- まほちゃんが出した
『おとなになるってどんなこと?』を
読んだんだけどね、
読みやすいし、最高だった。
- ありがとうございます。
- あれ、学校とかで配ればいいのにね。
うちでも、ふだんは本を読まない社員が読んでたよ。
これ、読めるもんなぁ‥‥読めるように
書いてあるのもいいよ。
まほちゃん、これは、頼まれて書いたの?
- 出版社から依頼があって、書きました。
「高校生から読める新書のシリーズで、
いまの子どもたちに向けて、書きませんか」
- そうか‥‥読んでると俺はやっぱり、
お父さん(吉本隆明さん)を思い出すね。
- そうですか?
- お父さんを彷彿として、ほろりとしちゃって、
泣きゃあしなかったけど、泣きそうになったなぁ。
お父さんは、
自分の書きたいことを書く、という人だったけど、
途中から、
「生き方」について話すというジャンルの
仕事をはじめたよね。
それはきっと、ご自身がからだを
悪くしてからのことだったと思う。
- 溺れてからでしょうね、やっぱり。
(註:1996年8月、毎年夏に海水浴に訪れていた
伊豆の海で、吉本隆明さんは溺れました。
71歳のことです)
そのあと目が悪くなっていって‥‥。
- そうだね。
きっとその前は、生き方について
お父さんが何かを人に言う、なんてことは
なかったと思うんだ。
- うん。しゃべってないと思う。
- 吉本隆明さんと『悪人正機』という本を
作らせてもらったのも、ちょうどそういう時期だった。
いま、こうしてまほちゃんが自動的に、
「あのジャンル引き継いでるんだ!」と思ったよ。
読んで楽になるし、真剣にもなれる。
隆明さんとそっくりだよ。
- それはぜんぜん、
自分では思ってなかったです。
- そうなの?
「お父さんに言われたことと同じだなぁ」
とか思わなかった?
- 思わなかったです。
たぶんお父さんは
私が何を考えてるかを
ほんとうにはよく知らなかったし、
深いところでは知っていても
わからなかったような気がする。
- そうだね。
邪心のないひとつの純粋な魂として、
「子どもにこう言われたんだ」
「びっくりしたことがあります」
という話はしてたけど‥‥。
- うん、そうですね。
- でも、この本のうしろのほうに出てくる話なんて
「吉本さんも、すっかり同じこと言ってたぞ」
と思ったよ。
- ほんとうですか?
それはまず私がお父さんの書いたものを
そんなに読んでない‥‥‥‥‥‥っていうのが
どうなんだろうか(笑)。
- 一同
- (笑)
- ぼく自身が吉本さんから直接聞いていたからこそ
同感した部分も、もちろんある。
だけどそれよりももっと自分の実感として
「まほちゃん、それは俺も同じ気持ちだよ!」
って思うことも多々あったんだ。
- あぁ、それはよかった。
- 「ほぼ日」やぼくの書くものを
読んでる人だったら
「糸井さんが言ってることとダブりますね」って、
誰でも言うと思う。
ただし、ぼくのほうがまほちゃんより奥手だから‥‥
- 奥手?
どう奥手なんですか?
何が?
- おれはやっぱりずっと、子どもだった。
- そうですか? ははぁ‥‥。
- まほちゃんは自分がおとなになった瞬間を
はっきりと覚えてる、って本に書いてたよね。
もし自分にああいうことがあっても、
見すごしてたと思う。
- そうですか?
- ちいさくいろんな段階はあったんだろうけど、
ぼくがおとなになったのは
50すぎてからです。
- 50‥‥。
- まほちゃんは、もうすぐ50になる?
- いま、51歳です。
- あ、なってる!
- うん、いつの間にか。
- 50までいくと、年齢的には、
おとなにならざるを得ないですね。
「子どもが生まれたら、おとなになりました」
という人がよくいるけれども、
そうなっても、おとなにはなれないよね。
親だから自動的におとなになるってことは、
ないと思う。
- うちのお父さんは
私が48歳になったときに、
「48歳ですよ」
と言ったら、
「君も立派なおばあさんになったな」
って(笑)。
「昔だったら、48は
もう立派なおばあさんだ」
と言われて、
「すいませんねぇ」
と応えたのをよく覚えてます。
- (笑)そうかぁ、可笑しいね。
まほちゃんがこの本で書いていることの全体に
1本通ってる筋は、
ふた文字で言えると思います。
それは「自由」です。
どこまで行ってもまほちゃんは、
「自由」の話をしてるんです。
- うん、うん。
- 最晩年の吉本(隆明)さんも
「いちばん言いたいのは、やっぱり
『自由』ってことでしょうかねぇ」
って、絞りに絞って、言ってた。
- へぇ‥‥。
- だから、ぼくには
のりうつってるみたいに見えて(笑)。
- のりうつってない、ない(笑)。
(つづきます)
2015-12-10-THU