第8回
小学生の頃から過労だ。
(細野さんがタバコ休憩に行きました)
横尾
細野さんは、命がけでタバコ吸ってるわけよね。
タバコで死ぬかもわかんないんだから。
糸井
細野さん、自分で「病弱」って言ってますからね。
横尾
そういう意味では、命を捨ててるわけで、
たいしたもんだと思いますよ。
糸井
でも、細野さんは声が出てますからね、
根が丈夫なんじゃないでしょうか。
横尾
本人が先死ぬか、
タバコが先死ぬかって考えた場合さ、
タバコのほうが先に死んじゃうんじゃないかな。
糸井
(笑)、横尾さんは、
健康に関する知識を
迷信も含めて、ものすごく仕入れますよね。
横尾
よく「自分を知る」という言い方をしますよね?
それは何なのかというと、
自分の精神状態、メンタルの話です。
私は何なんだ? と、哲学的に
自分を解明しようとするのです。
しかしぼくはそれができないので、
自分の体の各パーツを、
「いったいここはどうなってるのか」
と考えることでわかろうとするのです。
体を全部知ることで、
自分の精神も全部わかるんじゃないだろうか。
糸井
ああ、その考えにはとても賛成です。
自分って、体全体のことですから、
横尾
そうですよね。
「私はなんだ? 何者だ?」
といっても、鏡に映っている自分の外部しか
見えないです。
内部なんてわからないわけですよ。
気が長いとか短いとかなんとかいったって、
結局、その「長い短い」も、
体から来てるのかもしれない。
糸井
ぼくもそう思います。
横尾
お医者さんに行って、
「体、どうなってるんですか?」
と、いろいろ聞きますとね──
たとえば、体の中に悪玉と善玉があって
どこかが悪くなると、
悪玉的な存在の何かが、
「もっと悪くしよう、悪くしよう」と
働きかけるとするでしょう。
それに対して、
「それは困る、回復させなきゃいけない」
ということで、善玉的なものが出てきて、
葛藤するわけです。
常にそういったことが体の中で行われていて、
それが精神に反映して、
いろんな思想が生まれたりする。
肝心なのは体じゃないかな。
糸井
人は、内臓も含めて
体全体的に「その人」なんですよね。
横尾
そう。
骨や血液まで、全部ひっくるめてだよ。
糸井
「苦しい」「痛い」「不快」も含めて
その人の想いになって、考えを組み立ててる。
横尾
一昨日ね、たまたま、
心臓の検査をしてもらったんですよ。
自分の心臓がパクパクパクパクしているさまを
動画で見たわけ。
糸井
ほほぅ。
横尾
で、これ、止まったらだめなんですよ。
糸井
はい。
横尾
だめなんです。
糸井
それはそうだ。
「あ、止まった!」って、
そういうことはないですね(笑)。
横尾
自分の心臓が80年前から今日まで動いているのは、
ちょっと感動しますよ。
ぼくの話聞いたって、感動しないでしょう?
だけど、ご自分の心臓ですよ。
自分の心臓を動画で見てごらんよ。
(細野さんがタバコ休憩から戻ってきました)
糸井
いま、細野さんは
タバコやめないね、って話をしてたんですよ。
横尾
死を覚悟して、タバコ吸ってる。
細野
そんなたいしたことじゃないですよ。
横尾
自分の命に対する執着がないわけよ。
それは偉い。
死を呼び寄せようとしてるわけでしょ?
糸井
そうなの、細野さん?
細野
いやぁ、でも、多少あるかな(笑)。
煙っていうのは大事なんですよ。
あのぅ、ネイティブアメリカンの人たちは、
祖先との通信に煙を使います。
世界中の魔女たちも、タバコ吸って、
煙幕を張って、霊を見たりするんですよ。
横尾
細野さんは逆に、
タバコやめた途端に
死んじゃうかもわからない。
タバコを一生手放さないで長生きした人って、
けっこういるんですよ。
細野
だから、試してみてるんですよ。
糸井
ここまで来たら、みたいな気持ちは
ありますよね。
細野
もういいか、いろんなこといっぱいやったし、ってね。
でもぼく、未成年のときは
アンチタバコだったんですよ。
横尾
あ、そうなんですか。
細野
ええ。学生で吸ってるやつがいて、
「なんだよ、こいつら」とか思ってたんです。
それが、染まっちゃって。
糸井
そういう人ほどね(笑)。
細野
そうなんです。危ないですよ。
かたくなな人は、危ないです。
ま、いまは
タバコ吸わない人も肺がんになるっていうのが
話題になってますから。
糸井
とにかく、タバコを吸ってる人は、
タバコがどういうふうに悪くないかの勉強を
ものすごくしてます。
会場
(笑)
糸井
さっきも
「ネイティブアメリカンの間では煙が」って
言ってたし。
細野
煙のものには、
そういう精霊がついててさ。
横尾
タバコ吸ったら、気持ちがいいの?
どうなるの?
細野
いや、どうなるって、中毒ですから。
横尾
病気なの?
糸井
吸ったらどうなるかというよりは、
吸わないときが苦しいんです。
横尾
あ、そういうことなんだ。
糸井
横尾さんは、
タバコだのお酒だのっていう、
取りつかれるものはないんですか?
横尾
まぁ、ぜんざいとか、おはぎとか、
そういうのだよね。
糸井
あれはあれで麻薬ですね。
細野
糖分は、なりますね。
糸井
細野さん、そっちも行きますよね(笑)。
細野
最近は卒業しましたが、糖分も危なかったです。
横尾
でも、おはぎを
何時間に1回ずつ食べなきゃ死ぬとか、
そういうことはないよね。
糸井
ないですね(笑)。
横尾さんはいま、
節制していらっしゃいますよね。
横尾
減塩減糖、やってます。
細野
糖分は蓄積だから、
結果が出るまでに時間かかります。
ぼくはもう30〜40年くらい不摂生してて、
その結果がいま出て、
ひどい目に遭ってるわけですよ。
糸井
細野さんは若い頃からずっと
「ボロボロだ」という表現を
なさってるんですけどね(笑)。
細野
子どもの頃から「過労」って言われてました。
小学生のときに医者行ったら、
「過労ですよ」って言われて。
糸井
わははは。
細野
その医者の言葉が、植えつけられちゃって
「あ、自分は過労なんだ」
と思い続ける人生になりました。
信じ込んじゃって、
その言葉に自分が合わせていったのです。
(つづきます)
2016-12-06-TUE
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN