みんなで行った、 阿寒きのこの森。
6 糸井・オンステージ。

7人のパーティは、引き続き森を進んでいます。
ときどき、きのこに出会いながら。
もっともっと、森の濃いところへ‥‥。
やがて彼らは、なにやらふしぎな空間、
「ステージ」のような場所にたどりつきました。

 


ざっくざくと。  

新井さんのしずかな誘導で、
一歩ずつ森を進む、われわれです。
長靴の底からどっしりと、
森そのものが伝わってくる感覚が。
やわらかくて、湿り気があって、
生命感がみなぎっていて。
ああ‥‥この時間が
いつまでも続けばいいのに。


子実体?  

まるでエメラルドのように
きれいな物体とひょっこり遭遇。
これもやっぱりきのこの一種?
‥‥子実体というのだそうです。
子実体。
調べてみました。

【子実体】
菌類の菌糸が密に集合してできた、
胞子形成のための塊状のもの。
大型のものを、きのこと呼ぶ。

なるほど。
これは小型だから
きのこと呼ばれないだけで
やはり菌類なのですね。


ロクショウグサレキン  

秋に森を歩いていると、
当たり前のように、
緑青色に染まった倒木を見かけます。
これが、
ロクショウグサレキンに侵された状態。
しばらくすると、同じ緑青色した、
小さな小さな、
らっぱのような皿のような
子実体が出現します。

何でも、ヨーロッパあたりでは、
この緑青色を活かして
染色が行われるらしく、
布がとても優しい
青緑色に染まるのだろうことは、
想像に難くありません。
ロクショウグサレキン染めTシャツ、
欲しい!

それにしても、しかし、まあ、
何というネーミングでしょうか。
「緑青」はいいとして
「腐れ菌」ですからねえ……。

他にも、
センボンクズタケ
なんて名のきのこもありますが、
誰が、何の事情で、
こういう名前をつけたのでしょう?
たまたま命名者の
虫の居所が悪かっただけですかね。

(写真/新井文彦)


ゴム?  

ここでは紹介しきれないほど次から次に、
いろいろなきのこがみつかります。

新井さんがおっしゃいました。
「ムラサキゴムタケではないかと」

ゴム‥‥。
たしかにゴムっぽい。
あと、イカっぽくないですか?
スルメイカ。

いろいろすごい。

形や質感がすごいコレですが、
色もすごいですよねー。
自然界って、ときどきびっくりする色を
まとってますよね。
この色のTシャツ着たいもんね。
「新色! ムラサキゴムタケ色」
なんて、ほとんどのひとが、
わからないけど。
かわいいなぁ。


ムラサキゴムタケ  

涼しくなってくるとよく見かけるきのこ。
茶色と紫を混ぜたような色は同じものの、
茶碗みたいだったり、波打っていたりと、
形は多種多様です。

けっこう近似種があるようで、
正確な同定は顕微鏡などを
使う必要があります。

インターネットや図鑑などを見て、
知識を増やしていくのも大切ですが、
やはり、自然の中で生きている生物は、
自然の状態で観察するのがいちばん。

いわゆるデスクワークだけではなく、
とはいえ、
フィールドワークばかりだけでもなく、
多角的にきのこを楽しみたいものです。

(写真/新井文彦)


ナイスショット!  

よ! 
いい写真を撮ったね!
きのこにびしっとピンがきている。
きれい!
きれいでかわいい!

ナイス!

ナイスヘッド!!
いいヅラしてるね、君!


ヒメスギタケ  

ヒメスギタケの幼菌は、
小さいし、傘の棘状の鱗片が、
冬虫夏草によくある
イボイボにも見えるので、
最初に見つけたときには、
すわ、冬虫夏草か!
と色めき立ってしまいました。
実際には違ったわけですが。

このヒメスギタケが生えている、
川沿いの森の大きなカツラ?の倒木は、
きのこ、粘菌好きにとっては「宝の山」。

アラゲコベニチャワンタケや、
ムキタケや、
ムラサキゴムタケや、スギタケなどなど、
たくさんの種類のきのこや、
はたまた、たくさんの粘菌が、
この倒木に、現れては消え、
生まれては死んでいきます。

そう、冬虫夏草の、
サビイロクビオレタケも、
毎年、この倒木で、
いくつも見つかるので、
川沿いの森へ出かけたときには、
要チェックです。

ちなみに、ヒメスギタケを取り囲む、
白い物体は、粘菌のシロウツボホコリです。

(写真/新井文彦)




森の中の高低。  

歩いている場所は、
川沿いの森なので、
歩いてみると「山歩き」とまでは
行かないけれども、
それなりの高低差があります。

雨がふった後なので、
そこここにツルツルポイントがあり、
しかも、歩き慣れていない長靴なので、
よそ見をしていると、
あぶない目にもあいます。

新井さん曰く、
「ここは、まだいいほうですよ。
 僕らがきのこをさがすときは、
 時に『登山』です。
 そういうきのこ狩りでしたら、
 体を鍛えておかないといけませんね。」
と。

どんなハードなきのこ狩りなんでしょうか‥‥。
現在のワタクシどもには、
このくらいの高低差で充分満喫です!




ふと、見上げたり。  

そういえば地面ばかりだな、
とおもって、
ふと上をみあげてみました。

阿寒の森は
このくらい樹木の葉っぱが
うっそうとしています。

しかし、長々と眺めていると
キャラバンが先にすすんでしまって
孤独になるので、要注意。

ああ〜、ゆーなちゃんまって〜〜!




謎の棒。  

訊いても彼女は教えてくれない。
「ふふふ」と意味ありげに微笑むだけ。

木の枝に引っかかって危ないぞ。

なんだろう、あれは。
彼女はなにを「仕込んで」きたのか?

ふふふ。

‥‥にやり。




無味。  

ツガサルノコシカケの、
とくに若い個体は
内側から水分が滲み出すのだそうです。
「その理由はわかんないんですよ」
と新井さんはおっしゃいます。
イトイさんが、
「山下さんがなめてみればいいと思う」
と言うので、せっかくですし、なめました。
「‥‥無味です」
と報告すれば、「なあんだ」という反応。
か、からだの張りがいがない!

遠慮。

サルノコシカケに水滴、
結局わたしは、慎重派なので、
最後までなめることはありませんでした。

あとで、写真をみると、
なめてみればネタになったのに、
と思うことがありますね。

「サルノコシカケからさー、
 水分がでてくるらしいんだよ、
 で、それをなめてみたんだけどね‥‥。」
という話をどこかで
できるじゃないですか。


水。  

この日は湿度がとても高くて、
そして、すでに涼しい気候でしたが、
森の中をあるいていると
やっぱり汗をかきます。

サルノコシカケから出る水分を
ぺろぺろ舐めるのは
効率がよくないし、
ともすると危険だったりするので、
人間は、ふつうに水を持っていくと
いいと思いました。

さんは
いままさに、リュックにはいっている
水をだそうとしているところです。
それを見て自分も水を飲んだようで、
水を飲んでいるシーンが
写っていないのが悔やまれます。
悔やまれるっていうか、
「取材」する人間としては
うっかりがすぎました!






すばらしいステージ。  

突然目の前に現れた
倒木のカーテン。

なんだこりゃ!
全員、そう思ったと思います。
まるで舞台装置のような、
なんだろう、この胸騒ぎ。

思わずが上に駆け上がります。
駆け上がる背中は、ちょっと
おさるさんのようでもあります。
ということは、本人には伝えていません。

飛び込んでいく姿勢。

気になるものを見つけたら
すかさず飛び込む。
おさ・・、いや、猿飛佐助のように!

森に癒されすぎて、
そういう姿勢忘れてかけてました。
これは仕事だ!
自分はメインキャメラマンだ!

早かった。

このときのは、
ほんとに早かった!
ステージのようだ、と思うやいなや、
ひょいひょいひょい、と。
「登らないわけにはいかない衝動」が
イトイさんに去来したのだと思います。
とにかく、この場所の迫力はすごかった。






そしてオンステージ。  

そして登りきったところで、
ポーーーーーーズ。
何イメージのポーズなんでしょうか。
「みなさん、僕のステージへ
 ようこそおいでくださいました」的な?
「みなさま、わたくしの右手に見えますのが、
 森です。
 そして、左側に見えますのが、
 森です。
 こんばんわ、森進一です。
 おふくろぉさぁぁぁん〜〜〜」的な?

ほんと、この森は
どこを切り取っても、絵になります。
迫力満点。

うれしい顔。

このときのイトイさんの
うれしそうな顔、きっと忘れないなあ。
で、それをみているぼくらも
かなりうれしそうだったはず。
それはたぶん、子どもの顔。


ぼくらのことも。  

あはは、
イトイさんもぼくらのことを撮ってる。
ぼくらはどんなふうに写っているんだろう?


ステージから。  

この写真はさんが撮ったもの。
けっこう高いですね。

あれ?
さっき合流したばかりの安井稜さんが
見当たりません。
たぶん、きのこでも探しに
行ってるんでしょうねー。

新鮮。

さんの写真は、
「気まぐれカメら」で
みることができますが、
それにアップされていない写真は
ほとんどみたことがありませんでした。
今回、「阿寒で取った写真をください。」
といって、まとめてもらったので、
なんか新鮮でした。

へー、こういうふうにわれわれは
うつっていたのね〜。


(適度に自由なぼくたちの探検は
 まだまだつづきます!)
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2010-11-23-TUE
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN