我々「ほぼ日」シルク・ドゥ・ソレイユ班、
せっかくバックヤードから入っているので、
今回は、バックステージのことを
お伝えしたいと思います。
シルク・ドゥ・ソレイユのショーを
いちどでもご覧になったことがある方は
「どうしてあそこからあんなふうに
人が出てくるんだろう?」
と、不思議に思われたことがあると思いますが、
ひみつは、このすき間。
ここがなんと、アーティストの
ステージの入口なんだそうです。
入口、小さすぎです。
脇に、車のついた
黒い板があるのがわかりますか?
これに乗って、
ステージの下をビュンビュン移動して
舞台に出て行くそうです。
すごいですね。
ステージの下だけでなく、
ショーの最中は、舞台の裏側で
いろんな人が走り回っているそうです。
そういえば、『クーザ』の芸術監督の
アダム・ミラーさんが
こんなことをおっしゃってました。
「シルク・ドゥ・ソレイユに身を置いていて、
決して忘れてはいけないことは、
ショーがショーだけで存在しているのでは
ないということです。
シルク・ドゥ・ソレイユは
自分たちによって存在しているのです。
それは、サーカスだけではない、
どんなバレエでも、どんな映画でも、同じ。
まるでヨットに乗っているようなものだと思います。
ひとりひとりの人間がつねに
自分は何をやっているべきか、ちゃんとできているか、
そしてそれをうまくやっていけるかを
考えていることが重要です。
みなさんは、航海中のヨットを見たら、
その瞬間はいろんな人がいろんなことをやっていて
わけがわからないと思われるかもしれません。
『クーザ』の舞台裏も、おそらくそうです。
もしかしたらカオスな状態に
見えるかもしれないけれども、
自分たちがチームとして動いていることを意識して
自分のやるべきことをわかっていると、
それがきちんと機能して
船が方向を間違えずに進んでいけます。
いちばん重要なのは、それに対する情熱です。
ショーをもっとよく見せたい、
観客の反応を受け取りたい、という情熱です。
関わっているすべての人たちが
その演目をよくさせようと思わなかったら
ショーとして、決して、成り立ちません」
『クーザ』はテントで回るツアーショーですので、
演目で使う機材や道具は
舞台のうしろのスペースに
コンパクトにおさめられています。
そして、ここは
バックステージからつながった、
アーティストのトレーニングスペースや
楽屋のあるテントです。
このテントのいちばん奥には、
衣装係の方がいらっしゃいました。
そこにはたくさんの『クーザ』の衣装が
かけられていました。
『クーザ』の衣装は
全部で1200着。靴は250足。
衣装は、すべて
白い布からできているそうです。
モントリオールで
染めの色や模様のパターンまで
すべてオリジナルで作られます。
そうしておくと、このショーが
何年もつづいたときに、
白い布さえあれば自分たちで
同じ衣装が作れるからなんだそうです。
ちなみに、衣装は
毎日アイロンをかけるのだそうですよ。
いったい何時間かかるかというと‥‥。
アイロンがけは、
毎日7人で7時間かかるそうです!
そして、かつらを整えるのには
毎日4時間。
このトリックスターの衣装は
上から下まで
ストライプの色が合うようにできています。
ちなみに、トリックスターさん、
こちらです。
Photo: OSA Images ©Costume: Marie-Chantale Vaillancourt ©2007 Cirque du Soleil
衣装のお仕事、
こなす量も多くて細かくて、
ちょっと気が遠くなります。
けれども、ショーを完璧にするために
細かいところのメンテナンスは不可欠だということを
みんなが知っているのだそうです。
だけど、と前置きして、
衣装スタッフの方は
最後にこう話してくれました。
「シルク・ドゥ・ソレイユの衣装の仕事で
いちばん大切なことは、
アーティストが安全でいることです。
ボタンひとつなくなっているだけで、
命にかかわることになります。
ぼくらは彼らの命も守っている。
それがいちばん、たいせつなことです」
芸術監督のアダムさんの
「自分たちがチームとして動いていることを意識して
自分のやるべきことをわかっていると
それがきちんと機能して、
船が方向を間違えずに進んでいけます。
いちばん重要なのは、それに対する情熱です」
という言葉が、ここに活きていると感じました。
(つづきます)
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2011-01-31-MON
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