先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 南
- みうらさん、そこ、煙くないですか。
- みうら
- 大丈夫ですよ、ぜんぜん。
これくらい苦労したほうがいいんです。
- 南
- そう?
- 糸井
- 「煙かったんや」って、
あとでみんなに言えるもんね。
- みうら
- こんなにつらくないことはだめですよ。
いま、たのしいだけですから、
匂いくらいつけて帰らないと。
- 糸井
- 臭くなって大変だった、ということにしないとね。
- みうら
- 俺はこれまで一回だけ、
バーベキューをしたことがあります。
リリー・フランキーさんと俺と、男の編集者の3人で、
「バーベキューやりたい」という話になって、
バーベキュー場に行きました。
でもね、ぜんぜんおもしろくないんですよ。
早く帰りたくてしょうがなかったです。
- 南
- それはそうでしょうね(笑)。
- みうら
- やっぱりね、バーベキューのカナメは
女の人なんです。
女の人の「そうですね」という高い声が聞こえると、
がぜんバーベにもハッスルが出てくるんですが、
男3人で焼いても
ぜんぜんおいしくないんですよ。
- 南
- リリーさんは低い声だもんね。
- 糸井
- いい声だけど。
- みうら
- いい声がバーベにまったく合わないんですよ(笑)。
「つまんないですね」
「うん、つまんないね」
「帰りましょう」
ということになり、すぐに引きあげました。
- 糸井
- バーベキューの材料はどうしたの?
- みうら
- 材料はそのバーベキュー場で
用意してあるんですよ。
- 糸井
- セットであるやつだけ?
- 南
- さらにそれはね。
- みうら
- そうなんですよ。
- 糸井
- そうか。
まぁ、リリーさんはそういうことについて、
あんまり役に立たなそうだもんね。
- みうら
- でも、リリーさんが「やりたい」って
言ったんですよ。
- 糸井
- リリーさんも
「キャーキャー」いってくれる高い声を
イメージしてたんだろうね。
- みうら
- でも、自分の声が低いことに
気がついてなかったんです(笑)。
- 糸井
- バーベキューには、女性というより、
キャピキャピしてる人が必要なのかもね。
- みうら
- やっぱり声の高さが大事なんでしょうか。
- 南
- そうだね。
- 糸井
- いまだって同じような状況だけど、
ぼくらキャピキャピしてるもの。
- みうら
- たのしいですよね。
あ、花火。やるんですか?
ここで?
3人でやるんですか。
- みうら
- 糸井さんは本当にずっと野球が好きだけど、
俺はDeNAを最近まで遺伝子のことかと思ってました。
- 糸井
- みうらのカエルのマークの
球団ができるといいよね。
- みうら
- 俺に描かれちゃ、おしまいですよ(笑)。
- 南
- バファローズのマークは岡本太郎だったよ。
- みうら
- あ、昔のね。
- 糸井
- みうらは本当に野球のこと知らなくてさ、
みうらが想像だけで絵を描いた
野球選手のTシャツを作ったりしたよね。
みうら、誰ひとり顔を知らないんだよ(笑)。
- みうら
- 糸井さんが雑誌の「Number」に
ジャイアンツのマンガを載せたいというので、
がんばって絵を描いたこともあります。
糸井さんの原作に「クロマティ」と
書いてあるんだけど、
俺はやっぱり、ぜんぜん顔を知らないんです。
- 糸井
- ユニフォームもでたらめだし、
選手たちがものすごい靴を履いてるんだよ。
- みうら
- 糸井さん原作のマンガで、
いっろんなものを描かせていただきました。
なかでも‥‥
- 糸井
- 妖怪玉ひねり。
- みうら
- 玉ずらしですよ、妖怪玉ずらしです。
あれは名作ですよ。
- 糸井
- サササッと来て、玉を突然ずらすんだ。
- 南
- しかも、妖怪なのね。
- みうら
- 妖怪がやってきて突然ずらす。
そして被害者はちょっとだけ歩きにくくなるんです。
でも本当にちょっとしたことだから、
気がつかないんですよ。
妖怪玉ずらし。
忘れられません。
そして、妖怪玉直しも登場します。
ずらされた玉をシュッと直しにやってくる。
- 南
- それじゃ、なお本人は気づかないね。
- みうら
- それだけのマンガです。
それだけのマンガを、
どこかの雑誌に載せてもらいました。
すごいことでした。
- 南
- みうらさんはそのようすを
絵にしなきゃなんないんでしょう?
- みうら
- そうなんです、
玉ずらしのシャシャとなっている手を、
いちいち一所懸命描かなきゃいけなかった(笑)。
- 糸井
- そうだね、絵でね。
絵がないとなんの意味もないからね(笑)。
- 南
- そうだよなぁ。
- 糸井
- こんなところで、俺はテントに行こうかな。
- みうら
- あ、糸井さんはやっぱり、
〆がうまいですね。
- 南
- 俺はどこで寝ようかなぁ。
(いつまでもつづくと思ったおしゃべりは、
いつものとおりのきれいな去り際で終了。
朝ごはんへつづきます。)
2019-12-21-SAT
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN