|
糸井 |
そういう話はすごく、
東洋的なイメージがありますね。 |
イーヴ |
はい、そのとおりなんです。
東洋的な、ということは
シルク・ドゥ・ソレイユの中に
たくさん取り入れられてるんじゃないでしょうか。 |
|
|
糸井 |
実は、シルク・ドゥ・ソレイユの国際本部を
見学させていただいて、
あちこちに東洋的な発想があるということを
学んだ気がしています。
たとえばパフォーマーのみなさんが
練習する場所に、
ぼくはもっとたくさん鏡があると思ったんですよ。 |
マルセ |
ああ! そういえば、ないですね。 |
イーヴ |
ないです。 |
糸井 |
それは東洋で
日本の踊りを教えるときの発想と
同じだと思うんです。
自分の姿を鏡で見てはいけなくて、
「見る」ことよりも「イメージする」
ことのほうを重要視するんです。 |
イーヴ |
ああ、それは、とてもおもしろいお話ですね。
ダンスのときもアクロバットのときも
同じだと思うんですが
鏡を見ると、自分を見てしまうんです。
だから我々は鏡を置きません。
自分たちの状況を
確認するためのツールとしては
鏡よりもカメラのほうが向いています。
カメラに対して向かってアクトしたほうが、
全体や観客のことを
見通す力がつくと思います。 |
糸井 |
カメラに顔があるんですよね、きっと。 |
イーヴ |
そのとおりです。
「自分に向かって」ではなく
「カメラに向かって」やるんです。
カメラを持ち込むメリットは
ほかにもあります。
それは、あとでチェックすることができる、
ということです。
練習でもオーディションでも、
同じことがいえます。
アクトを見たからといって、
我々はその一部しか見ることができないんです。
ビデオでチェックすれば、技術面だけでなく、
表現できる部分を幾通りにも細かくチェックして
自分でも技を磨くことができますし、
我々スカウトは、
どのようにその人を使うのか、
その都度違った目で判断することができます。 |
|
|
マルセ |
オーディションは大切な機会ですが、
それだけでは足りません。
将来のショーのため、
その方のプロファイルがどういったのものなのか、
資料をしっかり整えることも、
我々スカウトの大きな仕事です。 |
糸井 |
採用するのは後になるかもしれないけれども、
データを取っておくということですよね? |
マルセ |
そのとおりです。
やはり、その方が持っている
いろんなタレントを発見したいと
心から思っているんです。
ほんとうに、それに尽きます。 |
糸井 |
なるほど。 |
|
|
マルセ |
あるスポーツの中で
ひとつのスキルが長けている方が
いるとします。
オーディションをやってみると、
その方がたまたま
ダンスを15年間やっていたり、
またはドラマでアクティングをやってたとか、
そんなことを発見することもあります。
それを我々のショーに
使えるかもしれないと思うこともあります。 |
糸井 |
本人が自覚できていない、
直接アピールしないところで
シルク・ドゥ・ソレイユに活かせるところが
あるかもしれない、と。 |
マルセ |
そうです。
ですから、ビデオテープを何度もチェックして
しっかりとその人を見ることが重要です。
また、オーディションは、
その方が、我々スカウト担当者に対して、
またはシルク・ドゥ・ソレイユというものに対して
どういう反応をするかを見る、
そういう機会でもあります。 |
|
|
イーヴ |
シルク・ドゥ・ソレイユ創始者の
ギー・ラリベルテに、
スカウト担当者がまず持っていくものも、
やっぱりビデオテープです。
シルク・ドゥ・ソレイユは、当初から
ロシア、中国、アメリカ、ヨーロッパ、
いろんな文化と関わって来ましたが、
山ほどのテープをギーに持っていって、
「ロシアの人はこんなことしましたよ」
「中国の人はこうです」
と報告します。 |
マルセ |
オーディションの限られた時間のなかで
何でもできるということではないので、
その人のビデオを前もって見ておいて、
自分たちがその方の
どういう部分を見たらいいのかということを
十分知っておく、という対応もしています。
(つづきます)
|