先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- みうら
- ものまねは、老若男女が好きですよ。
- 南
- 昔、千葉のお蕎麦屋さんに、
数人で入ったことがありました。
そしたら奥からご主人が出てきて、
「あのぅ」なんていって本を出したの。
最初に出したやつ『笑う写真』。
「これ、うちで見てみんなで笑ってるんです」
- 糸井
- あぁ、いいねぇ。
- みうら
- 「この本のあの人じゃないの?」
と厨房で話してたんですね。
だけど、いろんな「本人」をやってるから
素の南さんがよくわからない(笑)。
- 糸井
- 伸坊のは、似てるってだけじゃないし。
- みうら
- そこなんです。
「似てる」「似てない」のレベルではありませんよね。
元の人もわかんないのに、おもしろい。
- 糸井
- まわりに元気のない人がいたら、
伸坊の本、あげてたもん。
- みうら
- それ、正解ですよ。
- 糸井
- いちどに20冊とか買ってね。
- 南
- ありがとうございます(笑)。
- 糸井
- イーグルスの「ホテル・カルフォルニア」のレコードも
ずいぶん買って人に配ったけど、
それを抜いてるよ。
もう何度も伸坊の顔の本を買った。
- みうら
- 南さん、イーグルスのまねは
まだやってないですよね(笑)?
- 南
- やってない。
- みうら
- 南さんは、テレビなんかを見て
「行けるかも」という感触を得るんですか?
- 南
- いや、「行けるかも」はないですね。
- みうら
- 「行けるかも」という発想は、
ものまねの人っぽいですもんね。
- 南
- そうだね。
「行けるかも」は「商品になるかどうか」
という判断だもんね。
- みうら
- 南さんの場合は、
「この人おもしろいね」というところから
はじまるんでしょうか。
- 南
- いや、その月にやらなきゃいけないページがあった。
いまはないけど、当時はあった。
そうすると、まず、
「いまだったら誰かな」というのは考える。
- 糸井
- 時事ネタね。
- 南
- そう。
- 糸井
- いまその連載はないけど、
伸坊はまだ、考えてるんだね。
- 南
- ときどきね。
- みうら
- 癖は、長いことやると治らないです。
- 南
- 治らないね。
- 糸井
- 伸坊は、やりたくなっちゃうんだよね。
ものまねをやる人のなかで、たぶん、
絵を描く人はこの人しかいない。
そこの加点が、じつはとても大きいと思う。
伸坊も「これはイラストレーションなんだ」って
言ってたもの。
- 南
- うん、そうなんですよ。
- みうら
- そうですね、
じっさいに顔に描いてありますもんね(笑)。
- 南
- みんなそれに気づいていると思うんだけど、
糸井さんは最初
「え? 描いてるの?」って
びっくりしてたよ。
- 糸井
- 知らなかったんだよ。
- 南
- ちょっとがっかりしたみたいで。
- 糸井
- 子どもが手品のタネ見た感じ。
- 南
- 「なんだ、描いてんだ」
- 糸井
- それまで本当にその目で
伸坊の顔のまねを見てなかったんです。
それを聞いてからは
「描いてある」と思って見るようにするんだけど、
俺にはやっぱりそうは見えない(笑)。
- みうら
- 結局、描いてないように見えるんですね。
- 糸井
- うん。伸坊はあれを
自分で鏡見ながら描くんだよね。
- 南
- そう。
- 糸井
- 左右逆でね。
- 南
- 左右逆って、かなり感じが違うんだよ。
- 糸井
- そうだね。
結局はそれを写真に撮るわけだから、
左右逆の顔を、写真に撮られるように描く。
- 南
- だから、まずは鏡にその人の写真を映して、
映った写真を見て、顔に描くんです。
- みうら
- あ、鏡の写真をなぞる感じなんですね?
- 南
- そう、なぞる。
その方式を採用する前は、
ほくろの位置を間違えたりしてました。
- 糸井
- あるときまでは、鏡方式じゃなかったんだ。
- 南
- ある日、撮った写真を見て、
「ヘアスタイル、なんか違うな」
なんて気づいたの。
左右が違えば、全然違うんだよ。
- 糸井
- ヘアスタイルは大事だもんね。
それはどういう人だったの?
- 南
- ニュースキャスターでした。
ものすごくボリュームを出したヘアーでさ、
それじゃ目立ちすぎると思うよ、と思って。
- 糸井
- もう、俺がやるぞ、と(笑)?
- みうら
- そんなにボリューム出したら(笑)。
- 南
- やっちゃうよ(笑)、
ということで、やりました。
(落ち込む日のために、
南さんの顔の本を買っておきましょう。
明日につづきます。)
2019-12-24-TUE
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN