みんなで行った、 阿寒きのこの森。

気がつけば原生林。

「阿寒まで来て、きのこに会えなかったらどうしよう?」
そんなわれわれの当初の不安は、
森に入った途端にすっかり消え去っていました。
みつかること、みつかること! 次々と!
つつっと視線を下に向け、
「きのこの目線」でみわたせば、
あそこにもここにも、かわいいのがひょこひょこと!

新井さんの説明が、さりげなくてまたいいんですよ〜。

 


真剣だと下向き。  

さんが撮ったわれわれの写真。

じつに真剣に、
きのこの写真を撮っています。

やっぱりどうしても、
下を向いちゃうね!
きのこを探してるからね。
でも、ときどきは顔をあげて、
おもしろい顔もみせて!




わはははは!  

そうそう、そんな感じで!
たのもしいぞ、

木と木のあいだにはえる
ボーットシタダケ(架空)。
おもしろいきのこだが猛毒(架空)。


見て見て!  

ときどき木に、
青とか黄色とかの
リボンが巻かれています。
これは、道なき道をいって、
帰り道が
わからなくなってしまわないように
目印として、つけていくんですって。

これこそ、本物の森。

見てなかったなあ。
これ。

森のなかでは、
目があっちこっちをみているし、
見たいものがいっぱいあるので、
一緒にいっているのに
みているものがまるで違いますね。
帰ってきてから、みんなの写真を
整理していたときに
映っているものがばらばらで
本当に面白かった。

私は、この目印のこと、
さっぱり覚えてなかったので、
きっと、そのときに何かちがうものに
夢中になっていたと推測されます。






うわあ、ぬめぬめ!  

ぬっるぬるの、きのこを発見。
みんな、
たまらないきもちになっています。
なんて言うんでしょう、この‥‥
わくわくするきもちと
ちょっと気味わるく思うきもちが
うずまく心中は‥‥。

新井さんが、
「森のきのこをたのしむきもち」を
文章にしてくれました。
まさに、
こんな感じ↓なんですよねー。


ヌメリツバタケ  

きのこに興味を持つと、森へ行っても、
ついつい、下ばかり見てしまいます。

落ち着きなく目をきょろきょろさせ、
あちらで背伸びをし、
こちらでしゃがみ込み、
四つん這いになって
じっくりと倒木を調べ、
「ああ」だの「うう」だの、
感嘆したりうめいたり……。
街中では
不審者だと思われる行動をおこしても、
森では誰にも
咎められることはありませんから!

あ、ほら、あそこ。
ミズナラの立ち木に、
ヌメリツバタケを発見。
近づいて、
そのぬるぬるした傘を触ってみるもよし、
半透明の白い傘越しに
森の光を見るもよし。
また、木から3歩下がって
風景の一部として見てみると、
それまで聞こえなかった
川のせせらぎが……。

きのこを探すという行為は、
森を楽しむことでもあります。
目で、耳で、鼻で、口で、手肌で、
要は、体全体、五感をフル活用して、
森の隅々まで楽しんじゃいましょう。

(写真/新井文彦)


きのこのディテール。  

きのこを見つけたときに、
なにが自分を惹きつけるかって、
「きのこの裏側」だということが
だんだんわかってきました。

このきのこは、
水分を限界まで含み、
「じゃぶじゃぶ」している状態。

触ってみると、しっとりしていて、
繊細なひだがほろほろと崩れます。




つぶつぶが
びっしり!
 

この黄色いつぶつぶ、
これもきのこなんですか?!
へえええーーー。

もしも‥‥。

もしこれが、
虫関連(卵とか)だったら、
本当に3メートルくらい
飛び退る可能性があると思うんですが、
きのこだ、と説明されると
寄っていくことができます。
そうはいっても、
おっかなびっくりではあります。

びっくり。
これ。

草間弥生さんも、びっくりですよ、
こりゃ。
きのこだと、触れちゃうのが、
不思議ね。


モエギビョウタケ  

なかなかマニアックなきのこ。
秋に阿寒の森を歩くと、
あちこちの倒木が、
黄色く染まっているかのように
見えたりします。

その黄色の正体が、きのこであることは、
しゃがんで、
目を近づけてみれば、一目瞭然。
倒木に黄色い鋲を刺したがごとく、
傘の直径が1〜3ミリくらいの、
本当に小さいきのこが
びっしりついています。

ちなみに、白状しますと、ぼくは、
モエギビョウタケとビョウタケの
区別がつきません。

じゃあ、なぜ、このきのこの名前を、
モエギビョウタケにしているかというと、
信頼している
「北海道のキノコ」という図鑑に、
モエギビョウタケ、
として載っているから。
あしからず。

(写真/新井文彦)


これぞきのこ。  

この「きのこ」こそが、
きのこである!
と、心から思った。
自分がきのこだとおもって
きのこを描いたときに、
色はともかくとして、
形はこれを描くなあとおもった。
色をつけると、
赤くて、白い点々をつけてしまうけど。

「きのこ狩り!」と叫びそうになった。


クサイロハツ  

多種多様なきのこの中で、
クサイロハツは、
とりたてて
派手な色をしているわけでもないし、
複雑怪奇な形をしているわけでもないし、
色も形も大きさも比較的
当たり障りのない、
「ジミ」な存在です。

でも、この緑色のきのこを
じっくり見ていると、
色々なことを想像してしまうわけです。

紅葉前の
阿寒の森をイメージさせる色は、緑。
それは、まさに、
この「草色」でもあるわけで、
クサイロハツは、自らの生命をもって、
この阿寒の自然の色を
表現しているわけです。

色というガイネンが
先にあるのではなく、まず、
色を持った命や物質が
自然界にあるわけで、
われわれは、それらを見て、色だけに、
色々と感動するんですよね。
自然は偉大です。

(写真/新井文彦)






これこそがきのこ!  

ぼくの場合は、
「これこそが、THEきのこ」
だと思ったかもしれない。
この肉厚な感じが、
いかにも絵本のなかに出てくる
定番のきのこのようで。

それにしても、ねえ‥‥
こんなすごいのが
ぴょこぴょこあるんですよ?
わくわくしっぱなし!

ふかあっ。

きのこの傘の裏側を触ると
色がかわりますよ、と教えてもらって、
触ってみる。
色が変わることよりも、
「ふかあっ」としていて、
スポンジみたいなんだけど、
形が戻らないという感触が
「いやあっ!」となりました。


オオダイアシベニイグチ  

さまざまな苔や、ゴゼンタチバナなど、
林床を彩る緑の間から顔を出す、
真っ赤なオオダイアシベニイグチ。
緑と赤のコントラストが実に見事です。

イグチの仲間は、
傘の裏が、ひだではなく、
管孔状、つまり、
スポンジみたいになっているのが特徴。

試しに、このきのこを手に取って、
傘の裏に、
ふぎゅっと指を押し付けてみましょう。
ふかふかで、ちょっと気持ちがいい……。
そして、
あら不思議、黄色が、
さっと青に早変わり。
指でつかんでいた茎の赤い部分も
青くなります。
空気に触れると
青変する性質があるのです。

高さ10センチくらいに成長するので、
きのことしては大きな部類に入るし、
傘が赤、傘裏が黄色、茎が赤と、
配色も実に派手派手。
スターの要素、十分ですねえ。

(写真/新井文彦)


みてみたい。  

イトイさんが撮ったサルノコシカケ。

撮りつつ言いました。

「サルが腰かけているところを
 一度でいいからみてみたい」

それはみてみたい!






空席だらけ。  

いたるところに、
腰かけがありました。
すべて空席(あたりまえ)。

高価な漢方薬になる
種類もあるそうですが、
これらは前にご紹介した
「ツガサルノコシカケ」。
漢方とか食用にはならないそうです。

固かった。

サルノコシカケの手触りは、
きのこらしからぬ、
がっちり固いものでした。

きのこの形と状態は
多様すぎ!




このきのこは?  

きのこをみつけるたびに、
その名前や特徴を
新井さんにうかがってたのですが、
あまりにたくさんききすぎて‥‥。

新井さん、
このきのこ、
なんていう名前でしたっけ?


タマウラベニタケ  

タマウラベニタケの近くには、しばしば、
同じ色をした
真ん丸い団子のような塊ができます。

その塊は、
ナラタケに寄生したタマウラベニタケ、
ナラタケに寄生されたタマウラベニタケ、
と、二つの
まったく異なった説があるんですね。

色や触った感じからすると、
タマウラベニタケみたいなので、
素人考えでは、その塊は、
ナラタケに寄生された
タマウラベニタケではないか、
と、思ったりもします。

可食のきのこですが、
この、丸い団子状のものも
食べられるのでしょうか?
あんまり食べようとは思わないのですが、
ちょっとだけ、気になります。

(写真/新井文彦)




下ばかりみてたから。  

きのこを探して
下ばかりみてたから、
新井さんに言われるまで
木々に穿たれた無数の穴に
気づかずにいました。
よくよくみれば‥‥すごい。
マシンガンで撃たれたみたい。
キツツキのしわざだとか。
あの大きな「うろ」には、
モモンガあたりが棲んでそう。
キツツキが開けた穴。  

キツツキっていうと
山奥でひっそりと木をつつきながら
つつましやかに暮らしているんだと
勝手にイメージしていましたが、
まさかこんなにハードボイルドに
木をつついているとは。。

手ぶれなどお見苦しいところが
あるかと思いますが、
キツツキの木と、
とくにカメラを意識することなく
ふつうに森をたのしんでいる人々を
動画でどうぞ。

大きいサイズの動画はこちら






急に広島弁。  

「また川じゃぁ。
 森もええけど川もええのぅ。」と
急に広島弁になったさん。

さっきまで東北弁だったのに
いったいどうしたんですか?
と聞くと、
「わしは東北弁も好きじゃけど、
 広島弁も好きなんじゃぁ。」
とのこと。

おお!広島出身のわしとしては
ぶちうれしいわぁ。

そうそう!

なったなった、広島弁に。
「こういう、ええ場所があるんよ。
 のう? 広島にもないような場所が」
ってね。

ちなみにここは「阿寒川」の源流。
阿寒湖からの水が
流れ出しているのだそうです。
様々な方言で
こころをやわらかくしつつ‥‥

(あしたの更新につづきまーす!)
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2010-11-18-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN