先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 糸井
- シャインマスカットに
塩をちょっとかけて食べるとうまいよね。
- みうら
- マスカットってことは、ブドウですか?
ブドウに塩をかけるんですか。
- 糸井
- かけるってほどじゃないよ、
上からちょっとパラパラするくらい。
すると、皮にすこしだけ塩分がつくでしょ?
- みうら
- ああ、うまそう、やってみよう。
- 糸井
- スイカも好きだったんだけど、
長いことやめてた。
でも、意地を張らないで塩かけたら、
すごくうまかったんだ。
- 南
- スイカやめてたの?
- 糸井
- スイカをじゃなくて、塩を。
- 南
- あぁ、そっか、かわいそうに。
- みうら
- 目玉焼きはどうしてますか。
目玉焼きにも、ちょっと塩かけますね。
- 糸井
- 目玉焼きに塩、いいね。
俺は醤油だけどね。
- 南
- ソースはどう?
- 糸井
- ソースもおいしいですよ。
でも醤油のほうが、
あとでごはんの上にのせられる。
- みうら
- あぁ、そうか。なるほど。
そんな‥‥、
- 南
- すごく真剣だよね(笑)。
糸井さんが食べものの話するの、すごく好き。
すごく素直。
冗談とか言わないんだ。
- みうら
- 食べものの場合、
オチがあるのかなと思ったらないんですよ。
いつ来るかと構えてるんだけど、ない(笑)。
- 糸井
- マスカットの話も真剣だよ、
いままでやってなかったのが悔しい。
- 南
- ふつうやらないよ。
なんの拍子でやったの?
- 糸井
- 思いついたの。
- 南
- (みうらさんに向かって)
思いつくんだよ。
- みうら
- 思いつくんだ(笑)。
- 南
- 中国に旅行したときも、
「こうするとうまい」とかって、
いろいろ思いつくんだよ。
みんな糸井さんのまねしてた。
- みうら
- へぇえ。
- 糸井
- 食べおえた皿に残ったタレを
別の皿のあれにかけるとうまいとか(笑)。
でも、そういうことをまねしないのが、
うちのカミさんです。
カミさんは「いい」って言う。
- 南
- 「こうするとうまいよ」と言ったら?
- 糸井
- 「これでおいしかったんだから、それでいい」
- みうら
- 奥さんという人びとは、そういうこと、
あんまり聞かないですよね。
- 糸井
- 奥さんって、どうして聞かないんだろう?
- みうら
- 聞かないから奥さんなんでしょうね。
聞く人は恋人です。
- 糸井
- そうだね、つまり、
聞いてた人が聞かなくなるんだよ。
- みうら
- そうなんですよね。
- 南
- おかしいね(笑)。
- みうら
- 昔はあんなに夜中のラーメンを
いっしょに食べにいってたのに、
いまは聞こえないふりさえしますね(笑)。
結婚すると、体にいいものについて、
とつぜん言い出すじゃないですか、
あれはなんなんですか。
「体にいいから食べなさい」と言われると、
途端にまずく感じます。
- 糸井
- みうらはロックの人だから。
- 南
- そういう仕事ですからね。
- みうら
- こっちはわざとやってるわけですよ(笑)。
- 糸井
- おかしいよなぁ。
- みうら
- こうしておふたりと
ひさしぶりにお話できることが、
ぼくはほんとうにうれしいです。
同級生なんかでも、すごくなかよかった人となら、
長いこと会わなくても大丈夫だったりしますよね。
- 糸井
- でも、ぜんぜん嫌いじゃなくて、
むしろ好きなんだけど、
「会ってておもしろいわけじゃない」
という友達、いるよ。
- みうら
- まぁ、友達って、たいていそういうものですもんね。
- 糸井
- 同級生にひさしぶりに会っても、
「ああ、当時のあれはおもしろかったな」
なんて言って、すぐに話が終わっちゃう。
- みうら
- 思い出話を思い出してるだけだからですね。
やっぱりちょっとは新しいネタが欲しいです。
- 糸井
- そうだよね。
新しいネタがない場合は、あいづちでもいいんだよ。
- 南
- あぁ、「いいあいづち」ね。
それはとてもいいね。
- みうら
- それはもう友達じゃないですよ、
あいづちを要求してる段階で(笑)。
- 糸井
- 伸坊は、人が本当にいいから、
いろんなところでちゃんと友達がいるんだよ。
- みうら
- はい、いらっしゃいますね。
- 糸井
- 偉いなぁと思うんだ。
俺はそういう
「あんまりおもしろくないかもしれないけど仲はいい」
という友達がなかなかいないんだ。
(夜をすごすグランピング場に向かって再出発。
明日につづきます。)
2019-12-13-FRI
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN