先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 糸井
- おはようございます。
- みうら
- おはようございます。
- 南
- きのう足がつりそうになってさ。
みんなは足、つらない?
- みうら
- ぼく、つります。
- 南
- 足がつるのには芍薬甘草湯ってのが、
てきめんに効くんだ。
- 糸井
- てきめん?
- 南
- ぼくは常時携帯してるよ。
- 糸井
- へぇ。
- みうら
- その薬は痛くなる前に飲むんでしょ?
- 南
- あぁ、それでもいいし。
- みうら
- 痛くなってからでもいいんですか。
- 南
- うん。すぐ効く。
- 糸井
- じゃあ、薬局にある貼り紙は、
究極の親切みたいなもんなんだ。
- 南
- うん、つる人は知ってる。
- みうら
- つる人は必ずその薬を出されるんですか。
- 南
- こむら返りの薬はいろんな名前で出てるけどね、
だいたい成分が同じだ。
芍薬と甘草が入ってる。
- みうら
- 名前のとおりね。へぇ、今度買ってみよう。
- 糸井
- 俺はまだそんなつらないんだけど、
きっとこれからつると思う。
- みうら
- つると思うって(笑)。
- 糸井
- つると思うし、あと、
同じ格好をずーっとしてると、
立ち上がるときに、
俺はもう、どこにも力が入らない。
- 南
- え? どこにも?
- 糸井
- どこにも(笑)。
いや、ちょっとは入るところもあるかもしれない。
でもさ、俺たちは、
このためにいるんだよ。
- みうら
- なんですか、急に。
- 糸井
- 「どこにも」って言うのが
仕事だからさ。
それがいわば、伸坊の大きな役目なんだよ。
逆にぼくもやるよ。
- 南
- 逆にって(笑)。
- みうら
- 南さんや糸井さんに
「どこにも」と言われたら、
そうでない部分があるような気がしてきますよね。
- 南
- それは
みうらさんのやり方ですよ。
- みうら
- あぁすみません、ぼくのやり方ですね(笑)。
- 南
- 私たちはそれをもう最初から、
受け取っていますよ。
- みうら
- ではすみません、
巻き戻しましてもう一度、
糸井さんは「どこにも」力が入らない。
- 糸井
- 入らない。
もう本当にどこにも力が入りません。
- みうら
- えーと、ぼくがいない限りは、
その話は誰もあげあしは取りません。
- 南
- しかしスルーすると、これは
なんでもないことになっちゃうから、
用心しないと。
- 糸井
- 「だから、どこにもだよ」
- みうら
- 自分で強調していくんですね。
- 南
- 「それはどういうことかね」
- みうら
- いちおう乗っかっていく、と。
- 糸井
- たとえば、立つときに、
どこにも力が入らないことがあるよ。
- 南
- それって、しびれちゃうみたいなこと?
- 糸井
- しびれ以上に、
このままじっとさせときたい力が
加わってるような感じだよ。
- 南
- なるほど。
- みうら
- この、小芝居と現実が
混じっている感じがたまらないですね。
- 糸井
- ところで、さっきからずーっと、
俺が何度も間違えてることがあるんだけど。
- みうら
- なんでしょう?
- 糸井
- お皿のここにある、
ちょっと薬味っぽいものは‥‥。
- みうら
- あ、本当だ。え?!
なんなんですか?
- 南
- なんだろう。
- みうら
- だって、俺の皿には
そんなタレはついてないですよ。
- 南
- 俺のもない。
- 糸井
- そうなんだよ。ごめんごめん。
- みうら
- なんだろう‥‥。
- 糸井
- これはね、舐めて。
- 南
- あ(笑)。
- みうら
- ああ、あいつですよ、あのあめ、
糸井さんの好きなコーヒーキャンディですよ。
なぁんだ。
- 南
- 糸井さん、本当に好きなんだ。
こんな朝から(笑)。
- みうら
- 魚の横に置くなんて(笑)。
- 糸井
- はははは(涙)。
- 南
- しかも噛んじゃわないでさ、
ちゃんと置いておいて。
- みうら
- 朝食のあと、もっぺん口に戻そうとしてるんですね。
- 糸井
- あまりそのつもりもないんだけど、ただ単に、
あめを舐めているところにごはんを食うのは
ちょっと無理だなと思って。
- 南
- 捨てるにはしのびなく。
- みうら
- ここにこんなふうにあったら、
ふつうは味噌ですよね?
俺は「ふき味噌だな、なぜか俺の皿にはないな」と
うっすら思ってました。
- 糸井
- 俺も、この味噌を何につけるんだろうと思って、
ちょっと取ってごはんにのせようとした。
- 南
- 推理力がほとんど同じだね。
- みうら
- そこはあめ置き場としては、まぎらわしいですね。
- 南
- 糸井さんは自分で「マイあめ置き」を
持てばいいんじゃないかな。
- 糸井
- そうか。灰皿みたいに。
(明日もたのしい朝ごはんのできごとをおつたえします。つづきます)
2019-12-22-SUN
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN