まず一人だけ、
モデルを選びます。
他のきのこは
引き立て役に徹してもらうと、
ちょっといい写真が
撮れたりするのですね、
これが。

(写真/新井文彦)


その男、
迷彩につき。
 

メインキャメラマン

迷彩柄の服を着ているのですが、
迷彩の底力を見たね。
なじんちゃってるもの、森に。
かっちょいぃーーー!

ドキュメンタリー!

この、ハードな感じ?
激写っていう雰囲気?
でも、カワイイきのこが被写体っていう
ギャップがいいと思います。


つっかえてる。  

倒木は、ほんとにきのこの宝庫です。
そして、倒木の上だけでなく
まわりにもこうして、
きのこが生えています。

こちら、倒木の高さよりも
きのこが成長しようとして、
つっかえてる状態になっています。

せっかく生えたのにね〜〜。

残念のかたち。

「残念」というタイトルがつきそうな
きのこのはえかたでした。
きのこには申し訳ないけれど
これは笑っちゃったなぁ。


お隣りに。  

おとなりには、
「これから伸びるっす。」
という小さいひともいました。
こっちの人は、
つっかえないで済みそうです。

なんでしたっけ?

ええと、新井さん、
この小さいひと、
名前はなんでしたっけ?


オオフクロタケ  

かなり大型のきのこで、
森の中でけっこう目立つ存在です。

一応、可食、とされているのですが、
毒きのこ目白押しのテングタケの仲間に、
姿や形が似ているので、
鑑定に自信がない場合は、
食べない方が無難ですね。
(このきのこをおいしい、
 という人もあまりいません)

小さな「卵」形だったきのこが、
にょきにょき伸びて、傘が開いて、
やがて腐敗して
見えなくなる様子を観察すると、
生物のカラダは地球から
期間限定で借りている、
もちろん、ニンゲンも、
例外ではない、
だから、きちんと、
地球に返さなければならない、
などと、
ちょっとテツガク的なことを考えたり。

森でのきのこ観察は、
想像力を
飛躍させる効果もありますね。

(写真/新井文彦)




ぺったり系  

これも?
このぺったりしたのも、きのこですか?!
はぁーー、ほんとに多種多様。
え? 名前が?
アラゲコベニチャワンタケ?
呪文のようですね。
アラゲチャコンビニタケ。
‥‥ぜんぜん言えてないですね。
アラゲチャベニコゲンダケ。
‥‥まったく言えてない。
音で覚えるからだめなんですね。
荒毛・小紅・茶碗・茸。
なるほど!


アラゲコベニチャワンタケ  

まさに、名は体を表す、
というネーミング。
つまり、
荒い毛が生えていて、小さくて、
紅色で、茶碗のようなきのこ!

アラゲコベニチャワンタケは、
「お皿」の直径が5mm前後の微小きのこ。
とても小さいけど、真っ赤で目立つので、
倒木などを探すと
簡単に見つけることができます。

シイタケやマツタケのように、
きのこきのこしていないので、
きのこ好きの間でも、
好き嫌いが分かれるかもしれませんが、
ぼくは、このきのこ、大好きです。

(写真/新井文彦)






冬虫夏草の倒木。  

「この倒木に
 冬虫夏草がいるんですよ」
新井さんの案内で、
みんながひとつの倒木を囲みます。
冬虫夏草。
図鑑などで見ただけですが、
寄生するヤツですよね?
セミの幼虫のからだから、
ニョキニョキときのこがはえている
イラストを鮮烈に覚えています。
あれが、この倒木のなかに?
稜さんがナイフで樹皮を探っています。

ナイフ

こういう埋まってるものを、
ナイフでチュンチュンとやって
そっとやさしく出す。
というのは、びっくりしたなぁ。
たしかにナイフって、薄いから
使いやすそう。
切るだけじゃないんだぜ、ナイフ。

ツボ。

この倒木は、「宝庫」っぽかったです。
いろいろな部分に、
いろいろなキノコが生えています。

倒木が机のようにみえてきました。
さんの
くつろぎっぷりが、
「ログハウスで語らう」
にみえてきて、
ちょっとツボにはいりました。
せっかくなので
ひそかに写真を撮っておきました。


でた!  

「あ、あった、これです」
と稜さん。
わ! え? これ?!
そうか、セミの幼虫に寄生するとは
かぎらないんですね。
これは何だろう?
なんかイモムシ的な?
ひょろひょろときのこがはえてます。
おぞぞぞぞぞ!
正直、きもちがわるい、怖い!
でも、目がはなせない。
ちなみにこれはさんの写真。
その場で「気まぐれカメら」に アップしていました。

地味だった。

いや、「地味」なんて言っちゃ、
失礼ですけどね。
「冬虫夏草」ってすんごいものじゃないですか。
知ってるのは。
字面はキレイで、本物の見た目は
びっくりするような、
もうナウシカに出てくるようなさ。
ちょっと憧れもあったわけですよ。
でもこんな小さいだなんて!
そりゃあ小さい虫が存在してるんだから
いるに決まってるんですけど。
でも、すごいことしちゃいますよね。
キノコのヤロー。かっちょいいっす、先輩。


サビイロクビオレタケ  

きのこは、枯木や倒木をはじめ、
生木や、他のきのこなどからも
発生しますが、
このサビイロクビオレタケは、
朽木に生息している
甲虫の幼虫に寄生する、
いわゆる「冬虫夏草」です。

冬虫夏草の生態は
けっこう謎に包まれていて、
きのこマニアを引き寄せてやみません。
さまざまな昆虫、
そして蜘蛛にも寄生します。

昆虫などに寄生した冬虫夏草の仲間は、
じわじわと体内に菌糸を這わせ、
ゆっくりと宿主にとどめを刺すのだとか。
ひゃ〜、まるでホラーですねえ!

よく見ると、
幼虫の形がはっきりしていて、
実に生々しい感じがします。
漢方薬的効果があるかどうかは
わかりません。

(写真/新井文彦)








めくって、めくって
きのこちゃん
 

冬虫夏草はきのこだけじゃなくて、
虫がセットでついてくるので、
ちょっとダメで、
私は別のきのこと向き合っていました。

というか、きのこの
傘の裏側の写真を
とりまくっていました。
へんな体勢でシャッターを押すので
なかなかピントがあいませんで、
苦労いたします。

この繊細さ!
見飽きないっす。

そうだったのか。

そうか‥‥あのときモギさんは、
冬虫夏草を直視できずにいたのか。
不気味なものはなんでもお好きだと
思い込んでいました失礼しました。
「きのこの裏側」に執着するのも
なかなかどうして、
どうかと思うけれども!
この写真はきれいだね!

わたしは知っている

このビラビラの中には、
細かいゴミのような虫が
とてもたくさん入っていたことを‥‥。
これ以上多くは語りますまい。


新井さん的?  

新井さんみたいな写真が撮りたくて、
集中して撮った1枚です。
倒木から「ひょい」とはえている
ちいさなきのこがかわいらしいでしょ?
新井さんのように
「1本のきのこに1時間」
とまではいかないものの、
時間をかけて撮りました。
夢中になるなぁ! きのこ撮影。

(写真/山下哲)

いい雰囲気です。

背景のぼかし方がとてもきれいです。
きのこを中心にもってこないことで
森の奥行き感がうまく表現できてますね。

って、あ、すいません!
べつにメインカメラマンだからといって
偉そうにしてるわけじゃないんです!
ただこういう写真雑誌風のことを
書いてみたかっただけなんです・・。


ハートの葉っぱ。  

さんが、
「みてみて、ハートの葉っぱ」
とうれしそうにしてたので
きのこではないけど撮った写真です。

これ、あとで気づきました。
「広葉樹の葉っぱ」ですよね?
新井さんが、
「このあたりは針広混交林なので、
 いろんなきのこがみられるんです」
とおっしゃってたのを思い出しました。
なるほどなぁー。
トドマツという針葉樹が印象的で
それにばかり目がいってたけど
広葉樹もあったんですねー。
‥‥ああ、写真を整理しているだけで
こんなにもおもしろい!

(森でのおたのしみは
 まだまだつづきまーす)
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2010-11-22-MON
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN