天才バカボン

『天才バカボン』第7巻(竹書房文庫)より

2 山田一郎って、誰?

ほぼ日 赤塚不二夫さんとの直接の出会いは、
文庫版『天才バカボン』のときですか?
祖父江 そうです。
あのね、漫画文庫ってね、
一度盛り上がったんだけど、
ダメになったことがあるんですよ。
大手出版社も苦戦して、
どこも手を引きはじめた時期があったの。
ところが、秋田書店の
『ブラック・ジャック』の文庫が
猛烈に売れちゃったことを機に
盛り返したんです。
そんなとき、竹書房が、
よし、赤塚不二夫を文庫でやるぞ、と
いうことでスタートしました。
ぼくも、どうせやるんだったら、
バッチリンコに決めちゃおう! 
やっぱりこれまで単行本には
うっかり収録されてなかった回も含めて
全集みたいにていねいに
描かれた順番どおりに作っちゃおう!
ということになって
がんをはったわけなんだ。
ほぼ日 すなわち、頑張った‥‥わけですね。
祖父江 そう。文庫なのに
いちばんのパーフェクト版じゃん、
というふうにしたかったの。
ほぼ日 以前我々が、よしもとばななさんの
『ベリーショーツ』の制作のため
コズフィッシュ(祖父江さんの事務所)に
通いつめていたときは
『天才バカボン』は
手にとりやすいところにあって、
よく立ち読みしていました。
祖父江 いまも、手にとりやすいところにあるよ。
ほら、バカボン1、2、3。
ほぼ日 ‥‥BOXの中が空っぽのようですね。
祖父江 なかなかの人気商品なので
ついつい揃ってないですね。
ほぼ日 事務所内でね。
祖父江 よしっ!
さがそう、事務所内を。
15、16、17、18、
19‥‥が抜けてるのか。
ほぼ日 19、ありました!
祖父江 ほいっ、20もありました。
ひとまとまった!
ほぼ日 ‥‥あ。この巻、
お名前が‥‥山田一郎???
誰???
祖父江 あー。
わかりました?
ここ、大事なとこですよ。
著者名が「山田一郎」ってとこが
とっても〜、大事です。
ほぼ日 あ! そうか‥‥赤塚さんは、
お名前を変えられたときが
あったんでしたよね。
祖父江 そーそー。
この巻のはじめの回から変わったの。
ほぼ日 背は帯で隠れているから
気づきにくいですね。
祖父江 書籍化されたもののなかで
「山田一郎」の名前がメインになったのは
これが初のはずですよ。
ほかの出版社では
みんな「赤塚不二夫」で出てますから。
ほぼ日 『天才バカボン 山田一郎』
と書いてあっても
誰かわからないですもんね。
祖父江

結局、この第16巻は、
山田一郎と赤塚不二夫の
ダブルネームになりました。
巻頭がちょうど山田一郎から
はじまっていて、後半部に赤塚不二夫に戻ります。
そういうことで赤塚不二夫のほうのお名前も、
ちょっと小さめに入れた、というわけです。
♪ダーンダーダダーンダーダダー。


山田一郎に改名して。

また赤塚不二夫に戻った。
ほぼ日 どうして山田一郎に?
って訊きたいですけど、
それはやっぱり
そうするのがおもしろかったんですよ、
ということなんでしょうね。
祖父江

ギャグひとすじ。

(つづきます)
キャラクター紹介

レレレのおじさん

バカボンのパパが外出するとき、
いつも道端で、ほうき片手に
掃除している明るいおじさん。
「おでかけですか?
 レレレのレー」
このシーンは、
場面転換に使われることも多かった。

2009-08-21-FRI