視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
こんなに五感をはたらかせたのは、
5人の「森歩き人」にとって実に久しぶり。
感じるたびに、どんどん気持ちが豊かになります。
森のすごみ。
シカの白骨をみつけました。
こういうのをみると、
「森はただやさしいだけじゃない」
ということを思います。
力尽きたシカはこの場所で倒れて
白骨になったんですよね‥‥。
木々は常に過酷な環境の中にあって、
油断をすれば菌類に分解されます。
マイナス30度の冬になれば
木の中の水分が凍り、
ばーんと大木をはじけさせる
「凍裂(とうれつ)」という
現象が起きるとか。
ずーっと昔から続いていることです。
すごいなあ‥‥。
(3枚目の写真はシカの歯です)
リアルだなあ。
骸骨は、標本以外であまり目にすることが
あたりまえだけど無いので、
ここで本物をみたときに、
自分がかなり引いているなあ、
と、感じました。
ちょっとした恐怖があります。
正直なところ、
骨には触りたくなかったです。
そういうものから遠くはなれて、
「よくわからないもの」として
こころの奥にしまってあったんだと
思います。
耐えられず‥‥。
過酷な環境に耐えられない木は、
こうしてばったりと倒れるのでしょう。
森のいたるところでみられた景色です。
根こそぎ倒れているこの木は、
倒れてから
そんなに時間が経ってない印象。
なのに、すかさず、
根の部分には他の植物が。
表面にはこんな苔が。
壮絶な美しさです。
まるで
ちいさな街のような。
むむ、僕はやっぱり苔が気になります。
苔を見ているというよりは
自分がガリバーになって
ちいさな街を眺めているような気分。
ただ樹木に感動。
写真のフォルダをみると、
ただ、感動したままに写真を
撮影していたことがよくわかりました。
すらりとした樹の幹をみて、
おお、すげえ!
パシャ。
倒れている樹をみて、
おお、すげえ!
パシャ。
倒れている樹の根っこをみて
おお、すげえ!
パシャ。
倒木をみてびっくりしている人をみて
おお、すげえ!
パシャ。
釣り人、
川の音。
川の中に立つ、
フライフィッシャーマン。
ああ‥‥うらやましい‥‥。
しばしこの光景を
われわれは黙ってみつめました。
川の音が、ざあざあと。
この釣り人も、
五感を研ぎ澄まして
川と会話をしているのでしょうね‥‥。
うっとり。
リバーランズスルーイット。
じ〜ん。
の
ナイスフォト出ました!
最高!!
釣り人のきもち。
きのこチームには、
さんと
さんの
ふたりが「釣り人」です。
彼らが、釣りをしている人をみる
まなざしが熱かった。
ヨダレをたらさんばかりの
表情をしてたのが
印象的でした。
どんどんみつかる
きのこたち。
視覚は相変わらず、きのこ目線。
つまり基本的に下を向いています。
みつかる、みつかる、きのこたち。
ひゃあ、これはまた‥‥。
お皿を何枚もかさねたようなきのこが。
回転寿司だったら
たいへんなお会計になりそう!
のちに代々木公園で。
阿寒の森で、「きのこ目」を鍛えたのちに
秋の代々木公園をぶらぶらしたときに、
例年よりもきのこが
よく見つかるようになりました。
このきのこも、
よく似たものを代々木公園で
みつけました。
特別な経験が
日常に役立つのは本当に嬉しかった!
カワラタケ
瓦のように重なり合って生えるから、
カワラタケ。
そのまんまのネーミングですね。
森でも、街でも、広葉樹、
針葉樹を問わず、
枯木や切株や倒木などで
頻繁に発生しています。
一見地味ですが、よくよく見ると、
色はなかなかバリエーションに
富んでいて、
紺だったり灰色だったり
黒だったりする地に、
赤や白や青などの薄いラインが
同心円状に入ります。
モノクロのような
カラーのような色合いや、
重なり具合でつくりだす造形の妙が
たまりません。
玄人受けするきのこだと言えるでしょう。
この、カワラタケ、
腫瘍に効くなどの薬効がある、
という説もありますが、
いかんせん、シロウトは
気軽に手を出さない方が、
まあ、無難でしょうね。
(写真/新井文彦)
触覚。
「これはわりと有名なやつです」
と新井さんが教えてくれたのは
ホコリタケというきのこでした。
はい、テレビでみたことあります。
でもほんものは、はじめてです。
触ってみましょう。
ああ‥‥ふかふかだぁ‥‥。
わ、中身はこんな‥‥
胞子ですよね? これ。
ひゃー。
こいつ知ってる!
奥多摩で、足下に丸い
かわいらしいものが落ちていたので、
しゃがんで、指先でつまんでみたら、
白い煙が、プワッ! って出てきたので、
もうそりゃあびっくりしてしまい、
「うぎゃあ!」と腰を抜かしたのでした。
もうびっくりして、
何なのか全然わからなかったけど、
きのこだったのか。
わかっててやれば、とっても
気持ちいいです。プワッ! って。
プワッ!を動画で。
さわるとどんどん胞子が出てきます。
動画をご覧いただくとわかるんですが、
たまたま居合わせた
マギー司郎さんらしき人によると
サービスでいつもよりたくさん
プワッとしてくれたみたいでした。
ホコリタケ
きのこが胞子を飛ばす方法はたくさん。
一般的なのは、
ヒダや管孔から下に落とすこと。
ヒトヨタケのように液状にして落とす、
なんて方法もありますね。
このきのこは、成熟してくると、
上部に穴ができ、
動物が踏んだり、
雨が当たったりする刺激により、
上に向けて胞子を「噴射」します。
それゆえ、ホコリタケ、
の名がついています。
ちなみに、ホコリタケは
土に直接生えるものを
タヌキノチャブクロ、
倒木など樹上から生えるのを
キツネノチャブクロ、
と呼び分けることもあるのですが、
性質はほとんど同じみたいです。
幼菌は食用になります。
鍋料理などで食べる場合、
味は、
まあ温和で可も不可もないのですが、
特筆すべきは、その食感。
咬んだ最初は、ふんわりふわふわ、
そのあと、しゃきしゃき、と、
二つの異なった感じが味わえるんです。
機会があればお試しあれ。
(写真/新井文彦)
嗅覚全開!
が、ホコリタケの匂いを!
嗅いでる、真顔で嗅いでる‥‥。
持参したちいさなカゴを
アゴとヒザではさんで‥‥器用だね!
で? どんな匂い?
「なんか、びみょー」
微妙シリーズ。
もっとちゃんとしたリアクションを
取りたかったんだけど、
どうも微妙でねぇ。
すみませんねぇ。
こちらも嗅覚。
「うわあぁ‥‥」
という
の声。
なにごとですか?と訊ねれば、
「松の木の葉っぱをもむと
すっごいいい匂いがするんだよ」と。
どれどれ‥‥‥‥
うわあぁ‥‥ほんとだ、いい匂い!
トドマツの匂いって
ふつうの松と違うんですね。
まさに、フィトンチッド!
月並みな言い方ですが、
この香りの「癒し」効果は
すばらしいと思いました。
樹液も。
トドマツの樹液。
いわゆる松ヤニというやつでしょうか。
自分が知っている松ヤニの匂いは、
ちょっと嫌なものだったのに、
これはぜんぜん嫌じゃない。
ちょっとつまんで軍手にくっつけ
しばらく歩きながら嗅ぎ続けましたよ。
ええにおい。
これも、いいにおいでした。
においはいいけど、
そうとうペトペトして、
ぬぐえないペトペトが
一日、指先に残っていました。
そこで学習して、
近くの葉っぱで樹液を包んで、
その葉っぱをモバイルする。
という作戦を取ったら、いい感じでした。
五感で感じろ!
部屋でもくんくん。
このモバイル樹液は、
ホテルの部屋に帰ってからも、
森の気配が感じたくて、
なん回か、
取り出してくんくんしました。
いいにお〜い。
でっかい
サルノコシカケ!
みたいですね。
もちろん違います。
匂いを嗅ぐ、ゆーないとさんです。
へェ〜。
こんなふうに見えてたんですね。
こりゃあ、きれいな腰掛けだわ。
チョイト、そこのおさるさん、
あたいに腰かけていかないかい?
誘いてぇ〜〜〜〜〜!
すごっ!
わ! なんじゃこりゃ!
こんなのあったっけ?
おぼえてないわー。
みんながそれぞれに
写真を撮ってたからねー。
しかしすごいなー。
「不思議の国のアリス」の
あの有名な穴に落っこちて
途中でつっかえている
ゆーないとさんの頭のようだ。
キクラゲ。
また俺かい!
つっかえて、そうとう暴れて
ボロボロになってますね〜わたし。
いやいや、なんか、
キクラゲ的だと思いませんか?
黒くない、キクラゲ。
悪くなさそうです。
「食不適」だけど‥‥。
ミヤマトンビマイ
トドマツなどの
針葉樹生木の地際に発生。
かなり大型のきのこです。
生木に発生して
腐らせるタイプのきのこは、
材を褐色に変色させる褐色腐朽菌、
材を白くする白色腐朽菌などがあり、
ミヤマトンビマイは、後者。
針葉樹に発生する
ミヤマトンビマイと、
広葉樹に発生する
オオミヤマトンビマイと、
一応の区別がされているようですが、
実際には、
かなり似通っているみたいで、
専門家の間で、別種にするかどうか、
議論が分かれているようです。
針葉樹には
抗菌性物質が含まれるために、
発生するきのこの種類が、
広葉樹に比べて
あまり多くないのだとか。
(写真/新井文彦)
味覚。
みんなが見守るなか、
きれいな赤い実を
ポイッと口に入れた
さん。
‥‥どんな味?
「‥‥‥‥‥‥」
おいしいの? そうでもないの?
「‥‥‥‥‥‥」
‥‥向こうに行っちゃったよ。
ノーリアクション!
まさかの、ノーリアクション!
たびたび。
ほんとすみません。
解説させてください。
このときの気持ちを。
どうしてこんな微妙なリアクションに
なってしまったかということを。
なんかね、味がなかったの。
赤くて甘いかわいい実だと思って
口にしてみたら、ぜんぜんでした。
どうしても、
強い味を予想しちゃうんですね。
癖でね。
「微妙リアクションシリーズ」、
再来御免。
出血?!
一瞬、指から血が流れているようですが、
よーく写真をご覧ください。
これ、きのこなんです。
インパクト大でしたー、これは。
イカす!
これ、好き!
キノコなのに、ナイフで切ったら、
出血(風)って!
こんな静かな森の中で、
出血(風)ですよ?
まるで、サスペンス映画みたいで、
けっこう興奮だったわ。
メインカメラマンは見た!
このサスペンスが行われていたとき、
僕はすこし遠くにいたんですが、
みんなの騒ぎを聞きつけて現場に急行!
小走りで近よって撮影したので、
はからずも
『ブレアウィッチプロジェクト』
のような映像に。
映像酔いしやすい方は
ちいさな画面でどうぞ。
チシオタケ
きのこに付けられた名前は、
本当に、そのまんま、
というものが多いですが、
このチシオタケも例外ではありません。
傘を傷つけてみれば、一目瞭然。
赤い血のような
液体がにじみだしてきます。
この液体は、指についたりすると、
いつまでも落ちないのですが、
水で洗い流すと、
ささっときれいになります。
盛期を過ぎたチシオタケは、
タケハリカビというカビに
寄生されることも多く、
まるで傘から細長い毛が生えたように。
チシオタケにしては災難でしょうが、
それはそれで、小さい哺乳類のような、
愛らしい姿に見えなくもありません。
(写真/新井文彦)
鹿だけど。
森では、ほんとうにこういうことが
起こるんですね。
さっきの長い立派な骨にも
びっくりしたけど、
まさか、こんなに立派な
シャレコウベに出会えるなんて。
これを見て
が
「ブイヨンぽいよなぁ」
とつぶやいていました。
たしかに。
とても、かわいらしいですよね。
家に飾りたいくらい。(悪趣味?)
これも壮絶。
ここでもしばし
足が止まりましたよね。
なんだかみんな、
ちょっと静かになったりして。
それぞれに思うことがあったのでしょう。
ちなみに2枚目の写真は社長の撮影です。
(もうだいぶ、歩きました。
あしたにつづきます!)
2010-11-24-WED
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN