緑のなかに出かけようよ。
先輩、後輩、そしてなかよし。

たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。

ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
3人が訪問したところ:WOODLAND BOTHY
第22回 高ければ高いほどいい。
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糸井
その後、打ち出の小槌ブームはどうなったの? 
終わったの?
みうら
最終的に善光寺で、
打ち出の小槌の形をした貯金箱を
見つけるに至りました。
貯金箱。
みうら
そんなおかしな話、ありますか? 
本当はザクザク出てくるはずなのに、
貯めてどうすんだ、っていうところでまた、
「きたきたきた」と思って。
糸井
また(笑)。
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みうら
すっげぇうれしくなって。
糸井
つまり、自分にツッコミを入れたいんだ。
みうら
「何やってるんだ」と。
結局ぼくは自分に自分を見せる
性分の人間なんです。
そしてついに、去年です。
去年。
みうら
赤い毛氈に乗った、
九谷焼の打ち出の小槌を購入しました。
値段は2万8千円ほどでした。
うちの嫁が「誕生日に買ってあげる」というので、
「そうだよね、そのほうがいいよね」
という気になりました。
すると先方から連絡があり、
プレートを作るから名前をお知らせくださいと
言われました。
送ってきた打ち出を開封すると、そこには
「還暦祝い」と書いてありました。
いま、世間では打ち出が
還暦祝いになってるんですよ。
糸井
じゃ、自分で自分に
バッチリなブームだったわけだ。
みうら
そうなんです、去年還暦だったんで、
バッチリでした。
あぁ、打ち出は還暦祝いなんだ、
本物の自分の打ち出のほうは、
すっかりだめになっているこの年代に(笑)。
糸井
その九谷焼で、一応は、
打ち出の小槌に対する
仮の解散はしたわけだ? 
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それはつまり、九谷で打ち止めってこと?
みうら
はい。打ち止めはとりあえず、
いちばん高いやつで決まりです。
高いものにいったときがゴールです。
そうだね、高いのをクリアしないと。
糸井
そうですよ。
みうら
「よく買ったな!」って
褒めてもらわないとだめなんですよ。
みうらさんは本当に
いろんなものを買ってるよね。
その都度のブームがあるのにさ。
糸井
「もとを取った」喜びと、
「もと取っちゃった」悲しみと、
両方があるよね。
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みうら
そうですね。
でも、高きゃ高いほどいいです。
そうなんだ(笑)。
糸井
巨人の監督だった藤田元司さんが、
趣味で盆栽をやってたんだよ。
そのとき「釣りは盆栽にいきやすい」と
言ってたことをいま思い出した。
みうら
釣りは盆栽になる?
糸井
で、「盆栽は石にいきやすい」って言ってた。
へぇえ。
糸井
「石までいくと、もう止まりだね」
みうら
あぁ、石は終わり(笑)。
糸井
「石までいくと、もうそこから先はないね」
石がいちばん、ガラクタ性が高いみたいだね。
みうら
あれは、本当の「邪魔くさい」の極みです。
糸井
置いておくにも、
棚を作ったりするのに
いちいち鉄骨とかが要るんで、
たいへんらしいよ。
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みうら
俺は、木彫りが限界だなぁ。
糸井
木はいいね。
木で何を集めてるの? 
みうら
木は、奈良彫りのヴィーナス止まりです。
それもすごいね。
どこで見つけたの。
みうら
土産物屋です。
そのヴィーナス、
木の年輪が顔の中心に来てるんですよ。
だから売れ残ってたんでしょうけども、
ものすごいホコリかぶって、
店の棚の奥にありました。
俺はそのとき木彫りブームだったので、
「木彫りだ」とわかった段階で、
値段見たら負けだと決めていました。
負けね(笑)。
みうら
あわててヴィーナスをつかんで、
レジに行きました。
でも、レジの人が
「値段がわからない」って言うんです。
値札がどっか行っちゃってたんだ。
みうら
先々代くらいが入れたやつだ、なんて言うんです。
「だいたい3万くらい」って言い出して、
「いや、それはないんじゃないですか」
「ホコリかぶって汚いじゃないですか」と、
いろいろケチつけて2万8千円くらいに
値切ったところで手を打ちました。
うちに置いたんですけれども、
ええ、ぜんぜんたのしくはないですね。
わははは。
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糸井
その、モノはなんだっけ?
みうら
奈良彫りのヴィーナスです(笑)。
ふざけてる感じもないんですよ、
まじめに作ったような像なんで、買いました。
糸井
ヴィーナスって、買わないよな。
いやぁ、買わないね。
(長かった連載、明日はいよいよお別れです。)
2019-12-30-MON