『クーザ』は2011年2月2日に東京で開幕し、
その後、大阪、名古屋、福岡、仙台をまわって
およそ1年半の間、日本に滞在します。
「わさびとびこ」の、
観光的な旅が趣味ではないユリアさんは別にして
(でも、文化を知るのは好きだとおっしゃってました)、
ツアーショーのスタッフには
もともと旅が好きな方は多いのではないでしょうか。
ステージマネージャーの
ベラさんは旅がお好きなようです。
「シルク・ドゥ・ソレイユにいる人たちは
旅がすごく好きなんじゃないでしょうか。
旅は、あたらしい文化に
触れるということですもの。
1年半、日本にいられるということは
それだけいろんな経験ができるということで、
私もとてもたのしみにしています」
ベラさんのお仕事の基本は、
アーティストに関わることの、すべての管理。
アーティストの意思疎通の中心に、
ベラさんはいます。
シルク・ドゥ・ソレイユにおいては
「毎日が同じである」ということはないので、
全員が、必要で正しい情報を
きちんと手に入れているかどうかに
いつも心を配っているそうです。
ずっと同じメンバーで
何年も移動しながら
ツアーをつづけていくのは大変だと思うのですが‥‥。
「重要なこととしては、まず
それぞれの人の文化を理解することです。
文化を理解した上で、同じ国の人でも
ある感情を表に出す人と出さない人がいる。
それを自分が“こういう考え方なんだよ”と
みんなに伝えていこうと思っています。
シルク・ドゥ・ソレイユの、
ひとつの美しい部分として確実にあるのは、
いろんな文化が混じりあって
ひとつのものになっているところです。
私たちは、家族のようなものです。
家族というものは、ときどき嫌い合うこともある。
でも、何が要求されて、
期待されているかをお互い理解すると、
今度は自分のことがもっとわかっていきます。
そうすると、スムーズに
チームができあがっていくのだと思います」
ベラさんは、本番中、
ビッグトップのコントロールブースに座って
「キュー」を出しています。
この『クーザ』というショーは
最初に書いたとおり
「宝箱」がテーマになっているのですが、
もうひとつ、ショーを牽引するモチーフがあります。
それは「旅」です。
芸術監督のアダム・ミラーさんは
こう言います。
「箱というものは、開ければそこに
サプライズが入っています。
箱から旅はスタートします。
旅というモチーフは、つまり
人生で起こりうるであろうさまざまなことを
表現しています」
旅をするのは、この人。
第1回で、
ガウン姿でコーヒーを飲んでいた
あの人です。
イノセントは観客と舞台の橋渡しの役です。
クラウンなのですが、
ショーではあまり
クラウンぽくありません。
「クラウンだけどそうじゃないし」
というところで、
最初は演技が難しかったそうです。
「いっしょにやってた人たちが
みんなクラウンでしたからね。
イノセントというのはあくまで感情である、と
『クーザ』を創った
デビット・シャイナーさんから言われました。
ですから、あまり
クラウンアクトというものを意識せずに
自分の中の真実、
自分が何者なのかという原点、
生きるということそのままを大切にして
ショーをやっています」
ステファーヌさんは、
『クーザ』の立ち上がりから参加し、
ずっとこのショーとともに旅をしています。
「あたらしいアーティストが来ると、
このショーのこれまでがいったい
どういうものであったか、
情報として渡していくようにしています。
それは、ぼくだけじゃなくて、
みんながいわばそういう“指導的立場”を
取れるようになってきています。
たったひとりだけのリードでは、
長いマラソンのようなショーにおいては
疲れていっちゃうでしょう。
必要なときにそれぞれの人がリードする。
ぼくはシルク・ドゥ・ソレイユには
この『クーザ』から関わっていますが、
すごくおおきな絆が
みんなをそうさせていると感じています」
ステファーヌさんは
シルク・ドゥ・ソレイユに入る前は、
小学校でコーチをなさっていたそうです。
「誰かに観られているところで自分を表現できる人は
すべてアーティストになれると
ぼくは思っています。
自分を表現するには、
シルク・ドゥ・ソレイユがいちばん。
シルク・ドゥ・ソレイユというところは
アーティストのキャラクターや技を
きちんと見ていて、
適したところに入れてくれるところです。
シルク・ドゥ・ソレイユに入る前にも、
サーカスの人たちといっしょに
ショーをやっていました。
そのときにも2〜3人から、
入ったほうがいいよ、
と言われてました。だから入っちゃった」
シルク・ドゥ・ソレイユのオーディションは
とても厳しいと言われています。
「自分自身は、特別な人間ではなく
まわりの人と変わらないと思っています。
オーディションは、最初は50人ほどいましたが、
1週間ほど経ったら9人になっていました。
そのときは、即興劇みたいなものを
ふたつのチームでやり合いました。
“とりあえずあっちに行って顔を作ってこい”
と言われたんですが‥‥
自分、なんかわかんないけど、まぁ、
変な顔作るとか、そういうのが
わりかし得意だったんだよね(笑)」
彼のイノセントの姿、
日本のステージでぜひ、
ごらんいただければと思います。
さて、突然ですがここから
「ほぼ日」シルク・ドゥ・ソレイユ班
による、
旅する『クーザ』ならではのポイントを
ご紹介いたします。
‥‥というよりも‥‥、
写真リストを見ていたら
「どうしてこれを撮ったのか?」という
写真が数点ありましたので
解説してもらうことにしました。
ではぐっさん、どうぞ!
こんにちは。です。
シルク・ドゥ・ソレイユの取材に行っては、
工作好きにはたまらない写真を
こっそり撮っています。
さて今回のたまらない写真たちはこちら。
まずはトレーラーでしょう。
こんなトレーラーがテントのまわりにずらっとあります。
なんだこの空間は!
小さなテントの中が、布で仕切られて、
なんともラグジュアリーなVIPルームになっています。
ソファや小道具は、空気で膨らむんですよ。
移動することが前提で作られているんですね。
しびれる!
テントの端を見ると、
何本ものワイヤーでテントが外に引っ張られています。
このワイヤーの留め方がまたかっこいい!
そして、いじらしい。
ケーブルやパイプも、
歩く人の邪魔にならないように
設置されてますよ。
わかります。
ミラーボールは気分がもりあがりますね。
シルク・ドゥ・ソレイユのロゴがちょろっと
いろいろなものにはいっているのがかっこいい!
ケーブル隠しにもロゴが。
もう、手書きですらかっこいい!
もちろんステージはそれは凄いんですが、
ちょっと見逃しそうなところだけいいますと、
セットのいろんなところに「キラキラ」がついています。
ショーの中で本当にきれいに見えるので、
注意してみたらおもしろいですよ。
テントを掃除してるおじさん達は、
テントのワイヤーにラジオを引っ掛けて
ご機嫌で掃除中です。
カメラを向けると手を振ってくれたよ。
みんな、ついてこれたかな?
シルク・ドゥ・ソレイユの公演を見に行ったときには、
隅々まで良くまで見ると、
おもしろいものがたくさんあるよ!
でも、一番じっくり見るのはショーだけどね。
何か発見したらメールしてね。
それじゃー!
(つづきます)
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