先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 糸井
- そうこうしているうちに
日もとっぷり暮れまして。
- みうら
- いや、まだ3時半です。
- 南
- 3時半なら起きたばっかりという感じだ。
- 糸井
- 近かったね。なんたって、
東京にあるグランピング場だから。
えーっと、スタッフのみんなは、
ここから山の上まで歩いてのぼるのね。
- みうら
- ジジイたちは車に乗せてもらえるんですね(笑)。
ふだん鍛えてるわけじゃないから、
ありがたいです。
- 糸井
- 特別にお願いしました。
- みうら
- 糸井さんは、いまも「社長」なんて
呼ばれてないんでしょ?
40年前にスタッフが石井くん(みうらさんの友達)
だけだったときから、そうでしたよ。
- 糸井
- そうね、いまも昔も同じだね。
石井くんが実家に帰ったとき、お父さんに
「糸井重里のことをふだんなんと呼んでいるか」を
訊かれたことがあったらしくてさ。
- みうら
- 石井は当然、答えますよね、
「糸井さんだよ」
- 糸井
- 「糸井『さん』て!
糸井『さん』やてか!」
- 南
- 「糸井先生、じゃなくて、糸井さん?!」
- 糸井
- 「お前もえろうなったもんやなぁ」
- 南
- 俺はその、「やてか」が好きだなぁ。
- みうら
- あのぅ‥‥糸井さん、
いちどその、スタッフだった石井くんのお父さんを、
新宿の紀伊國屋書店に呼んで、
素人なのに講演させましたよね。
- 南
- へぇ、ほんと?
- 糸井
- うん。
- みうら
- 紀伊國屋書店の講演会で、
赤瀬川原平さんも登場するイベントの
いちばんバッターに「石井せきおさん」の
ローマ帝国がどうして滅びたかというような講演を。
- 糸井
- おもしろいから。
- みうら
- 石井は眉を八の字にして
「糸井さんが呼んでしもうたんよ」と言ってました。
お父さんは得意げにローマ帝国について話し、
会場もざわついてました(笑)。
- 糸井
- 石井んちのお父さんって、
会うたびに、ふつうの話からすぐに
ローマ帝国の話になっちゃうのよ。
お茶の話題からゲルマン民族の話になるまで
3秒とかからないわけ。
- 南
- お父さん、ローマ帝国が好きなんだ。
- 糸井
- 大学の市民講座によく行ってたみたい。
その紀伊國屋書店の
イベント担当の編集と話しているうちに
「石井んちのお父さん呼んだらどうかな」
「あ、いいですね」
ということになって。
- みうら
- それはもう、そうとうなことでしたよ。
- 糸井
- でもちゃんと
引き受けてやってくれたからね。
- みうら
- それは引き受けるでしょう。
まずはしゃべりたくてしょうがないだろうし(笑)。
- 南
- それは見たかったなぁ。
- 南
- おお、こういうところなんだ。
このベッドで誰と誰が寝るの?
- 糸井
- それが、決まってないんだよ。
- みうら
- 「テントにベッドふたつ」とは
聞いてましたけど、
ぼくはどっちかに寄り添うというわけですか。
- 糸井
- 「その場で決めればいいじゃない?」といって、
やってきたんだけど、
実際にそのときが近づいてきたんで、
これはどうかな、と。
- みうら
- はっきり言わなきゃならないときが来ましたよ。
ここではっきり言っておかないと、
間違いが起こるでしょ?
ぼくは寒がりなんで、
古民家のほうに寝かせてください。
(テントから数メートルの場所に
宿泊できる古民家があります)
- 南
- あ、古民家で寝るというパターンもあるんだ。
- 糸井
- うん、それもいいね。
そいじゃ俺、先に風呂、行ってくるわ。
- みうら
- いいですね。
- 南
- 俺はテントと古民家、どっちで寝ようかなぁ。
- 糸井
- ああ、いい感じだった。
- みうら
- もうあがったんですか?
早いですね。リンスありました?
- 糸井
- いや、見なかった。あったと思うよ。
たまに、似たようなもんだろうと思って、
ボディシャンプーで髪洗ったりすると、
えらいことになるよね。
- みうら
- そんな危険なこと、やったことないですよ。
- 糸井
- ぼくはなんでもやってみますからね、
なんっでもやりますよ!
- 南
- たしかに糸井さんはそうだね(笑)、
なんでもやる。
ぼくも風呂入ってきます。
- 糸井
- 伸坊おねぇさん、おさきしまして。
- みうら
- いってらっしゃい。
- 南
- ああ、いい感じだった。
- 糸井
- ええお湯でした?
- 南
- 最高だ。
- 糸井
- 外を見ながら入れるもんね。
お湯の温度については、
ぼくがちょっとうめといたんだよ。
- みうら
- 最初は熱かったんですか?
- 南
- 糸井さんのあとだったからちょうどよかったよ。
- 糸井
- よかった?
あぁ、伸坊さんが入ると思ったんで。
- みうら
- 一番風呂は体に悪いって言いますわな。
- 糸井
- 最初はもう、ピリピリしましたわ。
- みうら
- あきまへんわ、ほんまに。
- 糸井
- せやけどね、ふたりが入る前に、
私がピリピリしといてあげようと思ってね。
ええお湯でしたやろ?
やわらかぁしときました。
- みうら
- 一番風呂に入った人が、
湯にある何かを取り除くんでしょうか。
- 糸井
- というより、
お湯に不純物が入ったほうがいいんだろうね。
- みうら
- なるほど。
- 糸井
- だからといって、砂とか入れたら
どうなるんだろうね、
泥とか。
- 南
- それはね、ザラザラする。
- 糸井
- 感触が不快になるね。
- みうら
- 感触は大切ですからね。
(もうすぐ夕飯。明日につづきます。)
2019-12-14-SAT
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN