荒井 |
でも、個展をやるにも
時間がなかなかとれなくて、
1日で準備できる個展の形はないか?
みたいなことを必死で
考えてたりするんですけど。 |
糸井 |
制作期間が実質1日? |
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荒井 |
うん。 |
糸井 |
すごいですね。
それは、ぼくの知り合いの
ひどい人を超えますね。
あの、南伸坊さんっていうんですけど。 |
一同 |
(笑) |
荒井 |
ははははは。
あとは、まぁ、画廊で、
個展の初日から、コツコツ描いてるとか。 |
糸井 |
ああ、そうですかー。
すごいですね、それは。 |
荒井 |
いや、すごくないです、ぜんぜん。
どちらかというと、制作が数日とか、
あんまり言えないことなんですけど。 |
糸井 |
ま、言いにくいといえば
言いにくいですけどね。 |
荒井 |
でもね、時間じゃないと思うんです。 |
糸井 |
いや、その通り、
その通りだと思う。 |
荒井 |
それだけ時間かければ
すごいですねって言われるのもいやだし。
あと、「力作ですね」とか言われると
ガクッときちゃう(笑)。
「力作」ってぜんぜん
褒め言葉じゃないじゃないですか。 |
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糸井 |
うん、うん(笑)。 |
荒井 |
むしろ、
それだけは言わせまいと思ってる。 |
糸井 |
その、物理学っぽいですよね。
「力作」って。 |
荒井 |
そうそう、そうなんですよ!
あ、がんばりが見えてんだ、と思うと、
ああー、失敗したなぁ、とか思う(笑)。
だから、なるべく、
時間かけてないよっていうふうに言うし、
実際、けっこう言われるんですよ、
テレビ見ながら描いたんでしょ、
みたいなことを。 |
糸井 |
(笑) |
荒井 |
でも、そのくらい、
勢いとか乱暴さがあったほうが
かっこいいなと思うんですよ。 |
糸井 |
はい、はい。
でも、ほんとうの話、
両方が混じってると思うんですよ。
ほっんとに気が入ってない部分が
必要なときって絶対あるわけで。 |
荒井 |
うん、うん。 |
糸井 |
横尾忠則さんが
絵を描いてるところを横で見てても、
まったくそうですもんね。
ずっと集中なんてしてなくて、
「あ、そうなの?」とか
平気で話しながら描くから。 |
荒井 |
(笑) |
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糸井 |
まぁ、ぼくも荒井さんも、
自分たちの仕事の結果が
抽象に見えるところに行きやすいから
うまく伝わらないのかもしれないけど、
ものすごく苦労するところと
テレビ見ながら考えることっていうのは
もう、混ざり合ってるんですよね。 |
荒井 |
うん、ほんとにそう。
あの、さっき話にもでてきた、
南伸坊さんと
お話しさせてもらったことがあって。 |
糸井 |
うん。 |
荒井 |
「荒井くんって、筆使わないで、
紙で描いてるんでしょ?」
っておっしゃるんですね。
オレ、筆じゃなくて、紙の切れ端に
絵の具を塗って描いたりするんです。
で、南さんが言うには、
昔の人もよくそうやって
筆じゃないもので描いていたらしい、と。
なんでも、昔のうまい人は、
筆だとうまく描けすぎて
つまんなくなっちゃうから、
草をつかって描いてたんですって。
「筆草」っていうらしいんですけど。 |
糸井 |
あいつ、教養があるからねぇ。 |
一同 |
(笑) |
荒井 |
それって、なんていうか、
自分が描くことに意外性がほしい、
っていうことなんじゃないかと思うんですよ。 |
糸井 |
うん。 |
荒井 |
その気持ちはすごくよくわかるんです。
だから、テレビ見ながら考えるとか、
人としゃべりながら描くっていうのは
どっかになんか、油断とか、
意外性を入れたいというか。 |
糸井 |
それは重要ですよねぇ。
あと、油断を取り入れるという意味でいうと
伸坊はそうとう得意だと思う。 |
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一同 |
(笑)
(つづきます) |