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糸井 |
「オー」の水槽のガラスの厚さ、
見たことあります? |
河邊 |
いえ、見てないです。
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糸井 |
ここのバックステージを
見たことないんだったら、ぜひ
見せてもらったらいいですよ。
水槽のガラスは、すごく分厚いの。
基準値は、もっと薄くていいらしいんだけど。 |
北尾 |
誰かが置いていた照明の熱で
ガラスが少し
溶けちゃったところがあるんだって。 |
河邊 |
そうなの? |
糸井 |
だから、厚くしといてよかったですよ。
莫大な費用がかかってもね。 |
河邊 |
いや、バックステージのことだけじゃなくて、
「オー」の、我々スイマーは
水中ばかりにいるから
ステージの上のほうで
どんなことが行われているかは
あまり知らないんですよ。
エアのアクロバットの人が
どうやって上がっていって
裏方の人が何をつけてどう操作して
全体がどうなってるか、知らないんです。
だから、ここ最近、
「パフォーマーはショーを見ていいよ」
という機会ができたんです。
そのかわり、みんなの前で
感想を話さなくちゃいけないから
私はやってないんですけども(笑)。
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糸井 |
はははは。 |
河邊 |
反対に、ほかのアクロバットの人は
水中を見たことがないんですよ。
それで、ショーを観て
すっごい感激したんですって(笑)。
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北尾 |
あの感想はおもしろかったな。
そのうち私たちも正面から見たいです。 |
糸井 |
見たほうがいいんじゃないですか。
そこにいないのは自分だけですよ(笑)。
「オー」はね‥‥、
すばらしいですよ。 |
北尾 |
ははは、ほんとに。 |
糸井 |
シルク・ドゥ・ソレイユの
常設のショーを
僕らは今回の取材で、はじめて見たんです。
いいって聞いてたからいいんだろうとは
思ってましたけど、昨日観て、
今日こうやってお話を聞いて‥‥
いや、これは惚れますね。
もちろんまだすべてについて
どうとは言えないんですけどね。
シルク・ドゥ・ソレイユ以外のショーに
入ることは考えますか? |
河邊 |
考えてないです。
自分では、シンクロができるショーは
世界でここがいちばんだと思っています。
年齢的なものもあるし、
この次の人生があるとしたら、
ショーとは違う方向で行けるようにと、
考えてます。
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糸井 |
どういうレベルで最高峰なんですか? |
河邊 |
たとえばショーの内容にしても
音楽と舞台がすごくマッチしてるし、
ライティングひとつにしても
水をこれだけきれいに見せられるんだ、
という驚きがあります。
こんなにお客さんを魅了できるのは、
ちょっと天狗になってますけど(笑)、
それは、ほんとに
ショーを作ってくれた人の
おかげだと思うんですよ。
ディレクターも、サポートの人たちも
会社もみんな含めた
シルク・ドゥ・ソレイユ全体が
つくりあげたショーだと思うんです。 |
糸井 |
うん、うん。 |
河邊 |
こんなショーをほかで観たことはありませんし、
6年間もやって、
まだ好きでいられるということは
自分のことながら、
「すごいショーだと自分が思ってるんだな」
と、驚くことがあります。 |
北尾 |
すごいことがひとつじゃない、
それらが奇跡的に調和してる、ってことが
すごいんです。
すべてのバランスが整ったショーです。
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糸井 |
ショーのステージに立つということは
ボディも含めて
全部を賭けなきゃなんないものですよね。
そういう実感のある仕事って
そんなにたくさんないと思うんですが。 |
河邊 |
そこは本当に恵まれてるな、と思います。
たとえばシンクロの競技の経験だけだったら、
そんな感じを受けないで
シンクロを終えただろうと思います。
競技としての、競うための
シンクロナイズドスイミングとしか
思えなかったんじゃないでしょうか。 |
北尾 |
ほんと、そうですね。 |
河邊 |
そうだったはずなのに、いま、私は
シンクロを通して
こんなに楽しませてもらってるんです。
しかも、仕事として、お金を稼いでいる。
すごくラッキーだったと思います。
私なんか別に
背が高いわけでもすごいスタイルがいいわけでも、
ショー向きかっていったらそうじゃないのに、
それなのにチャンスを与えてもらって‥‥。
‥‥これはたぶん、オマケかな?
シンクロ競技をやって大変だったことへの、
オマケなんじゃないでしょうか。
(続きます)
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