先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 南
- 俺んちは姉がふたりいて、
まぁ女の子だから、しゃべるじゃん?
俺が「今日学校で◯◯だった」と言う前に
姉がすでにしゃべってるわけだ。
親は笑って、俺も笑うんだけど、
たまにはそういう役もやりたいなぁって思うんだよ。
- 糸井
- つまり、話の主役ね。
- 南
- だけど俺が
「えぇとね、うんとね」と言ってると、
パッと取られちゃうんです。
- みうら
- つまり、食事中の家族の話というのは、
内容じゃなくて、リズムなんですね。
- 南
- そうなんだよね。
だから俺は、訓練もしなかったかわりに、
沈黙に対する強迫観念もありません。
- みうら
- 「黙っていてもいい」という人は、
ものすごい勇者ですよ。
糸井さんも、シーンとしたら困るでしょう?
- 糸井
- 困るとも限らないなぁ。
- 南
- けど、めし食ってるときは別にして、
糸井さんが静かになっているところは
あんまり見ないね。
- 糸井
- みうらはいま、俺らが先輩なんで、
とにかく埋めようとしてくれてるでしょ。
- 南
- うん、ものすごく。
- 糸井
- でも、後輩といるときのみうらを、
俺たちは知らないね。
- 南
- そうそう、知らないんだよ。
- みうら
- 後輩って、その時代その時代で
年がどんどん離れてくるんで、
最近は当然、話も合わなくなってきています。
そういう人と長時間いると、
話のテーマが底をついてきます。
そのときに、説教というものが出ます。
- 南
- あ、そうなの(笑)。
- みうら
- 「あ、それは違うね」
と、否定したように言うと、
なんだかふたたび盛りあがってるような気がして。
- 南
- はいはい、なるほどね。
- みうら
- その時点で酒がだいぶ入っているんで、
「それは違うわ。それ違うなぁ。俺は違うと思うなぁ」
と言えば、場を埋めている気分になります。
でもまわりからは
「出ましたね、説教!」なんて言われる。
「説教じゃねぇよ」と思っています。
- 南
- 後輩が「出ましたね、説教」まで言うの?
- みうら
- 最後になると、常連は言います(笑)。
- 糸井
- それはみうらが恒常化しちゃってるからだよ。
聞いたところによると、
みんなが帰りたいと思っているのを、
忖度しないらしいよ。
- みうら
- そうです、そういう癖がぼくにはあります。
- 糸井
- みうら、早く帰ればいいんだよ。
- みうら
- たしかに糸井さんは以前から、
いいところで「俺帰るわ」が言える方でした。
- 南
- 糸井さんは若いときからそうだね。
- みうら
- でも俺は、自分が話を回してるという気があるから、
シーンとしちゃうことへの強迫観念があって。
- 南
- 自分がいないときにも
シーンとなってちゃだめなの?
- みうら
- だめですね、帰ったあとも気になります。
だけどそもそも、
好きな人の話は「説教」ではありませんよね?
- 南
- あぁ、はいはい、そうね。
- みうら
- 俺は、糸井さんには一回も
説教された覚えがありません。
いつだって「言ってもらってる」と思ってました。
でも、俺の下の奴らはことごとく、
「出た、説教!」と言います。
俺のことを好きじゃないのは確かなんですよ(笑)。
- 糸井
- うーん、そうかな。
- みうら
- 「説教っていうのは好きな人の言葉じゃないんだよ」
「いや、それこそが説教だ」
と言われるだけなんで、
あまりもう、言いませんけれどもね。
- 糸井
- 伸坊は、そういうのないね。
- 南
- そうね。だけど、
時代もあるんじゃないの?
- みうら
- 南さんは、説教はしないです。
和やかなイメージがずっとある。
- 糸井
- 伸坊は怒らない。
でも仕事じゃ、怒ることもあるらしいよ。
- みうら
- あぁ、本当は厳しいんですね。
- 糸井
- 「南さんは怖いですよ」って話も聞くよ。
- みうら
- 南さんが怒ったら怖いと思う。
俺、絶対、いちばん怖いわ。
- 糸井
- 伸坊はいつも本気だから。
ここで命を捨ててもいい、くらいの。
- 南
- そんなことないよ。
- 糸井
- でも、ふだんの「怒らない度」はやっぱり、
伸坊はすごいね。
尊敬しますよ。
- 南
- 糸井さんは怒ってる?
俺は見たことないよ。
- 糸井
- 俺は伸坊に比べたら、怒ってると思うよ。
(さぁ、夜がやってくる。明日につづきます。)
2019-12-16-MON
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN