先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- みうら
- 「いやげ物展」という展覧会を
開催したことがありました。
各地で買った、木彫りのヴィーナスのような
みやげ物ばかりを置いて
みなさんに見てもらう展覧会です。
そこにイギリス人とアメリカ人と韓国人が
インタビューに来ました。
韓国人はちょっと怒ってる感じで
「どこがおもしろいのか」と言ってました。
アメリカ人は「意味がわかりません」と言いました。
イギリス人だけがうなずいて、
「あなた意地悪ですね」と言いました。
- 糸井
- 「ザッツライト」ですね。
- みうら
- イギリス人はわかっていました。
「イギリスで展覧会してください、
みんな喜びますよ」
と言われました。
- 南
- おもしろいな(笑)。
- みうら
- いちばんわかってくれないのは、
アメリカ人でした(笑)。
- 糸井
- 「ぜんぶ言ってくれなきゃ」
というのがアメリカの考え方なのかもしれないね。
どこがおもしろいか説明してください、と。
- 南
- 言ってもらったら納得するのかな。
- 糸井
- 「ひとことで言うと何?」みたいなことが
求められているのかなぁ。
- みうら
- ええ、アメリカ人のインタビューは
終始そんな感じでした、
アメリカは国が大きいからですね。
「みんなが理解できません」ということじゃ、
やっぱりだめなんですよ。
- 南
- アメリカだからかな。
アート関係がそうなっちゃってるらしいね。
- みうら
- ちゃんと説明できないとだめだ、
ってことですね。
- 南
- 横尾さんが書かれてましたね。
「なんとなく作ったんだ」
なんて言ってもだめなんだ、と。
- みうら
- 横尾忠則さんに対してそうなんだったら、
もうすべてじゃないですか。
「意味がわからないこと」って、
そんなに面倒くさいんでしょうか。
- 糸井
- 「これは、こういうテーマなんですよ」
「◯◯を批判してるんです」
それがないとね。
- 南
- そうそう、批判しないと。
- 糸井
- 日本の現代アートは、
そこを説明しようと苦労してるね。
- 南
- でも、説明したら自分がつまんないね。
- みうら
- 仕事みたいですよね、それじゃ。
- 糸井
- 「狙いは?」なんてことになっちゃうから。
「狙わないところがいいんです」
なんてことは言いたくないし。
- みうら
- それも気取ってるみたいですよね。
だからぼくは、
「エヘヘ」と笑っているしかないんです。
この人には訊いてもしょうがないな、と
思ってもらうようにしています。
- 糸井
- そうだよな。
- 南
- いい話だな。
- みうら
- はい。
たのしかったです。
こんな時間をすごせるなんて、
思いませんでした。
- 南
- あぁ、もうすっかり東京だ。
- 糸井
- 東京ナイズされちゃった。
- 南
- あ、ちがうよ、
今回は最初から最後まで、
東京なんだよ。
- みうら
- そうですよ、
出発も行き先も東京です。
東京から東京への旅だったんですよ。
でも、いろんなことをぎっしりさせてもらったから、
1日が長かった。
時間としては24時間とちょっとくらいですよね?
- 糸井
- おもしろかったね。
- みうら
- ええ、おもしろかったです。
- 南
- おもしろかった。
昨日、テントに到着したときは、
パリに来たみたいだと思ったよ。
- みうら
- うん、うん(笑)。
- 南
- で、景色もいいし。
- みうら
- うん、うん。
- 糸井
- みんなが民家で寝たのもあんがいよかったね。
- 南
- よかった、よかった。
- みうら
- コーヒーキャンディからはじまり、
コーヒーキャンディで終わる。
まぁ、山には出かけなくても、
キャンディさえあれば
もしかしたら話はできたのかもしれないけど、
どこかに出かけて気分が変わることが
大切ですから。
- 糸井
- 何をいちばん憶えてる?
- みうら
- 花火‥‥ですかねぇ?
- 糸井
- 花火?
- みうら
- 夜寝る前に、みんなでやった花火です。
花火じたいはたいしておもしろくなかったけど、
あのシーンをなぜかいちばん、
よく憶えています。
- 糸井
- それは写真を撮ったからだよ。
- みうら
- あ、そうだ。
- 糸井
- 俺がツイートした花火の写真を、
みうらに見せたからだよ。
- みうら
- ああ、そうだ、
あの写真をもっぺん見たからだ(笑)。
- 南
- 子どもがアルバムの写真を
自分の記憶だと思うのと同じだね。
(おしまいです)
2019-12-31-TUE
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN