天才バカボン

祖父江慎さんのお話 4バカボンのパパは主人公じゃなかった。

ほぼ日 「デザインは要らないよ」
と言われてから、
『天才バカボン』の文庫版の制作は
どうやって進めたんですか?
祖父江 シンプルデザインでいくことにしました。
ラフをたくさん作って、提案するうちに
赤塚さんが
「おもしろい」と言ってくれて、
何度かめの打ち合わせでは
もう、何をやってもいいと言われたんです。
すごく、うれしかった。
「顔だからって肌色じゃなくてもいい、
 紫でも緑でも。
 おもしろければ、どんどんやっちゃって。
 任せたから」
って。
なので、最初はこんな感じだったんだけど。
ほぼ日 どんどんエスカレートして、
顔の色がもう、すごい。
祖父江 後半に行くにしたがって
どんどんメチャクチャになっていきます。
赤塚さんからのアドバイスは、これだけ。
「何やってもいいから
 おもしろいほうで行ってくれ」
ほぼ日 うわははは。
祖父江 というわけで、
やりたい放題やらせていただいてます。
ほぼ日 本文ページにも
勝手に色がついてますよ?
祖父江 そーでしょ?
色つけて、赤塚さんに
「どうでしょう」って持っていくと、
ほとんど見ずに
「うん、おもしろい、おもしろい。
 ところでさ、こないださ……」
って、ぜんぜん関係ない話(笑)。
ほぼ日 チェックしないんですね。
祖父江さん、『天才バカボン』の中で
好きなコマとか、ありますか?
祖父江 好きな1ページ、ということで選ぶと、
悩んじゃいますが、
「バカになります」ページは、好きです。
ほぼ日 それは、何巻でしょう。
祖父江 ほえほえガチョ〜ン!!
どこでしょう、さがすザンス!
ほぼ日 それ、反対向けに
めくられてますけど
大丈夫ですか。
祖父江 大丈夫、大丈夫!
うーん‥‥‥‥ありませんねぇ。
チャカチャン、
チャカチャチャチャチャン♪
ほぼ日 あった、これかな?
祖父江 それだ。これじゃ、ニャロメー!
ほぼ日 これですね。
えーっと、10巻です。
「もうすぐバカになります」
祖父江 バカボンのパパが子どもの頃に、
バカになる寸前のページ。
ほぼ日 パパが赤ちゃんの時代は
天才だったんですね。
部品がはずれて
口調も「なのだ」になった、と‥‥。
祖父江 『天才バカボン』って、連載スタート時には
ハジメちゃんが主役だったらしいですね。
ほぼ日 バカボンというタイトルなのに
なんでお父さんが主人公なんだろうって
思ってたんですけど‥‥。
祖父江 うん。頭の弱いおうちに
天才の赤ちゃんが生まれたらどうなるか、
というお話の予定で、
主人公はハジメちゃんだったらしいんです。
だけど、天才赤ちゃんよりも
バカなお父さんのほうがおもしろかったから、
どんどんパパが主役になっていった。
『おそ松くん』も結局、
脇役のイヤミやチビ太、ハタ坊のほうが
人気が出るもんね。
赤塚さんにとって、主人公すら
どうでもいいんだ。きっと。
ほぼ日 そのへん分け目も
なかったのかもしれませんね。
(つづきます)
キャラクター紹介

イヤミ

「おそ松くん」に登場する
超人気キャラクター。
自称おフランス出身。
一人称は「ミー」、
語尾は「ざんす」、
驚いたときには「シェーッ!」
たいてい蝶ネクタイのスーツを着ていて、
くつ下がのびているのが特徴。

2009-08-26-WED