前川清さん、矢野顕子さんに会う。

「これをやりなさい」ということを、いっさい聞かなくていい世界がある。　前川清さん、糸井重里とともに、矢野顕子さんに会う。

前川清さんと矢野顕子さんは、たがいに何十年ものキャリアを持つ音楽家ですが、関わってきた音楽の種類と仕事のしかたが、少しずつ違っていました。このたびふたりがデュエットソングを歌うことになり、改めてその「違い」に驚くことに。糸井重里をまじえて、いま、「歌に対する考え」がじわりとスパークします。全８回、前川さんが次の扉を開くまで、ぜひおたのしみください。

糸井: 今日はなんだか久しぶりに
プロの話を聞いている気がします。

矢野: そうですか？

糸井: うん。建前としてはプロって
「いつも誠心誠意で集中力を保って、
一所懸命こんもりとケーキを作っています」
ということを言わなきゃなりませんよね。
でもそれは無理です。
歌ってる最中に他のことを考えることさえ
あると思いますよ。

前川: あります、あります。

矢野: うん。

前川: 歌うときに余裕がある場合は、
自分で風景がよくわかるんですよ。
でも、余裕がなくなって集中しすぎたら、
自分で自分の歌がわかりません。

糸井: 全部に身を入れて歌うわけにもいきませんし、
客のほうも、
必ず大盛りを欲しがる人ばかりじゃないですから。

前川: そうなんですよ。
帰りたいと思ってる人もいますんでね。

ぼくは別の歌い手さんといっしょに
１か月公演を開くこともあるんですが、
例えばちょっと時間がのびてしまったら、
自分の歌を短くして調整します。
帰りのお客さまが
「長かったね」とおっしゃるのが嫌なんです。
帰りにお客さまがどんな雰囲気で帰っておられるのか、
ほんとうに怖いです。

糸井: 帰り道のお客さん、見られないですか？

前川: 見ません。

矢野: たいていの人はニコニコしてますよ。
「来なきゃよかった」と思ってる人は
あんまりいないと思う。

前川: いや、怖いですよ。
でも逆に、90近いおばあさんが
杖をついてわざわざ来てくださることもあって、
ぼくはそれに気づかないでいるんですけど、
なんで帰りに声かけなかったんだろう、と
後悔することもあるんです。

糸井: 前川さん、なんだかいつも後悔を‥‥。

前川: はい、後悔してます。
前向きさはないですよ。

矢野: そうなんですね（笑）。

前川: 女性とつきあったときには、
「いつか別れるんだろうな」と、
すぐに考えますから。

矢野: そうかぁ‥‥‥‥前川さんは、
自分で作詞をしたいと思わないんですか？

前川: ぼくはね、ギターのコードを
４つぐらいしか知らないんですよ。

矢野: それは作曲のほうでしょ？
作詞です、作詞。

前川: あ、詞はダメです。

矢野: どうして？

前川: 詞はね、頭が要ります。
作曲のほうは、例えば風呂に入って
♪ンーンンー♪なんていうこともあるけどね、
「夕月のなんとかを見てだれそれ」って、
風呂に入ったからって言います？　
言わないでしょ。
鼻歌って歌いますよね。
詞は言わないですよ。
それ、思いません？

糸井: （笑）

矢野: それって詞っていうか、
詩吟じゃないんだから、
「夕月の」って、ふつうそんなこと‥‥。

前川: それはまあ、例えがひどすぎますけれども、
詞のようなことは、ぼくはつぶやきません。

糸井: でも前川さん、例えば風呂に入ってるとき、
「なんであいつは連絡くれないんだろう」
というような言葉は、浮かぶことはありますよね。

前川: 「そういえば最近誰々は連絡くれないなぁ」
とは思います。

糸井: それが詞ですよ。
アッコちゃんの詞なんか見てると、
まったくそうです。

前川: うーん‥‥。
ぼくはなにごとに対しても、なーんか、
あれこれ考えてしまいますから。

糸井: いちいち深刻に。

前川: そこなんでしょうね、たぶん。

矢野: まず「夕月」をやめて、
「さっきのおにぎりはどこいった」
みたいなことを言えばいいんじゃないでしょうか。

前川: ああ、なるほど。
「もっと食べたかったのに、もういまはない」

矢野: 「たくあんもうまかったなぁ」

前川: 「黄色いたくあん、白でよかったのに」

矢野: それを歌にしたらいいじゃないですか。

前川: 「白いたくあんがいとしい」
ああ、そういったものなんですね。
ぼくが旅の番組でお年寄りと話して
ふと思ったことも、入れていいかもしれない。

矢野: いいと思う。
そういう歌を前川さんが歌ったら、
聞いてる人は、
「あっ、私もそう思う」とか
「ウチのばあちゃんと同じだ」とか、
何かをご自身で見つけてくださいますよ。

前川: そういうものはあります、いっぱい。

糸井: いま前川さんは、もしかしたらその材料を
仕入れてる時期かもしれないですね。

前川: なるほど、テレビに出たりしてね。
ふむふむ、自分でそういうことを、
詞になるような‥‥。

糸井: ただし、そういう歌を
ジャンジャン平気で発表してる人は、
あんまりたくさんはいないですけど。

前川: 確かにいませんね。
でも、いまの歌詞は
あんまりおもしろくないのが多いから。

糸井: 作るために作ってる、
そういう歌詞が多くなってきているとは思います。

（明日につづきます）

2018-11-23-FRI

矢野顕子さんのNEWアルバム

ふたりぼっちで行こう

＜2018年11月28日発売＞

前川清さんとのデュエットソング
「あなたとわたし」が収録された
矢野顕子さんの新しいアルバムです。
矢野さんが、このところステージでも展開されている
コラボレーション演奏の音楽を、
ひとつのアルバムパッケージで、
すみずみまで聞くことができる貴重な１枚です。
前川さん以外の参加アーティストは
下記のとおり（順不同敬称略）。
Reed and Caroline/吉井和哉/YUKI/
奥田民生/鹿の一族/大貫妙子/
上妻宏光/U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS/
平井堅/細美武士

このアルバムについて、くわしい情報は
特別サイトをごらんください。

Amazonでのお買い求めはこちらへ。

初回限定盤

通常盤

また、年末恒例の矢野顕子さんの
「さとがえるコンサート2018」も
開催されます。

（全席指定：￥7,560）

12月２日埼玉県三郷市文化会館

開場 17:30／開演 18:00

12月４日大阪府サンケイホールブリーゼ

（SOLD OUT）

開場 18:30／開演 19:00

12月５日愛知県名古屋芸術創造センター

（SOLD OUT）

開場 18:30／開演 19:00

12月９日東京都 NHKホール

（SOLD OUT）

開場 17:15／開演 18:00

12月11日宮城県仙台電力ホール

開場 18:00／開演 18:30

年末年始に前川清さんの
ディナーショーや公演があります

12月２日

ランチ・ディナー付　

前川清＆クール・ファイブショー

由良温泉八乙女　夕陽の間（山形県）

開場・食事／12：00～　ショー／13：30～

開場・食事／18：00～　ショー／19：30～

昼S席27,000円　A席24,000円　B席22,000円　　
夜（宿泊）S席31,000円　A席28,000円　B席26,000円　
（日帰り）B席22,000円

12月1６日

クリスマスディナーショー2018

ホテル日航金沢（石川県）

一部　ディナー17：30～／ショー18：30～

二部　ディナー20：30～／ショー21：30～

S席 35,000円　A席 33,000円

12月23日

クリスマスディナーショー2018

ホテルニューオータニ幕張　鶴の間（千葉）

開場／17：45～　食事／18：00～　

ショー／19：30～21：00

一般　39,000円

12月25日

クリスマスディナーショー2018

ホテルオークラ福岡（福岡）

受付17：30　食事18：00　ショー19：30

全席指定　38,000円

各ディナーショーの申込みに関しては
前川清さんのステージスケジュールページを
ごらんください。

2019年1月24日（木）～2月4日（月）

50周年記念　前川清特別公演　明治座

第1部「どたばたショータイム！冷たくしないで」

第2部「50周年記念　前川清スペシャルステージ」

S席12,000円／A席8,500円／B席6,000円

明治座公演のお申し込みについては
明治座のサイトをごらんください。