みんなで行った、 阿寒きのこの森。
15 森の終わり。

阿寒の森を歩くのも、そろそろ終盤です。
あんなにたのしみにしていたことが
もうすぐ終わるのは、ちょっとさみしい。
でも、その先にもうひとつ
大きなたのしみがあるので、けっこう大丈夫!
最後にもうちょい、きのこがみつかるといいなー。

 






さらばオンネトー。  

「オンネトー」
「またなー、オンネトー」
「アリガトー、オンネトー」

さっきみたときとは
また違った水の色になっている
秘密の湖に別れを告げます。

車を止めてある場所に向かって
森を戻りましょう。
また、きのこを探しながら。




帰りたくないタイム。  

子どもなら、
「帰りたくない〜」と
ダダをこねるタイミングです。
ぼくらはおとななので
そうはなりませんでした。
でも、この時間帯に写された写真には
どことなく「帰りたくないムード」が
写り込んでいる気がしました。




ベンチも朽ち果てる。  

こちら、オンネトーの湖畔にあった
ベンチでございます。
木製のベンチなのでございます。

ベンチなのか倒木なのか、
きのこは判断をしません。
どうやら、倒木として菌糸さんの
すみかになったようです。

内部が例の「フカフカ」の
状態になっていました。

雨のベンチ。

今回勉強になったことのひとつに、
「ベンチが濡れていても
 カッパを着てれば座れる」
というのがあります。

そんな当たり前のことに
途中で気づいて
みんなでベンチやら切り株やらに
座りまくるという時間が
この少し前にあったことを
ご報告しておきます。




群生!  

オンネトーに近い木の切り株のそばに、
ビロードのようなコケが広がっていました。
その上に、ぽこぽこと
ホコリタケが‥‥。
あ、ぽこぽこと、
というかわいいものではありませんでした。
群生しています。

正直いうと、じっくり見つめていると
急に「きもちわるっ!」という
感情が沸き起こってきました。

ひとつだとカワイイけど、
いっぱいあると
不気味になる典型的な物体、
それがきのこです。

熱心さ。

モギちゃんはずーっと熱心だった。
きのこに対して真面目だった。
有毒無毒、わけへだてなく。
むしろ、有毒に肩入れぎみで。
最後の最後まで、
無言で探し続けてたのは
モギちゃんだったねえ。


いやあっ!  

ちょっとちょっと
これ!

この不定形な物体。
そりゃ、もちろん
きのこの一種かと思いますが、
ぶ・き・み。
しかも、かなりおっきいのです。
(赤子の頭くらいあります。)

思うに、

きのこきのこしい形

ころころした形

茶碗的なやつ

不定形ででっかいやつ

虫がバンドルしているもの

この順番で
下にいくほどコワイと思います。


殺しの三兄弟。  

ちょっと森の奥のほうに、
ドクツルタケが3本ばかり
集中して生えていました。
これで何人かの致死量なのですね。

ドクツルタケの触り心地は
とてもよかったです。
ひんやりした空気にひやされて、
さらに雨にぬれていて、
スポンジのように水をふくんで
しっとりとしているのです。

いつまでも、いつまでも
触っていたいような気分に
させられます。
たぶん、脳みそに入った
「毒キノコ」情報が、
おかしな気持ちに
させるんだとおもいます。
バーチャル毒キノコ中毒のようです。

うれしそう。

「殺しの三兄弟」というネーミングが
わたしはとても気に入ったのですが、
もぎさんに関しても、
かなりお気にめしていると思われます。
だって、ちょっと巻き舌になってるもん。
「こるぉしの さんきょうだい」
って。




体当たり。
 

有毒無毒、わけへだてなく。
むしろ、有毒に肩入れぎみな
モギさんの熱心さが伝わる写真。

そんなとこに潜らいでも、
というようなところにも
果敢に挑んでました。

さすがです!




いったん、広場にもどります。  

キャンプ場からあるいて
しばらくすると
いったん森がひらけて、
雄阿寒岳の登山口に出ました。

どんどん、
森の終わる予感がします。

おわっちゃうのか〜〜。
森。

登山口。

僕は大学時代、富士山の山小屋で
アルバイトしてたせいで
「登山口」という言葉を見ると
燃えます。

みんなは感慨深くおわりを
思っていたみたいですが、
僕はこのとき「今から登れ!」と
言われたら登れるかどうかを
わりと真剣に考えてました・・。

安心しろ!

たぐちゃん、そんなこと考えてたんですか。
だいじょうぶ、誰も言わないから、
そんなこと。
わたしはこの頃、すっかり
さみしい気持ちになってましたよ。




とは言うものの。  

森の終わる気配を感じつつも、
地面をみれば、この豊かな緑。
シダやらコケやら。

本当にたまりませんなあ。
最後の最後まで
しぶとく味わうべく
写真を撮っていたものと
思われます。


お尻の下に!  

はぁぁっ
山下さんのお尻の下に、
きのこがいるよー。

あははは〜〜〜。
すごいかわいいきのこです。






くんくん。
くんくん。
 

「このきのこ
 いい匂いがするんですよ。」
新井さんがおしえてくれました。

もう枯れてきている
きのこの個体だったので、
次の新井さんの写真をみて、
その形にやや驚愕。

ほわわ〜んといい香り。

しらなかった!

このときぼくは
近くにいなかったようです。
こんなきのこに出会ってたんですね。
どんな匂いなんだろう?

わしも。

知らない。
いいなぁー。
いいにおい、嗅ぎたかったな〜。

と思ったけど、思い出しました。
杏仁豆腐みたいなにおいがしたんだ!
いいにおいだったなぁ〜。ふふふー。


ニオイハリタケ  

夏の終わりころ、トドマツの森では、
アンズのような
甘酸っぱい上品な香りが漂います。
きのこのことを知らなければ、それが、
ニオイハリタケの発するものだとは
思わないでしょうね。

森の香り、といえば、森林浴。
ニンゲンにリラックス効果を与える
「森の香り」は、
フィトンチッドという物質が
作用しているのだとか。

その、フィトンチッド、なる物質、
実は、木の危険信号らしいです。
虫に食われたり、
枝が折れたりなどして、
木が傷つけられた時に
放出されるのだとか。
ある種の殺菌効果もあるようです。

人の不幸は蜜の味、ではないですけど、
木の不幸を、快楽にしてしまうなんて、
ニンゲンとは、何とまあ……。

(写真/新井文彦)


続・殺しの三兄弟。  

きのこは、3本ずつ生えるのか?
ここにも、三兄弟を発見した。

もう、ドクツルタケはいらない?

いらなくはない。

いらなくはないけど‥‥
なにもそこまで。
好きなんだなぁ、仕方ないなぁ。








滑り込み!  

もうすぐ駐車場というところで、
ほんとに最後の最後に、
「あ、タマゴタケ」
と新井さん。

これもすごくおいしいきのこだとか。
日によっては、
たっくさんみつかる日も
あるんだそうです。

それにしても‥‥
見た感じは、毒だなあ。

これ知ってる!

これ夏に『みちくさの名前』
八ヶ岳に取材に行ったときにも見ました。

そのとき一緒にいた柳生真吾さんも
「これめちゃくちゃうまいんですよ。」
と言ってたなぁ。

てっかてか。

てかてかしてて、めんこいですねぇ。
いい色! ナイス色!


タマゴタケ  

大好きです、タマゴタケ。
何がって、姿かたち(そして、味も)。

赤い傘に、黄色い柄に、白い「卵」……。
ベニテングタケと並んで、
ビジュアル系きのこクイーンに
認定します。

きのこひとつにしても、
いろいろな形や生態があります。
森に生きる、植物も、動物も、
目には見えないかもしれないけど、
菌類や、バクテリアなども、そして、
森ではもう生きられなくなってしまった
ニンゲンも、
地球の誕生から46億年という、
時間が積み重なってできたもの。

もうちょっと大げさに言うならば、
いま目にしているものすべてが、
ぼくたちも含めて、
宇宙誕生から137億年かかってつくられたもの。

大切にしなければ、
バチが当たりますよね。

ハナシを大きくしちゃいましたけど、
阿寒のきのこや粘菌や自然は、
本当に素晴らしいです、はい。

(写真/新井文彦)


満足っぽい。  

アウトドアを愛する
迷彩服のメインカメラマン、
やり遂げた表情で、森からOUT。
ご苦労さん、いっぱい撮ったね。






いるんだ‥‥。  

このことについては、
すっかり忘れていた。
森の出口でこれを見て‥‥。
‥‥やっぱり、いるんだ。
そりゃそうだ‥‥。

顔で表現。

3枚目の写真、
これはなんの表情でしょう・・。

「ダメ、ゼッタイ。」ならぬ
「クマ、シュツボツ。」
というポスターのつもりかもしれません。

恐怖心。

森への恐怖心を表現しているのだと
思われます‥‥。たぶん。


狩ったもの。  

終わってみれば、
けっこうな量のきのこが
カゴのなかに入っていました。

実は、狩ろうと思えば
食べられるきのこは
まだたくさんありました。
新井さんが、
「もう十分ですよ」
と、やさしくたしなめてくれたのです。
みんなで食べる量としては、十分。
もちろん、
ぼくらも大満足です。

まだわからない。

新井さんの「十分です」という言葉、
実際は、まだわかっていませんでした。
だってね、8人くらいいるし、
きのこだしね。
少なめだなぁ、くらい思っていたんですよ。




帰りましょうか。  

狩ったきのこを持って、
帰りましょう、阿寒ネイチャーセンターへ。
そして‥‥
すぐそばの阿寒湖畔で‥‥
食べましょう! きのこを!
はい、車に乗って乗ってー。
北の国といえば・・。  

ということで、帰りの車で
みんなからモノマネの
むちゃぶりをされるゆーないと。

あのテーマ曲をYouTubeの
別ウィンドウを立ち上げて
聴きながら観ると、
また格別のあじわいです。
大きいサイズの動画は
こちら
からどうぞ。



こんなにも。

こんなにもだとは思わなかった。
少なくとも、中学生くらいから
10年以上やってきてるのに、
こんなにもだとは知らなかった。

ほんと、もうしゃけない!
かんにんな!

(さあ次はいよいよ阿寒湖畔で
 きのこ料理をいただきます!)
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2010-12-06-MON
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN