「きのこ」のことが気になりはじめて、 古くは「田島貴男のオレのニュース」。
そんななか、読者の新井文彦さんというかたから 「阿寒湖の森のきのこがすごいんです。 ご案内に誘われて、HPをたずねてみたら‥‥。
それはそれは美しくもかわいらしい、 でも‥‥阿寒の森へすぐには行けないけれど、
昨年の11月下旬、新井さんに遊びに来ていただきました。 来週からはじまる 左が新井文彦さん。 |
─── | 新井さん、 きょうはわざわざありがとうございます。 |
新井 | こちらこそ、ありがとうございます。 |
糸井 | はじめまして、よろしくお願いします。 さっそくですけど、 阿寒のあの写真が、もうすばらしくて。 |
新井 | ありがとうございます。 |
─── | 新井さんはどうやって、 あの阿寒の森をみつけたんですか? |
新井 | もともとは東京に10年くらい住んでたんですよ。 たまたま帯広にある新聞社の 中途採用試験を受けたら、 入れてもらえることになったので、 北海道へ住むことに。 そこで雇われのコピーライターをしてたんです。 |
糸井 | コピーライターを。 |
新井 | で、ある日、日高山脈のガイドをする知り合いが、 「阿寒湖にネイチャーセンターっていうのを 作ることにしたから、お前も金を出せ」と。 |
糸井 | 出資しろと(笑)。 |
新井 | 「出資しろ」という話で、まあ、お金を出して。 行ってみたら、すごくよかったんです。 |
糸井 | きのこが。 |
新井 | きのこもそうですけど、 川もいいし、湖もいいし、森もいい。 もう、たまらなかった。 |
糸井 | へええー。 |
新井 | それまでは会社で1日に16時間くらい コピーを書いてたっていうのもありまして。 |
糸井 | それは‥‥残念な時間でしたね(笑)。 |
一同 | (笑) |
─── | 糸井さんはコピーから釣りに行って、 新井さんはコピーからきのこに。 |
糸井 | そうだね、ほんとだ。 しかも群馬出身なんですよね。 |
新井 | はい。 |
糸井 | 焼きまんじゅう同士ですよ。 |
新井 | 焼きまんじゅう(笑)。 |
─── | 現在はずっと阿寒湖で、きのこを探して? |
新井 | そうですね、ほとんど毎日、 きのこを求めて山の中へ入ってます。 でも、ここ2年くらいは夏だけですね。 夏に阿寒でガイドの仕事をして、 冬になると内地のほうに。 |
糸井 | じゃあ、いまのお仕事は、ガイドと写真ですか。 |
新井 | いや、写真はほんとうにまだまだで。 文章、ライターが主なんです。 |
糸井 | そうですか。 でも写真、すごくいいですよ。 |
新井 | ありがとうございます。 完全に独学です。 |
糸井 | だからいいのかな。 |
新井 | 下手の横好きじゃないですけど、 とにかくきのこが好きなんで。 そのきのこをきれいに写してあげたい っていうだけなんです。 |
糸井 | そういうことですよね。 それがよかったんでしょうね。 |
─── | きのこ、お好きなんですね。 |
新井 | なんて言うんでしょう‥‥ きのこって、取るときの触感がたのしいんですよ。 |
糸井 | ああー。 |
─── | 感触ですか。 |
新井 | マツタケなんかもそうなんですけど、 すごい素直にこう、ちょっとこう、 ずらすと、スポンって抜けるんですよ。 |
─── | へぇー。 |
新井 | その感触がすごく気持ちいい。 味とかなんとかよりも、もうこのスポンが。 |
糸井 | それはあれですね、釣りと同じですね。 釣りのなにがおもしろいって、 これだろうなとぼくが思ったのは、 誰もいない所でひとりで釣りしてるときに、 その日、最初に自分のルアーを魚が、 こう、プルッて‥‥。 |
新井 | あー、なんかわかります。 |
糸井 | このやろう!って(笑)。 「おれとおまえ、ここにいたんだ」みたいな。 |
新井 | たぶん、本能ですよね。 |
糸井 | 本能ですねー。 動物じゃないこのきのこも、 同じものを持ってるんですよね。 「おまえ、ここにいたか」っていう。 近い気がするなぁ、釣りに。 |
─── | きのこを探すときは、 やっぱりこう、森の深くに入るんでしょうか。 |
新井 | そういう場所もありますけど、 阿寒湖って国道からすこし入ったところで もう原生林だったりするんですよ。 ですからそういう意味では らくに入っていけるんです。 |
─── | へえー、それはちょっと意外な。 |
新井 | すぐに原生林です。 阿寒湖の周りは「針広混交林」といって、 針葉樹と広葉樹が混じっている森もあるんですね。 で、きのこは大まかに言うと 針葉樹に出るタイプと広葉樹に出るタイプに 分けられるんです。 つまり、そこなら 両方のタイプのきのこが見られる。 |
─── | お得ですね。 |
新井 | ぼくは阿寒のことしか言えないんですけど、 理想的なきのこの森だと思います。 |
糸井 | それで、毎日森に入りたくなっちゃう。 |
新井 | そうですね。 ネイチャーガイドの仕事で しょっちゅう森に入るんですが、 その合間にプライベートでまた森に行くんです。 |
糸井 | 釣りのガイドさんが、 休みの日にも釣りをしてるような(笑)。 |
新井 | ガイドをしてるときに限って、 いいきのこがあるんですよ。 |
一同 | (笑) |
新井 | さすがにお客さんを連れてて、 「すみません写真撮るから」って、 1時間は待たせられないじゃないですか。 だからプライベートで行って‥‥。 |
糸井 | 1時間? |
新井 | きのこひとつ撮るのにかかるんです、そのくらい。 やっぱりモデルさんなんで。 |
糸井 | はあー(笑)。 |
新井 | いろんな角度から眺めてみたり、 ちょっとメイクを。 |
─── | メイクですか。 |
新井 | 虫とか葉っぱとかいろいろついてるので、 こういう道具できれいにしてあげてから ちゃんと撮るようにしてるんです。 |
糸井 | そうですかー。 |
新井 | 「右斜め下から撮るとかわいいね」 とか、声かけながら撮るわけですよ(笑)。 |
糸井 | いいですねぇ(笑)。 |
新井 | 「あ、いいね!」っていう角度を見つけるのに、 けっこう時間がかかるんです。 |
糸井 | それがあの写真なんだ、なるほどなぁ‥‥。 そのコミュニケーションはやっぱり、 「おれが見つけたおまえ」っていう関係ですよね。 |
新井 | そうですね。 |
糸井 | だから最初に新井さんのページで、 「この写真はなに?!」ってびっくりしたときも、 ぼくはそこに引っ張られたんでしょうね。 |
─── | 「このページの写真、かっこいいんだよ」 って言ってました、糸井さん。 |
糸井 | おれ、そういうふうに言ってた? そう、かっこいい。 かっこいいんですよ。 |
阿寒の森のドクベニタケ(新井文彦さん撮影) (プロローグの後編に続きます) |
2010-11-11-THU | |||
※ご注意 天然のきのこを採集し、自分の判断だけで それを食べることは決してしないでください。 きのこの中には強い毒性を持つものが多数あります。 食べるきのこは、必ず専門家と一緒に採集してください。 また、きのこ狩りなど山や森に出かけるときには、 土地の所有者を確認し、 必要な場合は許可を取るようにしてください。 |
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