先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 糸井
- みうら、この肉も食いな。
- みうら
- はい。
- 糸井
- 食べてないものない?
- みうら
- 全部食べました。
- 糸井
- 酒飲むと食べないって言ったから、
俺、よく注意して見てたんだ。
- みうら
- ありがとうございます。
食べさせてもらいながら飲ませていただきました。
- 糸井
- わざび、もっと擦ろうか。
- みうら
- いえいえもう、わさびは俺は要らないです。
- 糸井
- わさび要らないの?
- みうら
- はい、要らないです。
- 糸井
- あ、そう。
わさびって、おいしいよ。
- みうら
- そこまで言われたら食べますけど、
わさびだけじゃあ食べにくいです。
あ、じゃあ、これにつけて食べよう。
- 糸井
- それは芋だろう?
この肉につけて食べて。
- みうら
- いや、これは南さんのですよ。
- 南
- いや、俺らはもうみんなちゃんと
ふたつずつ食べた。
- 糸井
- ねぇ。
- 南
- 食べた。
- 糸井
- 伸坊はちゃんとやってる。
- 南
- ちゃんとやってるよ。
- 糸井
- 伸坊はね、ずっと、ちゃんとやってる(笑)。
- みうら
- たしかに南さんはいつだって
ちゃんとやっておられます。
- 糸井
- みうらだけだよ。
- みうら
- じゃあいただきます、
わさびをこう、肉にのせて。
- 糸井
- たっぷり、たっぷりね。
- みうら
- そう、たっぷりですよね。
- 糸井
- 油と辛さが相殺されて、あんまり辛くないからね。
(みうらさんを見て)
あぁ、おいしい。あぁ、おいしい。
- みうら
- あ、おいしい。
- 糸井
- ね? やさしいだろ、俺。
- 南
- やさしいよ。
- みうら
- やさしいです、やさしいですよ(笑)。
南さんも糸井さんも、
こんなにもやさしいとわかったのは、
わりと最近でです。
やっぱり先輩だもん、最初は怖いですよ。
- 南
- あぁ、年齢がね。
- みうら
- こんな先輩ふたりと、
泊まることなんてないじゃないですか。
はじめてですよ。
- 糸井
- いまはもう、たのしいでしょ?
- みうら
- ホッとしてます。
でも「これから山に出かけるぞ」なんて
言われたら、どうしようかと。
- 糸井
- ウサギ撃ちに行くぞ(笑)。
- みうら
- 糸井さん、いまスマホで
野球の実況中継を見てるんですか?
- 糸井
- うん。考えるところがあってさ。
- みうら
- 以前「巨人は自分」とおっしゃってましたからね、
自分がどう動くかが心配なんですね。
- 南
- 一応考えなきゃいけないんだね。
- みうら
- 糸井さんはリアルの野球だけじゃなくて、
ファミコンのファミスタシリーズに
熱狂していた時代もありましたよね。
ファミスタを熱心にやりすぎて
とうとう対決騒ぎになり、
雑誌に謝罪広告を出しかけていた、
というのは本当ですか?
- 糸井
- はい、すいませんでした。
もうしません(笑)。
- みうら
- いやいや、いいんです(笑)。
- 糸井
- そういうこと、あったなぁ。
- みうら
- ディスクシステムで、昔、
バレーボールのゲームがあったでしょう?
最初にうちにあって、
糸井さんが遊びにきてくださったとき、
いっしょにやりました。
糸井さんはまだプレイしたことがなくて、
たしかにちょっとだけ弱かったんです。
そのあと糸井さんはそれを購入し、
次会ったときに俺をこてんぱんにするために
練習したら、あまりにもうまくいかず、
ディスクを割りそうになった、
というのは本当ですか。
- 糸井
- まぁ、ちょっと投げたりはしたかもしれない。
- みうら
- ああ、そうなんですか、やっぱり(笑)。
- 糸井
- はい、ほんとうに、
何に対しても責任のない、
はぐれ者として生きていました。
- みうら
- そのゲームに対する情熱が、
あの名作「MOTHER」になって‥‥。
- 糸井
- でもさ、若かろうが年とっていようが、
誰だろうが、
本当は、何してもいいんだよね。
- みうら
- おっしゃるとおりです。
本当にそうなんですよ。
ぼくは糸井さんから教わったことのなかで
もっとも大きかったのは、それです。
「何してもいい」ということです。
それをあの時代に教わりました。
糸井さんはなんでもやるし、話題になるし、
何していてもおもしろかった。
「糸井さんなんてことしてんだ! すごいなぁ!」
といつも思ってました。
- 糸井
- なんていうのかな‥‥、
「口だけ」みたいなことに対する気持ちは、
いつもあります。
- みうら
- そうです、糸井さんは
ずっと行動派ですよ、誰よりも行動派。
- 南
- すごいキャッチコピーだね、
「ずっと行動派」
- 糸井
- いまは「夢に手足を」です。
- みうら
- え? どういうこと?
「夢みたらすぐ行動しろ」ってこと?
もう、そのテーマは前からですね、
ずっと変わらないです。
- 糸井
- 夢だけ言ってる人はあんまり好きじゃない。
- みうら
- そういえば、糸井さんが
評論しているところは見たことないですね。
好きじゃないものについてはすでに腹を立てているか、
すでにコテンパンにのしてるから(笑)。
- 糸井
- 評論はしません。
- みうら
- 評論はしてないと思います、
糸井さんは1回も(笑)。
- 糸井
- 嫌だなぁ。
もし俺が先に死んで、
みうらがこういうことに尾ひれをつけて
いろんなふうに言うんだと思うと嫌だなぁ。
(そろそろ外は冷え込んできた。
明日につづきます。)
2019-12-20-FRI
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN