── | 今回、BEGINNINGのタオルを 染めてくださったんですが、 それぞれの色のこと、 詳しくお聞きしてもいいですか。 |
小川 | もちろんです。 まずログウッドですね。 ログウッドじゃないと、 こういう深いネイビーや、 濃いブラックは出ないんです。 |
菱川 | ピアノの鍵盤の黒の色を染めるのもログウッドです。 ナポレオンのフロックコートも、 ネルソン提督のネルソンコートも、 ログウッドで染めていた。 それだけじゃないんですよ、 ギターのギブソンの赤い色もログウッド。 昔、養老孟司さんが、脳の中の細胞を 顕微鏡で識別判断するのに、 ログウッドを使っていたんです。 |
── | へぇー! そんなふうにいろんな色が 出せるんですね。 |
小川 | はい。ログウッドは、ある金属と反応させると かわいいピンクが出たり、黒も出せるし、 いろんな色を持ってるんです。 全ての光を持ってるから、 光を集めてくれるものっていうことで、 古来、お守りとされていたと言われています。 |
小川 | 椿も面白いんですよ。 常緑樹で、冬にも緑を失わず葉を落とさない。 強い力を持つ神聖な木と言われます。 |
菱川 | 茶会で初釜にも使われますよね。 江戸時代の文献にあるんですが 椿の花は身代わり不動。 主人の身代わりになって悪運を取るんです。 文献によれば、 何か大事な局面にぶつかったとき、 会いたくない人と会わなければいけないときは、 椿の花や葉っぱをしのばせておく。 すると、いやなことの身代わりになってくれる。 そんなふうに書かれているんですよ。 昔の武家屋敷の中ですと、 いわゆる鬼門の方角に植えていた。 その家の人たちに変なことがあると、 身代わりになって、花がポロリと落ちる。 そんなふうに考えられていました。 椿の花をお正月に植えるっていうのは、 先祖をきちんと敬い、 そのすべての煩悩を椿の花が吸い取ってくれるという 言い伝えによるものなんだそうです。 そういういわれから考えれば、 この、椿で染めたハンドタオルをバッグに入れておくと、 やくよけになる、とも言えますよね。 |
── | へえ! 植物のものがたり、 おもしろいです。 |
小川 | そして、カモミール。 香りが不安を取り除き、勇気づける花ですよね。 薬草としても使われてきました。 |
菱川 | 「森のお医者さん」とも言われるんですよ。 というのは、ほかの植物に 虫がつくのを防いでくれるんです。 |
── | へえ! |
菱川 | 逆に言うとね、カモミールは虫を惹きつける。 「虫がつく」って意味はわかりますよね? |
── | おとうさんが娘を心配して 「へんな虫がつくんじゃないか」って、 その、虫ですか? |
菱川 | そう!(笑) だから、逆説的に、 カモミールは、モテるおまじない。 モテたい人は、カモミールがいいですね。 これ「ローマンカモマイル」なんですが、 花がリンゴの匂いなんですよ。 リンゴは、アダムとイヴじゃないけど、 恋を取り持ってくれる果実ですよね。 |
── | ステキですね。 なんだか嬉しくなってきました(笑)。 |
小川 | そして、クローブです。 クローブの花蕾は、 悪魔も嫌がるって言われてるくらい 香りが強いんですよね。 ですから「お守り」の意味がある。 消毒殺菌作用が強いから 虫歯にも口臭にも効くスパイスですよ。 |
菱川 | もちろんタオルに科学的に証明できる 薬効はありませんが、 免疫を高くするおまじない、 というふうにとらえたら、いいでしょうね。 今回は、そんなふうなことを考えに入れて、 「この植物で染めよう」と決めたんですよ。 |
── | 「BEGINNING」のテーマにあわせて、 お守りだとか、HAPPYになるようにと 選んでくださったんですものね。 とてもおもしろいお話でした。 どうもありがとうございました! |
2012-08-29-WED